ブラックボックス 〜禁じられし暗黒の一角〜

第1章 相棒と別れと

村の仕来り-2-

　それを聞いた、母が悲しそうな顔をする。困ったり、悲しんだりやめてほしい。
　父は言う。
　「なぁライトニングその子がいれば山越なんか簡単なんだろ…」
　「うん十秒ぐらいかな」
　アーウェンは前世と今世を混同しちゃいけないとはわかる。わかるから辛く、苦しい。父は続く。
　「そうか、うんじゃ、時々顔見せるぐらい良いんじゃないか」
　父は微笑みかけてくれる。アーウェンはほっとして、頷く。
　「さぁ、せっかく作ったんだ、食べよう不味くならないうちに」
　そう言って、父は立ち上がり、取りに行く。アーウェンも追って行って手伝うことにした。残された、母とミストたちは、話をしようと、しているが、母の怒号が響く。
　「…悪魔」
　ちょうど料理を運ぶところで聞こえてきた言葉。アーウェンは呟くように、ミスト達にブラックボックスに戻るように言う。
　「僕、自分の部屋で食べるよ」
　「ちょっとま…」
　母の言葉を返さず、台所から大皿を持ってきてちょっとずつとる。そのまま部屋に向かう。弁明も謝罪も受けつけない。
　部屋にみんなを呼ぶ。部屋は手狭になった。残った肉を取り出し、特製のソースをかけ、食べ始めの掛け声を大きい声で言う。
　ちょっとずつ料理を載せた大皿に手を伸ばす。
　母の料理はうまい、涙が出るほどだ。みんなは手を出そうどしない。肉を切り、野菜ジュースや野菜だけの、ポテサラとか、がある。
　兎に角今日は楽しく終わらせたい。
　プラントの隣に行って話しかける。
　「行きたい場所はどこにでも行こう。世界は広いし色んな人もいる。他にも色んなものを見て、聞いて、食べて。楽しもう」
　プラントは急に話しかけられて、驚いていたが段々表情が柔らかくなっていった。
　食事をしながら明日のことについて話した、村から出る時は日の出と共に出ることができる。支度出来次第出ることにする。朝から出る事をライトニングには伝えておく。部屋が狭いから一旦ブラックボックスの中で休んでもらう。
　置き手紙を机に置いて、上下の服を何着か揃えて、翌朝を迎える。
　下半身が重く、顔面に柔らかいものが乗っかっている。息ができない、左右に首を振っても息ができない。手で弄り、ようやく空気が吸える隙間ができる。安心して起きると、ライトニングが覆い被さっている。弄っていたのは胸だった。
　ライトニングは艶ぽい声で起こしくれる。
　「おはようございます。気が済むまで触ってくれていいのですが…」
　「そんなこと言ったら夕飯に間に合わなくなるよ」
　気が利いたこと言えず、ライトニングの腰に手を回し、胸に顔を押し当てる。そうすると彼女は立ち上がってくれる。アーウェンはちょっと足を引く。ライトニングはちょっと腰を上げる。それでも朝だ、ちょっと腰を上げただけでは中々そこを通れない。ライトニングのトンネルの屋根にアーウェンの煙突がぶつかる。煙突から濃い煙が出ると折れてしまったのか、あの立派な煙突は見る影も無くなってしまった。