来る気がなかった俺の異世界冒険記 ~転生させた女神が承認欲求モンスターだった~

曇天

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第七話

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 俺たちは焼いた肉をおいて近くの岩に隠れた。

「本当になにかいるのか?」

「ええ、間違いない...... 犯人は絶対に許しません」

 そういってティティは包丁をシャコシャコ研いで、どす黒いオーラを放っていた。

(こいつ本当に女神なのか...... いや女神ときいていたが、なんの神かは知らん! まさか破壊の女神とかか!)

「......生まれてきたことを後悔させてあげましょう」

 そう包丁の刃を指で撫でるティティは鬼のようだった。

(き、鬼神かもしれん! あっ!)

「肉がない!」

「ヒャハッ!! もらったぁ!!!」

「やめろ!!」

 飛び出していったティティを追いかける。

「あれ!? だれもいない」

 肉のなくなった皿がそこにあるだけ、そばには俺の刀が落ちていた。

「刀、なんでこんなところに? 辺りはだれもいないぞ」

「いますよ......」

 ティティはそういうと俺の刀の柄を包丁の背で殴りはじめた。

「おいおい、なんだ! せつない頭がついにいったか!」

「だれがついにいったんですか!」

「いたい! いたい! いたい! なにするんや!」

 その幼い声は刀から聞こえてきた。

「なんだ!? 刀がしゃべってる! しかも関西弁!?」

 すると刀はその姿を黒髪ショートの中学生ぐらいの女の子にかわった。

「やめや!! ウチを精霊としっての狼藉《ろうぜき》か!」

 そう女の子は胸を張ると俺たちを一喝した。

「なんだ!? この子は精霊って言ったのか?」

「そうや! ウチは刀の精霊にして、人類の守護者リヴァルガさまヴぁ! いたい!  かんだ! 口内炎できる!!」
 
 女の子はそう口をおさえ地面を転げ回っている。

「刀の精霊!?」

「やはりそうでしたか」

「なんなの精霊って?」

「精霊とは自然にすまう、意思のある魔力といったものですかね」

「しょうや! いたっ! またかんだ血豆できる! ちがうそうや! そんなことより貴様ら何者や! ウチをゴンゴンとたたきおってからに! いてこますぞ! シュッ、シュッシュシュッ」

 そういってシャドーボクシングをしている。

(まためんどくさいやつがでてきた......)

「お前らはなにもんや! 魔王絡みか、ならば切ってすてる!」

「よし」

 ティティは後ろに回り、リヴァルガの襟をもつともちあげる。

「えっ?」

「じゃあ、川にすててきますね」

(いい笑顔でいった!)

「な、なんやと!! ウチをほかすやと! それを捨てるなんてもったいない!」 

 どこかできいたフレーズで、その子はバタバタと暴れている。

「当然です。【肉盗万死】お肉を盗むものは死に値します」

(へんな四文字熟語つくってる)

「剣など所詮鉄屑、川に浸しておけば、錆びてボロボロになっていくはず...... ふひひ」 
 
 とびきり邪悪な顔でティティはいう。

(やっぱ邪神じゃないのか......)

「やめろや! それになぜウチのことわかった!」

「そいつは女神なんだよ」

「女神...... 嘘をつけ! こんな頭がせつない女神がいてたまるか!」

「だれが頭がせつないですか! その言葉流行ってるんですか!」

 ティティはリヴァルガと頭突きしあってる。

「まあ、二人ともやめろよ。 でもなんで盗み食いなんかをしてんだ」

「刀の切れ味をあげるためや。 ウチは精霊王から魔王討伐のためにこの地におりたった。 せやけどウチの所有者となったもの魔力を得たが足りん。 そこで実際の食料より魔力を得たんや」

「なるほど、それで呪われた剣になったのか」

「ぬう、軟弱な人間どもめ...... ちょっと魔力をとっただけでげっそりしてすぐ店に返品しよる。 そこな人間、貴様は多少は見所がありそうや。 ウチのマスターにしたってもええで」

 そう横柄にいった。

「まあ、切れ味がいいからな。 かまわないぞ。 今ポンコツ100匹分がいるから1匹増えたところで変わらんからな」

「だれがポンコツ100匹分ですか!」

「だれがポンコツ確定や!」

「それはいいけど、神様と精霊って仲間じゃないのか」

「神様はその世界の守護者ですが、精霊は自然の守護者ゆえ考えがことなります。 対立することさえありますね」

「そうなの」

「じゃあ、さっさとメシにしてくれや」

「あれだけ食べたでしょう!」

「あれでは足らん。 うっ......」

 その時グギュルルとリヴァルガの腹がなる。

「そういやお前生肉食べたよな...... まさか」

「うあうあうあ!」

 リヴァルガは顔面蒼白になっている。

「ここで漏らすなよ!!」

「あかん! あかん! もうあかんて! もうでてきてる! 鞘から抜き身がでてきてる!!」

「やめろ!!! それになんで関西弁なんだ!」

「あかん! 【ベン】とかイメージするからやめてって!」

「刀に、刀になって! トイレに連れていきますから!」

「あかん! はよして!! 真剣がでてきてる! 大地に刺さる!」

「まて! もうすこしまて! がんばれ!」

「がんばったらでてまうねんて!」

 そうわめく刀になったリヴァルガを、すぐにトイレへともっていった。

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