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第三十七話
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「みなさーん! 盛り上がってますかー !」
「おおお!!!」
「今日も楽しんでいきー!!」
「おおおお!!」
「が、がんばります......」
「おおおおお!!」
三人は大きな会場をかり人を集めていた。 その熱気はさながら本当のアイドルのようだった。
(もうこの会場のキャパをはるかにオーバーする人を集めてるな。 なにげにチケット代もリヴァがじんわり値上げしていってる)
「ふぅ、つかれましたね」
「まあまあの売り上げやな。 このままより上のステージへと向かうで」
ティティとリヴァの二人は注文した高額な定食を食べていった。
「しかし、広げすぎじゃないか? 新しい曲もあまり反応はよくないぞ」
「そんなことはありません。 信仰心は増えています」
「そやでジャーマネ。 ここが売り時や。 もっと大きなキャパの会場を押さえてや」
「でも、いくつか振り付けや歌詞でとちるところもあったので、練習がたりないのでは......」
「リリオン、大丈夫です。 最悪魔法のアイテムで口パクでやれば歌詞はごまかせます」
「そやで、振り付けも完璧じゃなくてもええねん。 ウチらが歌って踊っとることで客が満足しとるんやから。 それよりジャーマネ、グッズの種類が少ないで、もっと用意してや」
「いや、既に在庫がでてるんだよ。 発注が多すぎる」
「私たちの人気なら大丈夫ですよ。 もはや私たちを中心に世界は回ってるのです!」
「そうや。 大舟にのっとけ。 あははははっ!」
そう二人は完全に天狗になっていた。
(嫌な雲行きだな......)
やはり世の中はそんなに甘くはなかった。
「なんでですか!? お客が減っています!」
「絶対におかしい! あんなに人気あったのに!!」
二人は慌てている。 徐々に客の入りが少なくなっているからだ。 強気なグッズの値段や、歌や曲のマンネリによって皆あきはじめた。
「まあしかたないだろ。 最初の曲はヒットしたが、二曲目からはそうでもない。 傷が深くなるまえに諦めて解散したほうがいい」
「あれほどの人気だったんですよ! いい曲さえあれば、また再びあの栄光が取り戻せます!」
「そうや! ウチらは成功者なんや! そんなポッとでの一発屋とはわけがちゃうねん!」
(お前らが完全にポッとでの一発屋だけどな)
「それなら、地道にファンを獲得していく方がいい。 歌とダンスを練習してうまくなればついてきてくれるものもいるかもしれん」
「そうですよ! がんぱればみんな応援してくれます!」
リリオンは二人にそういう。
「リリオン、私たちはスターなのです。 天賦《てんぷ》の才は努力では身に付きません」
「そうや。 センスいうもんはもって生まれたもの。 練習なんて才能のない証拠や」
「で、でも......」
(だめだ。 簡単に成功したから、自分達に才能があるのものだと信じて疑わない、二人とも生粋のお調子者だからな。 時流にのっただけのものは、いずれみんな気が付く)
それからもティティたちはどんどんファンは減らしていった。
「くっ...... なぜです。 どんどん人が減っていく」
「あかん! このままやと通算二度目の破産や! 在庫が! グッズの在庫がぁ!!」
「そらそうだろ。 一曲だけの流れでファンのことも考えず、ただビジネスや自分のことばかり、そんなものについていくものはいない」
「な、なっ、なんてこと...... 私たちはいつからか評価されることが当然とばかりに傲慢になっていたのですか」
「そうや、ファンが支えてくれてることに安住してしもうてた...... でももう終わりや」
「そんなことはありません!」
「リリオン......」
「これから一生懸命、練習してファンの方々のために頑張りましょう! 今まで支えてくれた恩返しをしましょう!」
「そうですね。 確かに本質を忘れてた私たちを支えてくれた人々に、感謝をしましょう!」
「そやな。 ええパフォーマンスをみせよやないかい!」
それから三人はダンスの振り付けを一生懸命練習した。
「うおおおおお!!!」
数ヶ月後、そこには大都市の会場を埋め尽くすファンがいた。 あれから懸命に練習したティティたちは、再び評価され始め、ついには最大の都市【王都ヴァラリアル】でコンサートを開くまでになった。
(まさか、ここまで上り詰めるとは)
「みなさん! 楽しんでいってくださいね!」
「みんなのために歌うでー!!」
「いままでありがとうございました!!」
その講演のあと、ティティたちはアイドルを解散することになる。
