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第三話

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 そこは町外れで、昼なのに大きな木々が周りにあるせいか、ひどくうす暗い。

「ここはなかなかだな......」

「ぴ...... ぴ」

 そこは放置された墓地のようで崩れた墓石や木の板が散乱している。 どうやら恐ろしいモンスターがでるようになり放置されたと受付のマクロさんがいっていた。 

(そういや、マクロさんあそこは辞めた方がいいっていってたな。 依頼人の不利になるからこれ以上はいえないが、察してくださいとも......)

「とはいえ、全く気にせずきたんだが」

「ぴー......」

 鼻唄を歌いながら歩くと、スラリーニョがあきれるようになく。 

「クァクァ!」

 空を飛んでいたあおまるがある場所で旋回している。

「あそこか!」

 その下には朽ちた大きな教会がある。
 
「ここか」

 中に入ると屋根がなくがらんとしている。 床板もところどころが
はげて穴になっていた。

「ぴー! ぴー!」

「なんだスラリーニョ? おっ、あれは」

 教会の奥、中央の壇上の机の前に小さく光るものをみつける。 近づくと鎖がついた金のペンダントだった。

「あった、あった! 簡単だったな。 これで10000ゴールドとは楽な仕事だ」

「ぴーー!!」

 スラリーニョが騒ぐ。

「教会じゃ騒いじゃいけません...... って、なんじゃこりゃ!」

 振りかえると床板の穴から続々と骸骨たちがでてきた。 

「ほぎゃぁぁ! 骸骨だぁぁぁ!!」

 骸骨たちはワラワラとこちらに迫ってくる。

「帰り道を防がれてる!! くそ! やるしか!」

 オレは剣で骸骨たちを切り裂いた。 心が痛む。

「ごめんなさい! ごめんなさい!!」

 しかし斬り倒した骸骨は土くれになると、すぐ元に戻り立ち上がってくる。

「これ再生してるのか!?」

 上空から突風がふき、何体かの骸骨をふきとばした。

「ナイスあおまる!」

「クァ!」

「いくぞ! 出口にはしれスラリーニョ!」

 オレは少なくなった骸骨を突破しようとした。

「ぴーー!」

 スラリーニョが、オレにぶつかり一緒に転ぶ。

「ぴーぴー!」

「スラリーニョ、なにして......」

 そう言おうとすると黒い玉が高速で横切りそばの机をなぎ倒した。

「なんだ!?」

 見ると奥に頭までのローブを被り杖を持った骸骨がいる。 その目は窪《くぼ》んでいるが、赤い光りが目のように灯っている。

「あいつか!! 今のは魔法!?」

「ぐっ! 私の眠りを妨げるのは貴様か......」

 そうローブの骸骨は不快そうにしゃべった。

「なっ、しゃべれるのか!」

「......なんだ貴様、モンスターをつれている...... どういうことだ」

「知らん! なんか神様っぽいじいさんからもらった力なんだ!」

「......まあそんなことはいい...... ぐっ、絶え間ない怒りと憎悪から逃れるため眠っていた私を起こしたのだ。 早く失せぬなら、その報いは受けてもらうぞ......」

 その骸骨はなにか苦しんでいるように見えた。

「まて! 話し合えるなら」

「問答無用......」

 ーー根源よりいでし黒き黒き闇よ。 その力我が前に現せーー

「......ダークスフィア」

 杖からさっきより大きな黒い玉がオレたちにむかってくる。 オレはスラリーニョをだき飛びかわした。 黒い玉は骸骨たちと後の壁を吹き飛ばした。

「ぐわっ! だ、大丈夫かスラリーニョ!」

「ぴ、ぴ」

「クァ!!」

 あおまるが滑空してローブ骸骨に体当たりする。

「くっ、うっとうしい......」

 骸骨はあおまるを捕まえた。

「あおまるになにしてんだあ!!」 

「ぴーーぴー!!」

 オレとスラリーニョは突撃し、剣で斬りつけスラリーニョは頭突きをする。 がすぐ斬ったり壊れた箇所も再生してしまった。

「そんな攻撃で死霊たる私を倒せると思うか......」
  
 オレたちは腕の一振りで床に弾かれ転がる。

(ぐっ! ダメだ強い! 腕力でも勝てない! 切ってもぶつかっても再生しちまう!)

