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第六話

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「う、うん、なんだ......」

 オレが目覚めると掘っ立て小屋のような木の家の中にいた。 周りにモンスターたちが心配そうにみていた。

「おまえたち!? ここは」

「おお! お目覚めなされましたなマスター」

 わーちゃんが家に入ってきた。

「オレどうしたんだ?」

「ええ、おそらく多くのゴブリンたちと契約したせいで魔力がつきたのかと」

「そうか、契約には魔力がいるからそれで......」

「人やモンスターは魔力を急激に失うと危険なのです。 その事をお伝えするのを失念していました。 私の不徳のいたすところ...... ミリエルどのがマジックチャージで魔力を回復させてくれたのです」

 そういうとオレの横にミリエルが眠っていた。

「そうか、悪いことしたな」
 
「それは起きてから、それより、ゴブリンたちから妙なことを聞きまして」

「妙なこと?」

「はあ、みんながおかしくなる少し前に、魔法使いらしきものが村に現れたとのこと」

「そいつが暴走と関係あるってこと?」

「今はまだ...... まあ、もう少し回復するまでお眠りください。 ゴブリンたちのことは私が対応しておきますので」

「わかった。 あとは頼むよ......」

(魔法使い...... 誰かがこの状況に関与しているのか)

 そう考えながら眠気に襲われそのまま眠った。


 次の日ギルドからマクロさんに確認にきてもらった。

「ほぎゃああ!! めちゃくちゃ増えてるーー!!」

 20人増えたゴブリンたちをみてマクロさんは卒倒しそうになっている。

「てへっ、増えちゃった」

「増えちゃった...... じゃないですよ! 増やさないでって言ったじゃないですか!」

「でも、できるだけ殺したくないんだもん」

「うっ、ま、まあ、それはわからんでもないですが、本当にこれだけのものと契約したんですね」

「ああ、どうやら魔力の暴走でモンスターが暴れているらしいんだ」

「契約したら、暴れなくなったと...... そして、魔法使いのようなものが関与しているのでは...... ですか、ふむ一応ギルドの上の方にそのように伝えます」

「頼むよ」

「ではあとでギルドに報酬を受け取りにきてくださいね」

 そういうとマクロさんは少し怯えながら足早に帰っていった。

「それにしても一応、なんか村っぽくなってるな」

 土地も更に広がり整地され、ゴブリンと他のモンスターたちが協力し、それぞれの家を作っている。 

「ええ、ゴブリンに少し教えると、ずいぶん器用に作るのですよ」

 わーちゃんが感心したように言う。

「あのわーちゃん、ゴブリンと一緒に働いてるその骸骨の人たちなんどけど...... 死んだ人を勝手に操るのはちょっと......」

 オレは手伝っている骸骨たちをみていった。

「ああ、あれは魔法マジックドール、本当の死体ではなく土から作った人形なので、大丈夫です」
 
「そうなのか、よかった」 

(あの教会の骸骨もそういや土だったな)

「では、私は先ほどお話したことを進めたいと思います」

「わかった」

 わーちゃんが去っていった。

「あ、あのもう大丈夫ですか......」

 そうミリエルが心配そうにおずおず近づいてきた。

「ああ、助けてくれたんだってね。 ありがとう」

「いえ、別に...... それにしてもモンスターたちがあんな魔法を使うなんて......」

「ん? あんな魔法」

「ええ、普通あのクラスのモンスターが使う魔法のレベルじゃなかったんですが」

「そうなの? オレたちはわーちゃんに教わった魔法を使っただけだけど」

「そうなんですか? わーちゃんさまはすごい魔法使いだったんでしょうか」

「んー、生前はそうだったかもしれないな。 でもそんなことはどうでもいいさ。 今はオレたちの仲間だから、過去のことはどうでもいいよ」

「そうなんですね...... うらやましい」

「ん? なに」

「いえ、別に......」

 それだけはなすとミリエルは静かに目を閉じる。

(ふむ、なんだろう? いやそれより、これだけ増えたら食料の確保が急務! 果実なんかもいるが土地の拡張も必要、やはり仕事をしなければなるまい)

「次の依頼は高額なものにしたいんだ」

「危険ではないですか?」

「それはそうなんだけど、土地の拡張や工具、資材、食料のための種や苗、耕作具、色々必要になってきた。 つまり先立つものがいる」

「それで高額な依頼ですか...... で、でも」

「もちろん。 ミリエルは行かなくていいから、 オレとスラリーニョ、わーちゃん、ゴレサン辺りで受けるつもりだ」

「あ、はい......」

 ミリエルには必要な種や苗の選別をお願いするため今日は呼んだ。 この分野はわーちゃんより詳しいらしい。

「まあ、先にギルドだ」

「さっき、わーちゃんさまが何か頼んでいましたよね」

「ああ、何か心配だから、手を打つんだってそういってたよ。 心配性なんだ。 もう一回死んでんのに」

(まあ、オレもだけど)

