来る気がなかった俺の異世界冒険記 ~転生させた女神が承認欲求モンスターだった~

曇天

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第五十七話

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 土煙がなくなると、そこには冒険者の五人がたおれていた。

「ぐっ...... なぜだ。 あんな一瞬で意図なんてわかるわけが...... そんな信頼がルーキーのお前たちにあるはすがないのに」 

「信頼はしていたさ。 逆にな...... あいつは混乱すると全員まとめて攻撃すると思ってた」

「な...... そんな」

 そういって絶句した天命の騎士団リーダーは意識を失った。  

「どーです! 私のこの機転!」 

 ティティは胸をはって自慢している。

「うそつけ! ワケわからんようになってウチらごとぶっとばそうと思っただけやろ!」 

「......死ぬかと思いました」

 
『すみません。 子供を守ってもらった上、あのものたちを捕縛してもらい、感謝の言葉もありません』

 そう目が覚めたリエルシェルは頭を下げた。 リロは母親とわかったようでそばにくっついている。

「かまわないよ。 さて、これからどうするか」

 捕縛した天命の騎士《ディスティニーナイト》をみる。

「なぜリエルシェルさんを狙ったのかですね」

 リリオンは首をかしげた。

「どこかに売ろうとでも思ったんかな?」

『おそらく、私の魔力を狙ってのことだと思います』

「魔力」

『ドラゴンはその身に魔力を多く宿します。 それらを使ってかつてから魔法の実験につかわれることがありました。 それが理由かと』

「魔力、それってまさか」

「ほなら、またあいつらか......」

「ん? ん? どういうこと?」

 ティティは首をかしげた。

「ほら、サクラスですよ」

「ん?」

 全くピンときてないティティにリリオンが説明している。

「やつらは何をしようとてんねん」

「魔王に関係するのかもな......」

『魔王...... かのものがやはり復活しているのですね』

「しってるのか?」

『かつて私は勇者カイゼルクと共に魔王を倒したのです』

「えっ!?」

「自分、魔王たおしたんか!」

『倒したのはカイゼルクです。 私はモンスターを排除し、魔王のところにカイゼルクを送りました』

「そうか...... そのあとカイゼルクは狂ってしまったのか」

『......それは違います』 

「ちがう? でも世界を支配するため他国を侵略したんやろ」

『いいえ、それは他の国が画策したことです。』

「どう言うことですか!」

 ティティは声をあげた。

『......魔王を倒したカイゼルクは民の支持が集まりました。 人々の英雄となったのです。 カイゼルクの能力と人望を恐れ、自らの国を奪われると危惧したほかの国の王はカイゼルクを討つため、アルコーン教を使いカイゼルクが狂ったと喧伝して回ったのです』

「アルコーン教...... それでカイゼルクを悪者に仕立て上げたのか」

『はい、カイゼルクは人々の膨れ上がる憎悪で悪魔のように恐れられ、他の国々と戦争となりました。 私は逃げるよういいましたが、民を捨て置けないと......』

「そんな...... カイゼルクは」

 ティティはショックをうけているようだ。

「ひどい...... カイゼルクさんがかわいそう」

 リリオンがつぶやく。 それをみてリロはすりよった。

「そうか、まあ今となってはどうしようもないな」

「せやな。 歴史はかわらへん」
 
 しばしの沈黙が場をつつむ。

「しかし、今はリエルシェルたちをかくまわないといけない」

「ですね。 ならば神殿にむかえましょう」

『わざわざすみません』

「まあ、じいちゃんはドラゴンかってええいうてたしな」

「みなさん......」

 リリオンが森の茂みをみている。

「やはり気づいたか......」

 茂みからリグソルがでてきた。

「リグソル!!」

(くっ、やつらと戦ってかなり弱ってるのに、よりにもよってこいつか、回復魔法はもう一度しかつかえん、誰に)

