罪咎《ざいきゅう》の転移者 ~私の罪と世界の咎~

曇天

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第三十二話

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「さて、最大の力は今まで使わなかったからな。 何が起こるかは私にもわからない」

 私は浮きながら【遠隔透視】《リモートビューイング》で調べると、東の壁から近づいてくるモンスターを確認したあと、私はあのときのことを思い出していた。

「【念力】《サイコキネシス》!!」 

 そして全ての力を集中し、最大の力を発動した。 

 空気が振動して火花を散らし、地面がゆれはじめる。 

(うっ、意識が持っていかれそうになる...... まだだ、まだ出せる)

 視界にうつる地面が全て、モンスターごと座標を特定した。 

「【離転移】《アポート》!!!」

 目の前から地面ごとモンスターが消えると同時に、私は意識を失った。

 
「......ン、......リ...... ン、リン......  リン!」

 目が覚めると、ベッドで寝かされていてアエルがそばにいた。

「どうなった......」

「ああ、モンスターはいなくなった......」

「一体どうやったの?」

 ケイレスがそう聞いた。

「ええ、モンスターを深海の谷に転移させた。 あそこならもう戻っては来ないだろうから」

「信じられないですわ...... どんな魔法ですのよ」

 アストエルは宇宙人をみるかのようにみている。 その頭には角があった。

「そうだ.ダンドンさん..... どうなっているんですか。 町は」

「そうだな。 いきなりでみんな驚いていた。 とはいえみんな冷静だよ」

 ダンドンさんが答えた。

「えっ? そんな」

「もともと、みんなうっすら感じていたようですね」

 マーメルがそういう。

「そらな。 あれだけ頭のよいものたちが、技能や知識がないんだ。 ゼヌエラからの難民でないのはすぐわかった。 それに自ら魔族と伝えたものたちも多かったみたいだな」

「どうやら、親しくなり隠しておくことに罪悪感を覚えた者たちが、みんな話し始めていたみたいね」

 ケイレスがそう付け加えた。

「それでもみんなに伝わってないことをみると、そのものたちは誰にも知らせてなかったということだろう。 さすがのリンさんも読み間違えたようだな」

 そういってダンドンさんは笑った。

「そうか、それほどの関係ができていたのか...... とはいえ他の町の人たちもくるまた隠しておくね」

「そうですね。 さすがに魔族との戦いになればここに攻撃するものもいないとは限らないですね」

 レイエルが深刻な顔でそういった。

 私はうなづき、【偏光念力】《ルクスキネシス》を使い角を隠した。

 
「よくきてくれた。 君たちのお陰で再びのスタンピードを防ぐことができた」
 
 そうバルメーラ大臣に迎えられる。

「ええ、それは騎士団のお陰もありましたから...... ところで軍事費を削減しているとは本当ですか。 これから魔族の侵攻もあるとお伝えしましたが」

「......それは重々わかっている」

「ダルクダールという人物ですか」

「知っておったのか...... そうだ。 彼は起こるかどうか定かではないものに金をかけるべきではない、そういって商人への投資を求めた。 それを貴族たちも承認したのだ」

私の懸念にバルメーラ大臣は困惑したようにそう話した。

「そんなことをしている間に、魔族との戦争になるぞ! せめて避難のために移動用の馬車や非常食の確保は必要だろう!」 

 アエルが訴える。

「わかってはいるが...... 民の不満が溜まっていて、反乱がおきるやもしれんのだ」

「どうしてですか?」

「君たちだ」 
 
「私たち?」

「そう、貧しかったものや社会のはみ出しものたち、そういうものたちが君たちのもとへといき、豊かになっている。 それゆえそれを比べて悪化する経済などへと不満が爆発しているのだ」

「私たちはみんなで頑張って、自分たちで生活できるようにしたんだ!」

アエルが憤慨している。

「ああ、そうだろうとも、元々力もつ貴族の散財などで、この国の経済は悪化していた。 だが、普通の民たちは自分たちより貧しい弱いものたちがいることで、なんとか不満が収まっていたのだ」

「蔑む存在がいなくなったことで、優越感を得る相手がいなくなったのですね」

「ああ...... それが現実から目をそむけさせていた。 しかし現実が目の前にきて怒りに変わった。 更に貴族たちの反乱の兆しが見える。 おそらくこれを好機として王位を狙うつもりだ」

「そんなかってな! 今までほうっておいておいて......」

「アエル」

 アエルが声をあらげるのをとめた。

「まさしくな。 王も貴族たちを抑えようとしておられるが、元々歴代、力をもつ貴族たちは抑えきれんのだ。 彼らは商人や軍や政務に自らの手元においている」

「それほど影響があるなら、力業は無理ですね」

「ああ、王は戦争をしてでもとおっしゃっておったが、ここで戦争でも起きれば、ゼヌエラやひいては魔族への対抗力がなくなる。 ゆえにがまんしていただいている」

「人間も魔族と変わらんな。 力こそ全てか......」

 アエルがそうつぶやくと、バルメーラ大臣はうなづいた。

「所詮、人間など欲深なものだからな」

「それでバルメーラ大臣、なにか打つ手はあるのですか」

「うむ...... ひとつだけな」 

 バルメーラ大臣はゆっくりと話を始めた。
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