「ふふっ」

 ミリエルは少し笑う。

「じゃあ、いこうか」

「はい」

 オレたちはギルドへ向かった。
 
「ギルドは始めてです」

 そうキョロキョロと珍しそうにミリエルが中を見ている。
 
「いかつい人ばかりでオレは慣れないけどね」  

 周りの屈強な男女をみてオレはいった。

「ここ、掲示板なんだけど、何か良さそうな依頼はあるかな?」

 ミリエルに聞くと依頼書を真剣に見ている。

「......ええと、高額なものはやはり、危険なものが多そうです。 私も聞いたことがある強いモンスターに関わるものばかり......」

「そうなのか、これは報酬がめちゃくちゃ高いけど」  

「絶対にダメです! それはワイバーン、下位とはいえドラゴンの一種です! とても強くて街ひとつ焼き払ったこともあるそうです」

「そうか、オレとわーちゃん、ゴレサンならやれそうだけど......」

「これならどうでしょうか、かなり強いですけど、わーちゃんさまとゴレサンさんなら大丈夫じゃないかと」

 一枚の依頼書を指さした。

「なるほど...... 確かにこれなら他の人よりは楽にこなせるか......」

「あっ! いやでもやめましょう」

 すぐミリエルは撤回した。

「ん? どうして?」

「......あまりあの場所を離れないほうがいいんじゃないかなって、もしかしたらモンスターに襲われるかも......」

 言葉少なに心配気な顔をしている。

「いや、わーちゃんとゴレサン以外もかなり強いんだよ。 魔法もみたでしょ」

「それは! いえ、はい......」

「じゃあこれで、あとは種や苗を買っていこう」

「......はい」

 そしてギルドをでると、ミリエルのすすめで種や苗木、肥料、食料や布や糸、工具などをかうと、木製のリヤカーを引いて拠点にもどった。

「ほう、これで畑もできますな。 布や糸もかなり上質なもの、ミリエルどのは目利きもできるようすだ」

 わーちゃんはそういった。

「いえ、でも草花は好きですし、裁縫なんかは幼い頃よりしていたので」

 ミリエルは伏し目がちにそういった。

(させられていたのかな......)

「まあ、今日はありがとう助かったよ。 疲れたろうから少しやすんでいて」

「はい......」

「ではわーちゃん、スラリーニョ、ゴレサンと共にこれから依頼に向かうよ」

「はっ、スラリーニョどの、ゴレサンどのをつれて決ましょう」

 オレはわーちゃん、スラリーニョ、ゴレサンと共に北にある森の洞窟へときた。

「よし、いくか」

「お待ちくださいマスター、 先陣は私とゴレサンどのでまいります。 後ろからお願いします」

「ガガガガ!」

「確かに、ここならそうか、わかった頼むよ」

 オレは後ろから洞窟へと足を踏み入れる。

 モンスターを倒しながら先へと進む。

「マスターこのような小さなモンスターの契約はあとに......」

 わーちゃんがそういう。

「ああ、この奥にいるやつのために魔力を温存したいからね」

 オレたちは洞窟の奥へと進む。

「行き止まりか」

 そこには広い空間があった。 

「マスター!」

 何か黒い大きな光る二つの赤い光が上から飛んできた。 わーちゃんにかばわれなんとかかわした。 それは巨大なコウモリだった。 

「あれか! ヴァンパイアバット!」

 ヴァンパイアバットは巨大な翼を拡げてはばたく。

「うわぁぁぁ!!」

 衝撃が頭をつんざく。 ゴレサンがまえに立ちふさがる。 頭の痛みはおさまった。

(くっ! 超音波か! ゴレサンがかばってくれて助かった)

「わーちゃんあとは頼んだ! スラリーニョ!」

 オレはいままで温存してた魔法をスラリーニョと連発した。

「ダークスフィア!! ダークスフィア !ダークスフィア!!」

「ぴ! ぴ! ぴ! ぴ!!」
 
 それをかわしヴァンパイアバットは旋回、滑空して向かってきた。

「あとはわたしが!」

 オレとかわったわーちゃんにバットがかみつく。 だがわーちゃんがそのままバットをはがい締めにした。

「ゴレサンどの!」
 
 ゴレサンがその岩の拳で殴る。 

「ギャァ!」

 すると赤かった目が黒くなる。

「よし! 契約!!」

 するとヴァンパイアバットの体に模様が浮かび、おとなしくなった。 オレはバットにポーションを飲ませる。

「よし契約は完了だ! お前はバッタンだ」

「ギャギャ!」

 バッタンはばたいている。

「やりましたな! かなり強力なモンスターですぞ」

「さすがわーちゃん、よくやってくれた。 ゴレサンもありがとう」

「いえいえ、アンデッドと岩の特性です。 毒も麻痺もエナジードレインも効きませぬ体ゆえ」

「ガガガ!!」

「うんうん、二人ともありがとう! さあ帰るよ。 ってスラリーニョどうした?」

 スラリーニョが動かない。 そして光り始めた。

「な、な、な、なんだぁぁあ!」

「これは、スラリーニョどのまさか!?」

 するとスラリーニョの体の色が青色に変わった。

「ぴ?」

「色変わった? なんなんだこれ?」

「お、おそらく進化かと」

「進化!?」

「ええ、モンスターは一定の魔力を得ると、進化しより強い存在へと変化します。 スラリーニョどのはスライムからハイスライムへと進化されたのでしょう」

「そうなのか! お前進化したのか!」

「ぴーー!!」

 スラリーニョは前より素早くなり、くるくると走り回っている。

「それにしても進化とは...... 魔力の最大値のすくないスライムはその弱さからも進化するものはまれなのですよ。 契約にてかなり魔力の最大値が増しておったからかもしれませんな」

「そうなのか! ならみんな強くなっているのか!」

「ええ、通常のモンスターよりははるかに」

(なるほど、他のモンスターたちも進化するのか、わーちゃんやミリエルたちもかな)

 その帰り道、倒していたポイズントードのポイルとルートスパイダーのミチと契約した。

「よし、もうすぐ家だ」

 森を歩いて帰る道、わーちゃんが叫んだ。

「マスター! あそこから火の手が!」

「なっ! あそこはオレたちの拠点じゃないのか! はやくいこう!」

(みんな無事でいてくれ!)

 オレは祈るような気持ちで走った。
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