「この手でくびり殺してやろう!」

 骸骨はオレに近づき首に手を掛け締め上げてくる。 その苦しさで剣を落としてしまった。

「ぴー!!!」

「クァ!!!」

 あおまるとスラリーニョが、骸骨にぶつかっているようだが弾かれている。

 オレは無我夢中で持ってるものを骸骨に振り回した。

 パリン!

 何かが割れる音がした。

「ぐ、ぐわっ!」

 そうローブの骸骨は声をあげ手を離した。

「げほっ、げほっ!」

(ど、どうなった!?)

 見るとオレの袋に入っていたポーションの瓶が骸骨にあたりわれ、中見が骸骨にかかっていた。 骸骨は煙を出して苦しんでいる。

(こいつ! ポーションが弱点か!)

 オレは鞄からポーションの瓶を出すと骸骨に投げつける。

「ぐわっ!! や、やめろ!!」

 骸骨は煙を出しながら苦しんでいる。 その赤い目が消え青く光るのをみた。

(赤い目が消えた。 あおまるの時と同じか、もしかして......)

「おい骸骨やめて欲しいならオレと契約しろ」

「な、なんだと、この私が...... いや、怒りと憎しみが消えている......  
そうか! わかった契約しよう!」

 なぜかあっさりそういい、手をとると骸骨の額に模様が浮き出る。

「よし! これで人を襲うなよ!」

「ええ、もちろん。 とてもいい気分だ。 こんな清々しい気持ちはこの姿になってはじめてですよ」

「どういうこと?」

「どうやら私はいにしえの魔法でワイトというモンスターにされたようです。 そして憎しみと怒りで我を忘れていたようで......」

 そうワイトは頭をかいた。

「赤い目ってそういうことなの?」

「おそらく制御不能な魔力の暴走かと、それがダメージを受けたことで一瞬自我が戻り、契約により解放されたのかと思います」

 そう冷静に説明してくれた。

「なるほど、それであおまるも人を攻撃していたのか...... ってことは、モンスターは全部もとに戻せるってこと?」

「どうでしょうか...... 魔力の暴走ではなく、もとより憎悪や怒りをもつものは戻せないかもしれません。 私やそこのスライムたちはそういうものがなかったのかもしれませんね」

(そうなのか...... 全部戻せればよかったんだが)

「ぴ、ぴ?」

 スラリーニョを撫でながらオレは考えた。

「まあ、とりあえずお前の名前は、えっと、ワイトだから...... わーちゃんで」

「わ、わーちゃん、わ、わかりましたマスター」

 オレはワイトのわーちゃんを仲間に加えた。

 オレたちはギルドへと戻る。 町の人々はわーちゃんをみてさすがにざわついている。

(完全に浮いているな)

「何やら人々がざわついておりますな。 何かめずらしいものがあるのでしょうか」
  
 わーちゃんがのほほんといった。

(お前だよ! おまえのせいだよ! とは言いづらいな)

 店のガラスにうつるローブをはおった骸骨の姿をみてそう思う。 

「うわぁぁあ!」

 ギルド受付のマクロさんが予想通りのリアクションをした。

「な、な、なんですか...... アンデッドまで仲間にしたんですか」

 小声で耳打ちしてくる。

「う、うん、あの教会にいてさ、まあ契約したし大丈夫」

「ま、まあ、みたいですけど...... ああ依頼の金のペンダントお預かりします......」

 オレはカードに入金してもらい、掲示板をのぞく。

「なあ、わーちゃんこの中によさそうな依頼あるかな? できるなら殺さず仲間にできる強いやつ」

「そうですな。 私の魔法なら倒せるモンスターばかりですが、強いやつとなると、ふむ、これなどいかがか?」

 一枚の依頼書を指差す。

「ゴーレム?」

「はい、岩でできた人型のモンスターで魔力で再生しますし、かなり強いです」

「報酬は2000かまずまずだな。 よしこれしよう」

 オレは依頼を受けるとギルドをでた。

(まずわーちゃんを何とかするか)

