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第三十一話

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「一帯のモンスターはもういない」

 あらかた倒すと、周囲に【遠隔透視】《リモートビューイング》をかけて確認する。

「はあ、はあ、疲れた」

 騎士団の団員たちはへばっている。

「すぐ帰らないと」

「ま、まってください。 少し休憩を」

 ディラルはなさけない声をだした。

「【回復】《ヒーリング》をかけたでしょう?」

「これケガは治りますけど、体力までは回復しないみたいです......」

(そうだったのか、アエルたちが元気になったから、つかれもなくなるものだとばかり......)

「少し他が気にはなるけど、すこし休憩か必要か」

「それにしてもすごいですね。 リンさんみたいな人が勇者になるのでしょうね」

 そうくもる空を見上げてディラルはいった。

「そういえばディラルは勇者を目指してるんだね」

「あっ、なんでそれを! え、ええ、お恥ずかしながら......」

「なぜなの?」 

「かっこいい、そう幼稚な考えもありますが、助けてもらったんです。 十年前魔族の侵攻のとき、片腕の勇者に」

「それなら憧れるのも無理はないか」

「ええ、すごく強かった。 あんな強い魔族を簡単に倒していく。 でも少し寂しそうにも見えたな」

 思い出すようにディラルがいう。

「勇者になれたらいいね」

「そうですね。 でも勇者ならあなたがいる」

「私は別に...... まあ複数の勇者になればいいじゃない」

「いえ、勇者はその時代に一人しか選ばれないんです。 そして戦いのあとどこかに消えていく。 いえ、一人帰ってきた人がいた」

 そういうと悲しそうに目を伏せた。

(帰ってきたものがいる。 ゼヌエラの元勇者か...... なんでそんな人が独立なんて......)

「......体力が戻りました。 帰りましょう」

 ディラルがそういうと、私たち王都へと戻った。


「リン!」

 向こうからアエルが走ってくる。

「大丈夫だったか? けがは」 

「ええ、大丈夫だよ。 それよりアエルは」

「ああ、平気だ」

 アエルはそう満面の笑みで返した。

「何が平気ですの。 無茶な戦いかたして」 

 アストエルがあきれたようにいう。

「ああ、まったく」

「そうね」

「そうですね」

 レイエルたちも同意していた。

「みんな無事でよかった。 そっちのモンスターはどうだった」

「正直、かなり強かった。 本来あれほどの強さのモンスターではないのに、なにか変だな」

 アエルにみんながうなづく。

(こちらのもそうらしいな。 あっちも大きさ、強さ、数、全てがいままでと比較にならなかった)

「なにか、よくないことが起こっているみたいだ」

 アエルが不安そうにいった。

 その時、いやな感覚におちいる。

(これは......)

「リンさま! ナーフから緊急の手紙が参っています!」

 兵士が走ってきた。

「わかった。 みんな近づいて!」

 私は【瞬間移動】《テレポート》をつかった。


「びっくりした!」

 マーメルと、ダンドンさんが驚いている。

「それで緊急のこととは」

「このナーフに東から巨大なモンスターが近づいてきていて、いま来たところだ......」

 ダンドンさんが東をみる。

「なんだあれ!?」

「嘘でしょう!」

「大きすぎる!」

 東側をみると、何かがうごいている。 それは緑色で山のようだ。
よくみるとそれはカブトムシのような甲虫だった。 それが十体いた。

「急に現れて...... 動きが遅いから避難には助かってますけど、いま投石機なんかて迎撃してるんですが、ほとんど効果がないんです......」

 マーメルのいうとおり、投石機の石やバリスタの巨大な矢もその甲殻に弾かれているようだ。

「あんなのどうしようもない......」

「あんなモンスターみたことありませんわ」

「こんな町踏み潰されて終わりだ」

 アエルたちも戦意を失っているようだ。

(あれを止めるには......)

「みんなに話がある」

 私はみんなに話をした。  

「......アエルたちが魔族」

 ダンドンさんは沈黙して口を開いた。

「それでそれを話した意味は......」 
 
「今から私の能力を全て使う。 そうでなければ止められない。 そうすれば魔族にかけた力もなくなる」

「なるほど、それは私たちが何とかしよう......」

 そうダンドンさんがうなづいた。

「よし!」

「まって! あんなものを何とかするつもりですか!」

「そうですわ! いくらあなたでもどうしようもない! ここを捨てて新しくつくればいいでしょう!」

 レイエルとアストエルがそう止める。

「新しくつくっている時間は恐らくもうないはず。 魔族の侵攻がもうすぐ始まる。 それまでにおさめないと......」

「わかった。 リンお前を信じる」

 アエルがそういった。
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