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第五十九話
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「警備すらいないな」
俺たちは夜、宿を抜け出す算段をしていた。 外を見ても誰一人歩いていない。
「外には誰もいません」
ティティがいうように町は死んだように音もなく静かだ。
「神殿には高位のものしかはいれないんですよね」
「魔王を隠しているからかもしれへんな」
リリオンとリヴァがそう話す。
「だが魔王がいるのに、あまりに警備も警戒も無さすぎる」
「わかりませんが、みんないわれたことを守るから、警備もいらないのかもしれません」
「えらいおりこうさんやな。 ウチやったら絶対はいってるわ」
「そういう風に育てられているのかもしれません。 私も武道をすることに疑問を覚えませんでした。 別にいやではなかったですが」
リリオンはそういう。
「小さい頃から教義を刷り込まれてるから疑問にも思わないってことか」
「ええ、そしてある程度の年齢になると他の町に布教にでていく」
そういいリリオンがうなづいた。
「この宿の主人も年齢にはそぐわない感じでした。 しかしそれは本当に幸せなのでしょうか」
ティティはつぶやく。
「わからんが、本人たちもわからないかもしれんな」
「他のことを知らんのやからな」
「それでどうやって神殿までいって忍び込みますか」
「魔王がおるんやったら、そのまま突っ込んでぶっ倒したらエエんちゃうか。 今弱っとんのやろ」
リリオンにリヴァはこたえた。
「一度失敗すればはいれることはそうないだろうな。 リヴァのいうとおりこのチャンスを逃せないか。 しかしそのままはいるのはリスクがある。 ばれたら信者たちは何をするかわからんし、子供たちだから傷つけたくもない」
「ならば、私が。 【遮断障膜】《シークレットメンブレン》」
俺たちの体が仄かに光る。
「なにをした?」
「姿や声を外部から遮断する膜をはりました。 これで外から我々を認知できません」
「ティティさん! そんなことできたんですね!」
「ただのただ飯食らいじゃなかったな!」
「そんなんあんならはよせえ。 ボケ」
「なんなんですか! 二人ともそのいいぐさ! 力が戻ったから使えるようになったんですよ!」
「よし、いこう」
俺たちはそのまま宿をぬけると神殿へとちかづき、門があくのをまった。
しばらくまっていると、他より豪華な白い服をきた高位の信者らしきものが現れ門へと近づく。
「私だ」
信者が門の中へと呼び掛けると、大きな門が開いた。
「いくぞ」
俺たちは若い男とそのすきに一緒にはいった。
「それでどうします」
「このままついていこう。 ついてることにこの男はかなりの地位にあるものらしいしな」
「そやな。 案内してもらおうや」
男について、神殿内部へとはいる。 そこは荘厳な雰囲気で巨大な円柱が何本もたっている。
「おおきな建物ですね」
リリオンは驚いたようにいった。
「ああ、それに中も整然としているな。 人もあまりいないから逆に不気味な感じがする」
「そやな。 なんか暖かみがない冷たい感じがするわ」
「私の神殿の方が立派です!」
胸をはってティティがいう。
信者は扉まえにいた信者とはなしをしている。
「ヤルダバオトさまは......」
(ヤルダバオト、最高司祭か)
「【創生の間】におられます」
俺たちがついてきた信者は、扉のまえにいた信者とはなして、奥へとすすみかなり長い螺旋状の石階段を下りていく。
「かなり魔力を近く感じます」
「魔王のご登場か」
「気ぃ抜くなよ」
「はい」
階段を下りるとそこにはおおきな扉がある。
「わたしです」
信者がそういい扉をあけた。 奥には祭壇がありその上に悪魔のような二本角をもつ巨大な石像が座る姿勢でおかれている。 その前には杖をもつ老人がたっていた。
「あれが最高司祭か、さすがに子供じゃないな。 その前のは......」
「石像か思うたらあれが魔王か。 あれ! あのじいさんのもってるのはサクラスのもってた杖や!」
「ティティさん、魔王はいきていますか」
「ええ、ですが魔力が弱い。 自由には動けないようです」
「なら今のうちに」
「まて」
俺はみんなを止めた。
「ヤルダバオトさま」
男が老人をよんだ。
(ヤルダバオト、やはり、こいつが最高司祭か)
「それで邪教の神殿は......」
「はっ、それがオークとコボルト、マジックアーツ、それにドラゴンまでいるようで容易に攻められないとのこと。 更に国から兵まで警備についています」
「そうか...... ドラゴンも押さえられたか。 まあよい」
しわがれた声で老人がこたえた。
(こいつがドラゴンを捕縛させようとしていたのか)
「それでこの町にはいったもののことは」
「はい、入り宿に泊まったことまではわかっていますが、その後どこかに姿を消したと...... すみません。 いま全力で探しています」
「......もうよい、さがれ」
「はっ!」
男は部屋からさっていった。
「もういい、もうすぐだ。 ドラゴンの魔力はほしかったがら、まあ十分であろう。 君たちがきてくれたからな」
そういうと老人はこちらに向けて杖をふる。 衝撃が伝わった。
「うわぁ!!!」
俺たちは吹き飛ばされた。
「俺たちがいることをしっていたのか!」
「さっき気づいたのだよ。 ふふっ、なかなかうまく隠れる...... だが姿や声をうまく隠せても、漏れでる魔力はすべて隠せないようだ」
そういってヤルダバオトは地面に杖をついた。
「魔王をどうするつもりだ」
「どうもこうもない、使うに決まっている」
「お前神に仕えとるんやろ! そんなことしたらどうなるかわかっとんのか!」
「もちろんだとも」
「阻止します!!」
「できはしない...... さあ動け魔王よ」
