罪咎《ざいきゅう》の転移者 ~私の罪と世界の咎~

曇天

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第八話

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「それでどうするんだ?」

 アエルが木々の間を軽快に歩きながら聞いてきた。

「食べられる果実の木を探すのと、湖や池があればいいな。 お風呂やトイレなどもちゃんとつくりたい」

「なるほど...... ん? どうした。 周囲にはなにもないぞ?」

「モンスターだよ。 もうこんなに増えている」

【透視】《クレアポヤンス》で木々を透かしてみると、多くのモンスターが見える。

「かなり、【遠隔透視】《リモートビューイング》でみても、広範囲にいるのがわかる」

「ああ、モンスターはすごい勢いで増えるうえ、成長も他の生物とは段違いだ。 数日で生体になる」

 そう警戒して周囲をみまわす。

「そうか、これだけ広範囲だと、一気に倒すのは難しいな......」

「ならどうする?」

「アエルはなにか魔法を使えるの?」

「ああ、炎、水、風、金属、石を覚えている」

「すごいね」

「そんなことはない...... 私はでき損ないだ。 魔族には必要とはされない」

 哀しげにそういう。

(......境遇は違うけど、私も同じようなもの...... この力を持つことで周囲とはことなる事実を受け入れられずにいた。 だから...... それから能力を使うこともなかった)

「まあ、いいよ。 水をこの森、一帯に広げられる?」

「ああ、少ない水を雨のように降らせることならできる」

「それでいいから、やってくれない」

「わかった」

 ーー水よ、汝がその清らかな身を、この大地に降り注がせよーー

「ビルド、レインシャワー」 

 晴れているのに、雨のように水が森に降り注ぐ。

「よし【浮遊】《レビテーション》、【冷念力】《クライオキネシス》」 

「わっ!」

 アエルと自分の体を少し体を浮かせると、地面が凍りつく。

「ふぅ、なんとか成功した。 モンスターたちは凍りついた。 アエルこのモンスターたちからもつくれる?」

「あ、ああ、その物質の組成に関するものがあれば、もちろんコードを知らないと使えないけど」

 浮いたことに驚きながらもアエルはそう答えた。

(それなら、モンスターが大量にいれば、資材は大丈夫か)

「よし、【物質探知】《ダウジング》で水源をさがそう」

 歩きながら進んでいくと、アエルが立ち止まる。

「これ、食べられる果実がなる木だ。 ほらあれ」

 それは赤いリンゴのような果実が多くなっている木だった。

「リンゴ? まさか。 危険はなさそう...... よし、食べてみよう」

 二つの果実をおとしアエルと食べる。

「うん、甘いな。 リンゴだ。 でも...... まあ、とりあえず家へと送っておこう」

 それからもいくつかの果実がなる木を見つけ、家の方へ送った。

「反応がある...... 湖だ」

 少し進むと、湖を見つける。

「よし、ここから水を引こう。 畑やトイレ、お風呂に使う。 アエルここから壁を家の方までつくってくれる?」

「いいけど、素材は......」

「もうすぐくる」

 三方から空に黒いものが浮きこちらへとむかってくる。

「これってモンスター!?」

 アエルが驚いて見上げている。 【念力】《サイコキネシス》でモンスターを大量に固めてもってきたからだ。

「......はあ、もう驚くのはやめにする。 つかれた......」

 そうアエルはため息をつくと、早速作業にはいった。


「これで大体は完成だね」

 それから二週間あまりで、もってきた果樹を埋め、湖から水路と畑をアエルの魔法でつくり、風呂やトイレもつくった。

「ここまでできるなんて...... それならもしかして......」

 アエルはそれきり黙った。

「アエルどうした?」 

「あ、あの、いや、いい......」

「気にせずにいってみて」

 しばらく黙っていたがアエルは口を開いた。

「ここに魔族を呼べないかと思って......」

「魔族を?」

「魔族の中に私と同じようなものたちがいたんだ。 彼らは争いを好まない性格や弱いため、上位魔族たちから虐げられている......」

「なるほど......」

 アエルは黙ってこちらを見ている。

(まあ、特に困ることもないか...... 正直、帰る方法も思い付かないし、彼らの魔法でかえる方法がわかれば)

「かまわない。 呼び寄せよう。 二人だけなのもなんだか寂しいしね」

「本当か! いや、やっぱり駄目だ......」

 一瞬喜んだが、アエルは目を伏せた。

「なぜ?」

「魔族の領地に入るのが難しいし、出るのも難しい。 私は殺されたふりをして何とか川から逃げ出したんだ。 あそこには食べてなかったり、病気で動けないものもいるから......」

「それであの時弱っていたのか...... それは大丈夫。 アエルの角を隠したように光りを屈折させて姿をけせる」

「そうか! あれなら! じゃあ早くいこう!」

「まあまって、入るのは簡単だけど出るとき弱っている者を歩かせるのは難しい」

「確かに...... あの物質を転送する魔法は無理か」

「【召転移】《アポート》? あれは範囲がかなり狭い。 そこで広範囲の【瞬間移動】《テレポート》でここにつれてきたいの。 ただ自分以外を正確に飛ばすことをしたことがないから、練習が必要なんだよ」

「なら私で試してくれ!」

 そう覚悟した目でアエルはいう。

「わかった。 やってみよう」

 私たちは魔族たちを助け出すために準備を始めた。
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