来る気がなかった俺の異世界冒険記 ~転生させた女神が承認欲求モンスターだった~

曇天

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第四十四話

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「すごい数や!!」

 俺たちが砦を見下ろす丘にたつと、モンスターたちの大群が砦の壁にとりつき越えようとしているのが見えた。 それを壁上から兵士や冒険者たちが攻撃して抵抗している。

「あの数だといずれ壁を越えられる! ティティまだか!」

「いました奥! あのあたり!」

 森を指差す。

「森の中かい!! はよ見つけんとやばいで砦が落ちる!」

「モンスターたちに見つからないように、迂回して近づきましょう!」

 リリオンのいうように、俺たちは横を通り森にはいった。

「モンスターはいないな」

「ええ、前方に集中していますね」

「はようせんと、砦越えたら町まですぐやで! このはやさやと増援が間に合わへん!」 

「ですね! 急ぎましょう!」

 俺たちは森を足早に走る。

「すこしとまってください!」

 小声でティティがいう。

「どうした?」

「これは......  大きな魔力があります」

「せやから、リーダーやろ。 魔王ちゃうんか」

「いえ、これはモンスターではありません......」

「えっ!? モンスターじゃない...... 人間」

 俺たちは顔を見合わせる。

「モンスターを人間が操作してるってことか...... まさか」

「わかりません...... ゆっくり近づきましょう」

 ティティがいうようにゆっくりと茂みを進む。 そこには複数のローブをきたものたちがいた。 それはサクラスだった。

「あれは、サクラスか!」

「あれ! サクラスの持ってる杖にあるやつ! ネルネストがもってこい言うた邪神の宝玉がくっついてる!」

 リヴァのいうように杖の円状の先端にいくつもの宝石がついていた。

「確かに間違いないな。 他にもいくつか似たような石か宝石があるな」

「あれでモンスターを操ってるんでしょうか」

「はよ、とめやなあかん!」

「まて! そばに二人いる。 ギルガと......」

「ええ、リグソルです......」

 リリオンは真剣な顔をしている。

「あの三人を相手に戦わないといけないのか......」

「私がリグソルをとめます!」

 リリオンがいうと、ティティがうなづく。

「我がギルガを、うぬはリヴァと共にサクラスと戦え」 

(いつの間にか達人モードになってる)

「よし! いくでレージ!!」

「わかった!」

 
「サクラス、モンスターを操ってどうするつもりだ。 国でも滅ぼすのか」

「リグソルがいうそれも面白いですが...... ちゃんとした目的があるのです」

「目的もなにも王都を潰すんだろ」

「ええ、でもそれが目的ではありませんよ」

 ギルガにサクラスは微笑んでこたえた。

「......くだらん」

「そういわないでくださいリグソル。 あなたには力を与えたでしょう」

「......なにかいる」

 その時、サクラスの杖に俺が投げた魔鏡剣《ミラーブレイド》があたる。

「くっ......」

 杖が手元を離れころがった。

「魔練掌《マギカブレイク》!!」

「魔練掌《マギカブレイク》......」

 リリオンとリグソルは技をだしあい衝突し離れた。

「こいつら! ぐはっ!」

「うぬの相手は我だ」

 ティティがギルガを吹き飛ばして、そのあとをおった

「また、あなたたちですか」

 俺はリヴァと思形剣《ソートブレイド》でサクラスに切りかかる。 サクラスは抜いた剣でうけた。

「それはこっちの台詞だ。 お前たちは一体、なにが目的なんだ......」

「前にもいったでしょう。 この世界の救済です」

「王都を滅ぼそうとしてるやんけ!」
 
「必要な犠牲なんです。 話しても理解できません。 光よ!」

 まばゆい光が放たれ俺は弾き飛ばされた。

「くっ、魔法か!」

 サクラスの剣が光り輝いている。

「魔法剣やぞ! レージきぃつけや!」

「わかってる」

(あの威力、リヴァとこれを使う)

 思形剣《ソートブレイド》をにぎる。

「二刀流なんてできるんですか!」

 サクラスが切り込んでくる。

(ヴァリアブル【二刀流、魔力をまとう】)

 サクラスと何度も切り結ぶ。 何とか二刀流で魔法剣を防ぐが何度か浅く切られる。
 
「驚いたこれを防ぐ。 二刀流までできるとは、それは魔法...... いやちがうな」

(技量がちがう、二刀流でも防ぎきれない...... だが!)

「ですが...... もう終わりです」

「思形剣《ソートブレイド》、鎌《シクル》」

「なっ! 形が!!」

 俺は剣の形状を鎌にして、剣で防ごうとしたサクラスの肩を切り裂いた。

「ぐはっ!!」

 サクラスが剣を落とし後ろにひいた。

「くっ...... 形をかえる剣、本当にあなたはいろいろ驚かせてくれますね」

 周囲ではリグソルとギルガも二人に押されていた。

「これは困った...... 二人とも!」

 その声でギルガとリグソルはサクラスにかけよった。

「今回は負けておきましょう」

「待て、逃がすか......」

「くくっ...... ではまた」

 サクラスは杖をもち三人は姿を消した。

「くそっ! にげられた!」」

「ああ」

「大丈夫ですか! レージさん!」

 ティティに回復してもらう。

「ああ、なんとかな...... 二人も無事か」

「ええ、リグソルには逃げられましたが、この装備でなんとかギリギリ戦えました」

 リリオンがつかれたようにいった。

「とりあえず、モンスターは四散していくようです」

「......そうか、最悪は避けられたか」

(やつがなにを考えているのか。 このままですまないよな)

 俺は木々の隙間から曇る空をみながら不安が込み上げてくるのを感じた。


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