杖をかかげるとその杖は光り、石像のような魔王が光だした。
俺たちは夜、宿を抜け出す算段をしていた。 外を見ても誰一人歩いていない。
「外には誰もいません」
ティティがいうように町は死んだように音もなく静かだ。
「神殿には高位のものしかはいれないんですよね」
「魔王を隠しているからかもしれへんな」
リリオンとリヴァがそう話す。
「だが魔王がいるのに、あまりに警備も警戒も無さすぎる」
「わかりませんが、みんないわれたことを守るから、警備もいらないのかもしれません」
「えらいおりこうさんやな。 ウチやったら絶対はいってるわ」
「そういう風に育てられているのかもしれません。 私も武道をすることに疑問を覚えませんでした。 別にいやではなかったですが」
リリオンはそういう。
「小さい頃から教義を刷り込まれてるから疑問にも思わないってことか」
「ええ、そしてある程度の年齢になると他の町に布教にでていく」
そういいリリオンがうなづいた。
「この宿の主人も年齢にはそぐわない感じでした。 しかしそれは本当に幸せなのでしょうか」
ティティはつぶやく。
「わからんが、本人たちもわからないかもしれんな」
「他のことを知らんのやからな」
「それでどうやって神殿までいって忍び込みますか」
「魔王がおるんやったら、そのまま突っ込んでぶっ倒したらエエんちゃうか。 今弱っとんのやろ」
リリオンにリヴァはこたえた。
「一度失敗すればはいれることはそうないだろうな。 リヴァのいうとおりこのチャンスを逃せないか。 しかしそのままはいるのはリスクがある。 ばれたら信者たちは何をするかわからんし、子供たちだから傷つけたくもない」
「ならば、私が。 【遮断障膜】《シークレットメンブレン》」
俺たちの体が仄かに光る。
「なにをした?」
「姿や声を外部から遮断する膜をはりました。 これで外から我々を認知できません」
「ティティさん! そんなことできたんですね!」
「ただのただ飯食らいじゃなかったな!」
「そんなんあんならはよせえ。 ボケ」
「なんなんですか! 二人ともそのいいぐさ! 力が戻ったから使えるようになったんですよ!」
「よし、いこう」
俺たちはそのまま宿をぬけると神殿へとちかづき、門があくのをまった。
しばらくまっていると、他より豪華な白い服をきた高位の信者らしきものが現れ門へと近づく。
「私だ」
信者が門の中へと呼び掛けると、大きな門が開いた。
「いくぞ」
俺たちは若い男とそのすきに一緒にはいった。
「それでどうします」
「このままついていこう。 ついてることにこの男はかなりの地位にあるものらしいしな」
「そやな。 案内してもらおうや」
男について、神殿内部へとはいる。 そこは荘厳な雰囲気で巨大な円柱が何本もたっている。
「おおきな建物ですね」
リリオンは驚いたようにいった。
「ああ、それに中も整然としているな。 人もあまりいないから逆に不気味な感じがする」
「そやな。 なんか暖かみがない冷たい感じがするわ」
「私の神殿の方が立派です!」
胸をはってティティがいう。
信者は扉まえにいた信者とはなしをしている。
「ヤルダバオトさまは......」
(ヤルダバオト、最高司祭か)
「【創生の間】におられます」
俺たちがついてきた信者は、扉のまえにいた信者とはなして、奥へとすすみかなり長い螺旋状の石階段を下りていく。
「かなり魔力を近く感じます」
「魔王のご登場か」
「気ぃ抜くなよ」
「はい」
階段を下りるとそこにはおおきな扉がある。
「わたしです」
信者がそういい扉をあけた。 奥には祭壇がありその上に悪魔のような二本角をもつ巨大な石像が座る姿勢でおかれている。 その前には杖をもつ老人がたっていた。
「あれが最高司祭か、さすがに子供じゃないな。 その前のは......」
「石像か思うたらあれが魔王か。 あれ! あのじいさんのもってるのはサクラスのもってた杖や!」
「ティティさん、魔王はいきていますか」
「ええ、ですが魔力が弱い。 自由には動けないようです」
「なら今のうちに」
「まて」
俺はみんなを止めた。
「ヤルダバオトさま」
男が老人をよんだ。
(ヤルダバオト、やはり、こいつが最高司祭か)
「それで邪教の神殿は......」
「はっ、それがオークとコボルト、マジックアーツ、それにドラゴンまでいるようで容易に攻められないとのこと。 更に国から兵まで警備についています」
「そうか...... ドラゴンも押さえられたか。 まあよい」
しわがれた声で老人がこたえた。
(こいつがドラゴンを捕縛させようとしていたのか)
「それでこの町にはいったもののことは」
「はい、入り宿に泊まったことまではわかっていますが、その後どこかに姿を消したと...... すみません。 いま全力で探しています」
「......もうよい、さがれ」
「はっ!」
男は部屋からさっていった。
「もういい、もうすぐだ。 ドラゴンの魔力はほしかったがら、まあ十分であろう。 君たちがきてくれたからな」
そういうと老人はこちらに向けて杖をふる。 衝撃が伝わった。
「うわぁ!!!」
俺たちは吹き飛ばされた。
「俺たちがいることをしっていたのか!」
「さっき気づいたのだよ。 ふふっ、なかなかうまく隠れる...... だが姿や声をうまく隠せても、漏れでる魔力はすべて隠せないようだ」
そういってヤルダバオトは地面に杖をついた。
「魔王をどうするつもりだ」
「どうもこうもない、使うに決まっている」
「お前神に仕えとるんやろ! そんなことしたらどうなるかわかっとんのか!」
「もちろんだとも」
「阻止します!!」
「できはしない...... さあ動け魔王よ」
杖をかかげるとその杖は光り、石像のような魔王が光だした。
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