「ここは私に......」

 覚悟したようにリリオンがいう。

「わかった...... ヒール」

 俺はリリオンを回復させた。

「そうだ。 俺はお前とたたかうためにきた」
 
 そういってリグソルは構え、リリオンも構える。

 二人の攻防はすさまじく、拳打の応酬がはじまる。 ほぼ互角のたたかいだった。

「ぐっ......」

「やはりお前は天才だ...... サクラスから得た力をもってしても互角とはな」

「なぜサクラスから力をえたのリグソル」

「......強くなりたかったからだ。 天才であるお前を越えるために」

「そんなことで......」 

「お前とて力を求めているだろう。 お前もこっちにこい! より強さを求めるために」

「それって好きってことなん?」

 リヴァがそう唐突にいった。 

「ち、ちが......」

 リグソルが動揺している。

「みたいですね。 強くなったらなびくとでも思ってるんですね」

 ティティが追い討ちをかけた。

「ち、ち、ちがっ」 
 
「なんや、お前も悲しい過去とかあるんかとおもったら、しょーもない。 ただ普通に告白できんだけか」

「なんか拍子抜けですね。 ギルガぐらいのバックボーンもないし」

『これはドラゴンでももてませんね』 

(おいおい、リエルシェルにまで......)

「な、なっ......」

「リグソルそうだったんですか。 でもごめんなさい。 そんなことで力を求めるあなたは嫌いです」

「なっ!」  

(とどめ......)

 リグソルはふらふらして膝からくずれ落ちた。

「ああ、ふられた」

「しゃあないな。 これは」

「終わったな...... あわれだ」

 
「なっ!?」

 かえると神殿が大きく破壊されていた。

「ああ! レージさん!!」

 バチュアがはしりよってきた。

「どうしたんだ!? これは」

「なにがあったんや!」

「実は...... ローブを来たものたちが急に襲ってきたんです」

「それで大丈夫なのか」

「ええ、信者さんも怪我をしていますが無事です。 あのかたたちのお陰です」

 そこにはローブのものたちを幾人か捕縛している武道着をきたものたちと、オークとコボルトたちがいた。

「おじいちゃん! それにガランさん、ジェスザさんだ!」

 リリオンがいうと、三人はこちらにきづいた。

「すまぬな。 神殿をまもれなんだ」

「んだ。 かなり強くて人を守るので精一杯だったで」

 ガランとジェスザがいうと、老師が話した。

「数が多すぎてな。 さすがにわしもよる年波にはかてん」

「かまいません。 誰も死んでないようでたすかりました」

 俺たちは三人に神殿の警護を頼んでいた。

「それでこのものたちは」

「わかりませんティティさま。 ただ命すら捨てるほどの覚悟、厄介でした」  

「んだな。 こいつらおかしい、味方が倒れても踏みつけて進んでくるだ。 ゾンビみたいだで」

 ガランとジェスザはそういうと、老師もうなづく。

「デミウルゴスさま、とかなんとか叫んでおったのう」  

「デミウルゴス!? やはりこいつらアルコーン教か!」 

「私たちを排除しにきたのでしょうか」 

 ティティがいうと、バチュアがいいづらそうにはなす。

「それが、祀っていた宝玉をうばっていきました」

「宝玉やて! ほなら!」

「ああつながったな。 サクラスは教団の人間か」

 とりあえず、怪我人を治療して捕まえたものをギルドに送った。 そしてグニャリとしているリグソルは老師にあずけた。


「なんだって!? 修理だけじゃなく、ド、ドラゴンの住む住居をたててくれって!」

 ガフレインに頼むと、言葉を失う。

「金なら払う。 無理かな」

「わ、わかったよ。 旦那たちはむちゃくちゃなのはしってるつもりだ。 やらせてもらうぜ! それにここまで壊されて黙っちゃいられねえしな」

『おねがいします』

 ガフレインはさっそく作業に取りかかった。

「お金って報奨でたりるんか?」

「リヴァ、お前大臣から別に金をもらってたよな」

「いやや! あれはウチのお金やぞ!」

「あとで倍にして返す」

「倍...... 絶対やぞ! 絶対やからな!」
 
「さて、俺たちは教団を探るぞ」 

「ええ」

「わかっとる! だけどお金は返せよ!」

「そうですね」

 俺たちは話を聞くために城へとむかった。

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