来る気がなかった俺の異世界冒険記 ~転生させた女神が承認欲求モンスターだった~

曇天

文字の大きさ
10 / 60

第十話

しおりを挟む
「う、嘘でしょう...... もうEクラスのエンシェントシェルを倒したなんて......」

 冒険者ギルドに帰ると受付嬢が驚いている。

「ではDクラスへと昇格になります。 おめでとうございます!」

「よし、次は......」

「あ、いい忘れてましたが、Dクラスになられたのでダンジョンへの入場許可が与えられますよ」

「ダンジョンへの入場許可?」

「ええ、古代の遺跡、魔法の迷宮などをダンジョンといい、そのなかには古代の遺物や宝物があります。 ゆえにDクラス以上の冒険者しかし入ることが許されません」

「なるほど」

「ふむ、ならばそこを攻略できれば名声もえられるというわけですね! ぜひいきましょう!」

「そうやな! ウチらならば容易く踏破するしな!」

 二人はそうわらっている。

「おい! あいつらもうDクラスだ!」

「確かいま噂の【至高の女神と最強の精霊刀】《ディーヴァブレイド》か!」

 そう周囲の冒険者の声がきこえた。

「おい、至高の女神と最強の精霊刀《ディーヴァブレイド》ってなんだ?」

「なにいってるんですか? 私たちのパーティー名ですよ」

「はぁ? 初耳だぞ」

「レージがトイレにいってる間に名付けた。 ええ名前やろ」

 そう笑顔でリヴァルガが答える。

(こいつら勝手に......)

「それにしてもあのわかさと美貌で強いとはな」

「ええ、憧れるわ」

 その周囲の声をきいて、二人はのけぞるぐらい胸をはり、ゆっくりとあるいている。

(それはなにバウアーだ...... しかもしっかり聞いてるくせに、聞こえてないふりしやがって)

「でも、あの強さには秘密があるらしい」

「ああ、聞いた。 闇の魔法だろう」

(ん? 闇の魔法)

「確か顔にまっ白い化粧を施し、奇怪な服をきていてにやついていたという」

「きっと邪神かなんかの儀式だわ...... 恐ろしい」

(あいつらのメイク、儀式だと思われてる!)

 二人をみると背中を丸めて下を向いて足早にギルドをでた。

「ま、まて」

 
(まいったな......)

 二人が表情がみえないぐらい下を向いている。

(あのバカ二人がここまで落ち込むとは...... へこむという繊細な神経があったのか、意外だ)

「まあ、あの......」

「......やはり、私たちの評価はうなぎ登りですね......」

「えっ?」

「せやな。 飛ぶ鳥を落とす勢いとはこのことやで......」

「なっ......」

「もはや、すぐに信仰心は青天井は間違いなし! いひひひひひ」

「そうや我らの前に敵なしやで! けははははは」

 二人はそう高笑いする。

(こいつらへこんだんじゃない! ただ単に笑いをこらえてただけだった! いいほうの言葉しか届いてやがらない!  へこんどけよ!!)

 俺は心のなかでそう叫んだ。


「......それでお前たちがうるさいからここにきたのだが......」

 目の前に洞窟のようなものがある。 二人がどうしてもここに来るといって聞かなかったからだ。

「うるさいとはなんですか。 ダンジョンを攻略できれば、名声はさらに高まります」

「そうやで、それに宝もんも仰山あるらしいやん」

(不純な。 これでも女神と精霊なのかよ)

「どうでもいいがティティ、信仰心は高まってんのかよ」

「......すこし力が増したような感じがします」

「お前はこの世界の神様なんだよな。 町にも神殿があったが、お前の名前なんかなかったぞ」

「......そうやな。 確か【アルコーン教】とかいうのの【デミウルゴス】とかいう神様がまつられとったな。 なんかそれが主神ぽかったけどな」

「ち、ちが......」

「ま、まさかお前! 女神なんて嘘なんじゃないのか!」

「あり得るで! 確かに女神っぽさがなにもない! よう考えたらただのパーや!」

 俺たちは距離をとる。

「誰がただのパーですか! 違います! 私がこの世界の唯一の神ですよ! 何ですかその目! 疑ってるんですか!」

「「うん」」

「なにシンクロしてんですか! 私は神さまです!」

「そうはいっても確認しようがないからな。 証明できるのかよ。 お前が神だという証拠は」

「証拠なんてありませんよ!」

「なんや邪神か! 邪神やないんやったら、証明してみい!」

「ないものはないんです! 女神に悪魔の証明しろっていうんですか!」

「大丈夫だ。 わかってる。 悪気はないんだろ。 お前に悪さを考えられるだけの知能はないのはわかってる。 なっ、なっ、本当のことをいえ」

「なんなんですか、その優しくない優しさ! 本当に女神です! 今は能力がなくなっただけです!」

「じゃあ能力を失ったことで、知能もなくなったんか?」

「失敬な! 知能はなくなってません!! 信仰心がなくなってしまっただけですよ!」

「信仰心......」

「神ってのは信仰心がなくなると、その存在も稀薄になるらしいで、だから信仰心をえるため、人を加護し奇跡を起こすんや」

「そうです。 でもこの世界はモンスターの驚異と、戦争などで信仰心が失われて......」

「なるほど、それで力をうしなったのか」

「まあ助けてくれへん神さまなんか信じられへんよな」

「つまりお前がさぼったんだな」

「ちがいます! ちゃんと助けてました! ただ徐々にうまく力が使えなくなっていったんです......」

「それってどういうこと?」

「......多分、戦争や魔王の存在が影響してるのかと......」

「そういや忘れてたけど、そもそもなんなんだよ魔王って?」

「魔力が遥かな年月あつまり意思をもった存在らしいな。 精霊みたいなもんやけど、邪悪で歪な存在やな。 それが生まれると、手当たり次第に魔力のあるもんをとりこみあやつるんや」

「ふーん、つまりそいつがお前を邪魔してるってことか」

「ええ、私の力も魔力も同じもの。 それを阻害してこの世界の魔力を取り込もうとしているのでしょうね。 私のことはともかく早く信仰心をえて力をえないと......」

 珍しくティティはなにかを考えているようだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...