来る気がなかった俺の異世界冒険記 ~転生させた女神が承認欲求モンスターだった~

曇天

文字の大きさ
1 / 60

第一話

しおりを挟む
「ほら、まもりましたよ」

 そういってバスケットをかかえ、にこにこと笑う泥だらけの美しい少女が俺の目の前にいる。

「はぁ......」

 俺はそれをみてため息をついた。

「......まじでこいつと魔王を倒す旅をこれからするのか」

 そう俺は今後を思い天をあおいだ。


「ここは......」
 
 そこは白い宮殿のようだった。

 目の前に杖をもった美しい金髪の少女がいる。 

「......誰だ」

「私はティティファ、女神です」

 その少女は大きな金の瞳でこちらを見つめながら静かにそういった。

「女神...... そうか、おれはあの時」

 こんな突拍子もないことをすぐ受け入れられたのは、あのときのことを思い出したからだ。

「そう松上 令二《まつかみ れいじ》さん。 あなたは川に落ちたこどもを助けようと溺れました」

 そう悲しげに女神ティティファはうつむく。

「そうか...... それはしかたない。 それで子供は」

「ええ助かりました。 あなたが最後のちからで川からひき上げましたから」

「......犬死にじゃなかっただけましか」

「まだ死んでいません。 仮死状態のまま、あなたの世界にいます」

「えっ? 仮死状態」

「今は私の力でその姿を保っています」

「もしかしてもとにもどれるんですか!!」

「ええ、そのためにもあなたにお願いがあるのです」

「お願い......」

「これを」

 女神が杖をつくと空に映像が現れる。 そこには異形の化物が人間を襲い町を破壊している映像が映し出された。

「なんだ!? 化物が人間を襲っている!」

「ええ、ここはあなたの世界とは異なる世界、この世界は魔王が復活し滅ぼされてしまうかもしれないのです......」

「魔王!?」

「はい、あなたにはその世界に向かい、魔王を討伐してもらいたいのです」

「......いや、俺は普通の高校生だから、そんなことは無理ですよ」

「私の力であなたを生き返らせるにはある力が必要なのです」

「ある力......」

「ええ、神の力とはすなわち人々の信仰心、あなたがこの世界を救えば、守護している私の力がまし、その力で生き返らせることができるはずです」

「生き返るにはあなたの力が増す必要がある...... でも俺にはあんなモンスターと戦う力なんてないですよ」

「私の残りの力を使い、あなたに特別な神の力を与えましょう。 何卒お願いします」

 そう女神は頭を下げた。

「......とは言われても」

「あの世界を救いたいのです! モンスターの驚異から人々を! 力を失った今の私の力ではもはやどうすることもできないのです!」

(ここまで必死に懇願されるとな...... 確かに助けられるものなら助けたいが)

「助けてください! この世界の人々のために! そして私のために!」

「ん?」

「私は信仰心がほしいのです!」

「んん?」

「そしてマイナーな神からメジャーな神へとなりたいのです!」

「んんん!?」

「ティティファさますてきー サイコー! わが至高の女神! うふふふふ」

 女神は恍惚の表情を浮かべる。

「ふざけるな! 自分のためにおれを使おうってのか!」

「いいじゃないですか! 子供のために命をかけられるなら、世界のためにちゃっちゃっと命をかけてくださいよ! チョロいヒーロー、チョローでしょ!」

「誰がチョローだ! いやだわ! おまえの承認欲求のために誰がいくか!」

『わかりました。 この無駄な命、美しき女神に捧げます』

「ありがとう」

「誰が無駄な命だ! 勝手にアテレコすんな!」

「私はマイナー神で力もない! 人気もない! お賽銭も! お供え物もないんです! 助けてください!」

「おまえの承認欲求などしらん!」

「確かに私が人から認められたいのは事実です」

「認めるのかよ!」

「ですが、あの世界を救いたいのも本当なのです......」

 そううつむいた。 映像をみると人々が蹂躙されている。

「しかし......」

「わかりました...... もうかってに送っちゃお!」

「なに!?」

 女神が杖をつくと光がおれの体をつつむ。 

「やめろ!! てめえ!!」

「がんばってくださーい! 私の信仰心をあげてくださーい! あとかえるときはお土産お願いしまーす。 名産品はやめてくださーい! 意外にがっかりするのでー」

「この期に及んで要求おおっ! ふざけんな! 絶対にもう一度会ったら......」
 
 そのまま目の前が暗くなった。


「ここは」

 目を開けるとそこは森のようだった。

「まさかここが異世界か! くそっ! あの女神! 本当に送りやがった! 今度会ったらただじゃおかねえ!」

「あーーー!」

「なんだ!!?」

 後ろをみるとさっきの女神があわてふためいている。

「なんか私もきちゃった! どうしよう!? どうする!?」

「そうだな。 まずは詫びろ......」

「えっ?」

 おれは女神の頭をむんずと捕まえた。

「やってくれたな貴様......」

「ひぃ! ご、ごめんなさーい! いだだだだだ! 割れるぅ! 頭われちゃうぅ!!」

 逃げながら謝る女神をおれは捕まえ、その頭蓋を握りつぶそうとした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...