 この間の武具屋に入った。

「はい、いらっ、うわぁ!」  

「もういいよ。 それは」

「お客さんなんなんです!?」
  
「ワイトのわーちゃんだよ」
 
「わーちゃん......」

 店の親父が怯えながらわーちゃんをみる。

「とりあえず、顔を隠せそうなものない?」   

 そう店主に耳打ちする。

「え、ええ、さすがにこのままだと外の冒険者に敵だと思われますからね。 じゃあこの仮面とフード付きのローブなんてどうでしょう」

 そう仮面を指差した。  

「ふむ、確かにこれなら人を驚かせることもないか」

「えっ? 私が人を驚かせてましたか?」

 そうわーちゃんは意外そうにいったがスルーする。

「そうか、ならあとオレの剣と鎧、スライムとこのウィンドバードに身に付けられるものはないかな。 5000ゴールド以内で」 

「そうですな。 えっとお客さんにはこの鉄の剣と胸当て、スライムさんには鉄の兜、ウィンドバードさんにはこの疾風の指輪などいかがでしょう」

「あおまるに疾風の指輪?」

「ええ、速く動ける魔法の指輪です。 ほら足につけられるでしょう」

 確かにあおまるの足にぴったりだった。

「わかった。 じゃあそれで」

「毎度どうも!」

 それを身にまとい店をでる。 

「うん、少し重いが何とかいけるな。 大丈夫かみんな」

「ぴーぴー!」

「クァ!」

「ええ、少しみえづらいですが、大丈夫です」

 みんなそれぞれ気に入ったようだ。

「じゃああとはポーションと...... ってポーション使えないわーちゃんはどうやって回復するの?」

「私は一応時間があれば魔力で再生しますよ」

「すげー無敵じゃん!」

「いえいえ、強い魔法や魔力のこもった武器、ターンアンデッドなどの神聖魔法やヒーリング系の回復魔法、ポーションなどの回復薬で死にます」

「そうなんだ。 そういやポーションでダメージ受けるんだもんな。 なら気を付けないと...... じゃあゴーレム討伐かつ仲間にするためいくか!」

 オレたちはポーションを買い、意気揚々とゴーレムのいるというスカンラ山に向かった。


 スカンラ山の中腹までにモンスターと出会うが、難なくわーちゃんの魔法で蹴散らした。 ファイアスコーピオンのスピとロックリザードのロザドを契約して仲間にする。 それ以外は退治せざるおえなかった。

「かわいそうに......」

「ぴー......」

「クァ......」

「ギギ......」

「グ......」

「......仕方ないですね。 ただの動物なら放っておいてもよいのですが、この憎悪と怒りの衝動は人に向かいますから...... それに本人たちも激しく苦しみますからその苦痛より解放したと思いましょう」

 わーちゃんがそういう。

(わーちゃんも苦しくて眠りについたらしいからな。 よほど苦しいんだろうな)

「そうだな......」

 オレたちは倒したモンスターを土に埋め供養する。

「それにしても、そもそもなんなんだモンスターって?」

 わーちゃんにオレは聞いた。

「そうですね。 端的に言えば魔力を浴びて変質した生物や物質でしょうか」

「ふーん、前から気になってたけど魔力ってなに?」

「魔力とはこの世界に満ちる源たる力です。 感情などからも生まれます。 そして、より濃い場所に強いモンスターが生まれ、さらに魔法へと変換できる力でもありますね」

「源の力か...... オレも魔法使えるの?」

「ええ、魔力を練り、特定の言葉や音、記号を使えば誰にでも使えます。 お教えしましょうか」

「頼むよわーちゃん。 みんなにも教えてやってくれ」

「了解しましたマスター」

 オレたちは道中わーちゃんに魔力の使い方と魔法を教えてもらうことにした。
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