来る気がなかった俺の異世界冒険記 ~転生させた女神が承認欲求モンスターだった~

曇天

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第二十三話

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「かれらが君たちと共に私を護衛するDクラスパーティーだ」

 部屋に集められた十二人の冒険者を紹介される。

「我々は【暁の魔法使い】《ドーンウィザード》だ。 3名いる」

「俺たちは【剛力の戦士団】《ストレングスソルジャー》だ。 3名」

「私は【輝きの女戦士】《シャインアマゾネス》3名よ」

「ぼくたちは【神の使者】《ゴッドメッセンジャー》3名です」

(それぞれ、リーダーは魔法使いのリネード、戦士ゴルドア、剣士メディア、僧侶マーカスか。 それぞれのメンバーも同じ職業っぽいな)

「みんな聞いたことのある冒険者パーティーですね」

「さすがにDクラスともなる猛者やな。 やっぱ面構えがちがう」

 ふたりとも感心している。

「では君たち至高の女神と最強の精霊刀《ディーヴァブレイド》は、私のそばで護衛してくれ」

 そうダンヒルさんから指名された。

「わかりました」

 俺たちはその日からダンヒルさんを護衛することになった。


 一日、二日、三日、四日目となにもおこらなかった。 俺たちはダンヒルさんの部屋の前の部屋に滞在している。 定期的に部屋の確認にいく。

「特になんもおこらへんやん。 あと三日やで」

「三日後、国からの正式に資金の交付が行われる。 そうなったら私が死んでも仕事は私の会社がうけるのだ。 そうなったら私を殺しても無駄になるからな」

 ダンヒルさんがいった。

「しかしダンヒルさんを殺すなんて無茶をすれば、国から疑われ競争から排除されるのでは」 

「そのために貴族たちを懐柔しておるのだろう。 私が襲われたとき、国に捜査を願い出たが一蹴された」 

「それでよくこの仕事をうけられましたね」

 ティティがそういうとダンヒルさんはうなづく。

「うむ、私の家系は昔から公共工事の仕事をになっておったからな。 ノウハウがあるのだ。 ネルネストは金貸しから成り上がったもの。 さすがにいきなり大きな工事を与えることはできぬ」

「なるほど」

「しかしやつは貴族にとりいり、近年小さな工事をやつが受注するようになった。 しかし、その仕事はずさんでよく事故も起こす。 恐らく工事費をけちって中抜きでもしておるのだろう」

「それで利益だしとんか。 そりゃあんな豪邸にすめるわ」

「うむ、しかし今回は上流の川の堤防の建設。 事故がおこれば下流域は水没しどれ程の被害になるかわからん。 ゆえに絶対にやつに与えるわけにはいかん」

(なるほど、それもあって仕事を与えたくないのか)

「しかし、なぜ我々にそばで護衛を頼んだのですか? 他のものたちの方が実績もあるでしょう」

「......ふむ、こちら側に買収されたものがおるやもしれぬからだ」

「裏切りもんがおるんか!」

「前の襲撃時、手練れたちがこともなく倒された。 正直、それほどの強さならば私を殺せたはず。 にもかかわらず私は無事だった。 そのときもあの三組がいた」

「その三組なら、奇襲をかけられたと......」

「実は倒されたものたちは魔法で眠らされ襲われていたのだ。 しかし、あの三組はその魔法にある程度耐性があり眠らずにいた。 それゆえに動けなかったのだとおもっておる」

「ならばあの三組をやめさせればよいのでは?」  

 ティティが首をかしげた。

「しかしな。 これはあくまで私の勘、前回は布石で疑わせられているのかもしれん。 やつは狡猾な男だからな」

「......今回が本命で疑って解雇し、減ったところを強襲か」

「生む、その可能性も捨てきれん。 だからそなたたちにそばにいてもらうのだ。 クラーケン退治や大臣との関係など、噂を聞くにそなたたちは危険がなさそうだからの」

「なるほどなぁ。 ウチらはそんなことせえへん。 何せ精霊やしな」

「はい、女神がそのようなことをするはずかありませんよ」

「精霊、女神?」

「モチベーションをあげるための設定です。 気にしないでください」

 そうダンヒルさんに耳元で伝えた。


「しかし、三組に裏切りもんがおるんやと警戒せんと」

「そうですね」

「それより、睡眠の魔法のほうは大丈夫かよ」

「まあウチは刀やさかい。 状態異常はききづらい」

「私も女神ゆえ、魔法に耐性があります。 仮にかかってもすぐに解除されるでしょうね。 ほら前に石になった時も自動解除されたでしょう」 

 二人は自信満々に答えた。

「そうか...... 俺がもし眠ったら起こせよ」

「しゃあないな! まかしとけ!」

「ええ、人間のあなたはわたしたちがまもりましょう!」

 そうティティは胸を張る。

(だが心配だな。 マニュさん、状態異常魔法に耐えられる方法はあるの?)

『魔力を常にまとえば、それが防衛になると思います』

(なるほど、ヴァリアブル【魔力まとう】。 ただ全身となると消費も激しいな。 あまり長くは持たない) 

「くぁ......」

「ふぁ......」

 しばらくして、ふたりがうとうとしはじめた。

「おい...... 普通に寝たら意味ないぞ!」 

 俺はふたりを揺らす。  

「う、むにゃ、むにゃ」

「う...... ぐー」

 だが二人は完全に眠ってしまった。 起こそうとしても一向に起きない。 とりあえずほほをぶつ。

「ふぅ、おかしい。 いつもの腹立たしさもあって、ほほを赤くなるまでぶったのに起きない。 これは......」

 俺はリヴァの剣をとると、ダンヒルさんの部屋にむかった。

 
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