来る気がなかった俺の異世界冒険記 ~転生させた女神が承認欲求モンスターだった~

曇天

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第二十四話

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 部屋にはいると、ダンヒルさんと秘書が眠りに落ちていた。

「やはり、これは魔法か! あいつら思いっきりかかってる! なにがすぐ解除されるだ! ただ眠っておきるだけだろ!」

 俺は急ぎ部屋をでる。

「ほう、さすがは期待のルーキーといったところか、まさか眠ってないとはな」

 通路の向こうから声がした。

「お前たちは!!!」 

 その姿をみて驚く。

 そこにいたのは四組のパーティーのリーダーのリネード、ゴルドア、メディア、マーカスだった。

「お前たちのパーティー全員が裏切ってたのか!」

「いいえ、それぞれのメンバーはしらないわ」

「これは我ら四人の計画だ」

 そうメディアとゴルドアがいう。

「......そうか、前のとき、動けなかったのは仲間のせいか」

「ええ予想外に魔法耐性が高かったのですよ。 今度は確実に眠る魔法薬をのませました。 もうおきることはありません」

 マーカスはメガネを直しそういう。

「......こんなことをすればすぐギルドから追われる...... ギルドの規約はしってるよな」

 俺の言葉にリネードは薄く笑うと、ゴルドアが斧をにぎる。

「......この屋敷を燃やせば奴らの死体が我らの全滅を意味する」

「なっ! 仲間ごと焼き払って、生きている証拠を消すつもりか!」

「それもあり前回は、無理に暗殺を実行しなかったのです。 あなたも私たちときませんか?  ネルネストから報酬もたんまりでます。 仲間とはいえ仕事の繋がりのみ、捨ててもかまわないでしょう」

 マーカスはじゃらじゃらとなる袋を出した。

「......ことわる。 あいつらはポンコツだが切り捨てるつもりはないんだよ。 あいつらだって同じ状況なら...... 多分、おそらく、まあ、うん......」 

(......裏切るな)

「残念ね...... 四人のパーティーリーダーを相手に戦えると思ってるの? スラッシュソード!」

 メディアが剣をぬくと、一瞬で距離をつめ目の前に迫る。 

(はやい!? ヴァリアブル【かわす】!)

「エナジーアクス!!」

 メディアの鋭い剣をかわすと、横からゴルドアが光をまとう斧で横に払った。
 
「くっ!」 

(ヴァリアブル【剣で受ける】)

 ドカッ!!

 斧を受けたが壁に叩きつけられる。

「くはっ!」

(魔法をまとわせた攻撃か! うけても力負けする!! 魔力と経験の差が大きい! このままじゃ!)

「爆炎散弾《ブレイズショット》」

 リネードが杖から複数の巨大な火球をはなった。

「くっ! 解放!」   

 俺は魔鏡剣《ミラーブレイド》で受けそれをはなった。

「ぐわっ!」

「きゃあああ!!」

 メディアとゴルドアが吹き飛ぶ。

(よし、ふたりをやった!!)

「なっ! たちあがる!!?」

 すぐにふたりは立ち上がった。 その二人の体が仄かに光っている。

「範囲回復《ワイドヒール》」

 マーカスのメイスが輝いている。

「くそっ! 回復魔法か!!」

「......マーカス、さっきのあれはなんだ」 
 
「魔力を吸収し放出する剣なのでしょう。 魔法を不用意にうたないでください。 ふたりに強化魔法をかけます」

 マーカスとリネードがなにかを唱えると、メディアとゴルドアの体が赤く輝く。
 
(さっきより速い! しかも攻撃が重い!!)

「この子しぶといわね!」

「ああ、若いくせに効率的に防御と攻撃を行うが、そのとき多少タイムラグがある。 ふたりで同時に攻撃するぞ!」

 メディアとゴルドアが同時に攻撃してくる。

「ぐっ!」

(ヴァリアブルは行動を最適化するが、俺の身体能力で攻防を切り替えると、どうしても遅くなる! 同時に攻められたら、防御に徹するしかない! なんとか誰かが起きるまで時間を稼ぎたいが、とても防ぎきれない! しかたない!)

 魔鏡剣《ミラーブレイド》をつかむ。

「ヴァリアブル【投げる】!」

「ぐあっ!」

 俺の投げた剣は正確にマーカスの足に当たる。

「か、回復......」

「させるか! 風よ!!」

 リヴァの風波の短剣《エアロソード》を使い風をはなった。

「解放!!」

「ぐああああっ!!」

 魔鏡剣《ミラーブレイド》にあたった風波の短剣《エアロソード》の魔力を解放すると、マーカスとリネードは吹き飛んだ。

「こっちががらあきよ!」

「ぐあっ!!」

 メディアに肩口を切られる。

「なるほど、回復できるマーカスを先に狙ったか...... セオリー通りだな。 だが我らと戦う余裕はもう無さそうだ」

 そうゴルドアがいった。

「......倒れたあいつらを回収して逃げ切れるのかよ」

「ふっ、しれたこと...... 奴らもここに放置しておけばよい」

「証拠と取り分が増えるだけよ」

 ゴルドアとメディアは笑う。
  
(くそっ...... 仲間を助けるために逃げてくれることを期待したが、やはりこいつらは金だけの関係か。 もう魔力もない...... 打つ手なしだ。 最後のヴァリアブル【逃げる】)

 俺はその場から離れようとした。

「おいおい、仲間をおいてあなたも逃げるの。 それならさっきこっちにつけばよかったのにね」

 嘲笑するようにメディアがいうのを背にうけながら、壁に体を押し付け何とか歩く。 

「逃がすわけがなかろう」

 そういって、ゴルドア後ろから近づき斧を振りかぶる。

(少しでも時間を稼げば...... 誰かが目覚めるかも知れない...... 諦めるな、少しでもあがけ)

「死ね!!」

 俺が振り向くと斧が振り下ろされた。 

 ドガッ!!

「がはっ!!」

 斧ごとゴルドアが吹き飛んだ。

「な、なんだ......」

 目の前の壁から足が壁を貫いて飛び出ていた。

 壁が砕かれる。 

「......悪しきものの心を感じます」

 そこにいたのはティティだった。
  
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