ゴシップ誌により、口パク、グッズ、チケットの過剰値上げなど昔の悪事が暴露されたからだ。
「おおお!!!」
「今日も楽しんでいきー!!」
「おおおお!!」
「が、がんばります......」
「おおおおお!!」
三人は大きな会場をかり人を集めていた。 その熱気はさながら本当のアイドルのようだった。
(もうこの会場のキャパをはるかにオーバーする人を集めてるな。 なにげにチケット代もリヴァがじんわり値上げしていってる)
「ふぅ、つかれましたね」
「まあまあの売り上げやな。 このままより上のステージへと向かうで」
ティティとリヴァの二人は注文した高額な定食を食べていった。
「しかし、広げすぎじゃないか? 新しい曲もあまり反応はよくないぞ」
「そんなことはありません。 信仰心は増えています」
「そやでジャーマネ。 ここが売り時や。 もっと大きなキャパの会場を押さえてや」
「でも、いくつか振り付けや歌詞でとちるところもあったので、練習がたりないのでは......」
「リリオン、大丈夫です。 最悪魔法のアイテムで口パクでやれば歌詞はごまかせます」
「そやで、振り付けも完璧じゃなくてもええねん。 ウチらが歌って踊っとることで客が満足しとるんやから。 それよりジャーマネ、グッズの種類が少ないで、もっと用意してや」
「いや、既に在庫がでてるんだよ。 発注が多すぎる」
「私たちの人気なら大丈夫ですよ。 もはや私たちを中心に世界は回ってるのです!」
「そうや。 大舟にのっとけ。 あははははっ!」
そう二人は完全に天狗になっていた。
(嫌な雲行きだな......)
やはり世の中はそんなに甘くはなかった。
「なんでですか!? お客が減っています!」
「絶対におかしい! あんなに人気あったのに!!」
二人は慌てている。 徐々に客の入りが少なくなっているからだ。 強気なグッズの値段や、歌や曲のマンネリによって皆あきはじめた。
「まあしかたないだろ。 最初の曲はヒットしたが、二曲目からはそうでもない。 傷が深くなるまえに諦めて解散したほうがいい」
「あれほどの人気だったんですよ! いい曲さえあれば、また再びあの栄光が取り戻せます!」
「そうや! ウチらは成功者なんや! そんなポッとでの一発屋とはわけがちゃうねん!」
(お前らが完全にポッとでの一発屋だけどな)
「それなら、地道にファンを獲得していく方がいい。 歌とダンスを練習してうまくなればついてきてくれるものもいるかもしれん」
「そうですよ! がんぱればみんな応援してくれます!」
リリオンは二人にそういう。
「リリオン、私たちはスターなのです。 天賦《てんぷ》の才は努力では身に付きません」
「そうや。 センスいうもんはもって生まれたもの。 練習なんて才能のない証拠や」
「で、でも......」
(だめだ。 簡単に成功したから、自分達に才能があるのものだと信じて疑わない、二人とも生粋のお調子者だからな。 時流にのっただけのものは、いずれみんな気が付く)
それからもティティたちはどんどんファンは減らしていった。
「くっ...... なぜです。 どんどん人が減っていく」
「あかん! このままやと通算二度目の破産や! 在庫が! グッズの在庫がぁ!!」
「そらそうだろ。 一曲だけの流れでファンのことも考えず、ただビジネスや自分のことばかり、そんなものについていくものはいない」
「な、なっ、なんてこと...... 私たちはいつからか評価されることが当然とばかりに傲慢になっていたのですか」
「そうや、ファンが支えてくれてることに安住してしもうてた...... でももう終わりや」
「そんなことはありません!」
「リリオン......」
「これから一生懸命、練習してファンの方々のために頑張りましょう! 今まで支えてくれた恩返しをしましょう!」
「そうですね。 確かに本質を忘れてた私たちを支えてくれた人々に、感謝をしましょう!」
「そやな。 ええパフォーマンスをみせよやないかい!」
それから三人はダンスの振り付けを一生懸命練習した。
「うおおおおお!!!」
数ヶ月後、そこには大都市の会場を埋め尽くすファンがいた。 あれから懸命に練習したティティたちは、再び評価され始め、ついには最大の都市【王都ヴァラリアル】でコンサートを開くまでになった。
(まさか、ここまで上り詰めるとは)
「みなさん! 楽しんでいってくださいね!」
「みんなのために歌うでー!!」
「いままでありがとうございました!!」
その講演のあと、ティティたちはアイドルを解散することになる。
ゴシップ誌により、口パク、グッズ、チケットの過剰値上げなど昔の悪事が暴露されたからだ。
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