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第3章 守るべきか、攻めるべきか
いい出会いに乾杯-10-
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すっかり夜が更け、クタクタになりながら、下山する。
森を抜け、テントを立てる。食材を切る者、火をこさえる者、調理器具を拭き、香辛料、調味料を用意する者。人それぞれ色々な役割に徹する。
「鹿狩ってきたよー」
アメリアは元気だ。人形だから体力は無尽蔵なのだろうか。あるいは魔力があれば関係ないのだろうか。
「あ、ありがとう…下処理したら、切り分けるから。アメリア処理出来る」
アメリアは火炎放射器で、毛を炙りダニや害虫を倒す。その後、皮を剥ぎ、部位ごとに切り分け、皮の裏面に肉を置く。
アメリアは綺麗に、肉を綺麗に切ってある。骨には、肉のカケラすらついていない。綺麗なものだ。
「これを煮込んで、野菜の端っこも入れて…それで…待つ」
アーウェンは思考停止ならぬ思考放棄した。
ぐつぐつしているうちに、ソースを作る。ハーブと水と塩、胡椒。りんごとほうれん草とトマトを入れる。それらを潰しながらかき混ぜる。茹で上がった、肉を入れ、ソースを掛けながら、じっくり焼く。
木の皿の上に乗せて、切り生焼けか確認する。
(成功だ)
そのまま切り分け、皆で食べる。
皆、鹿の半身の三分の一をペロリとたいらげた。気持ちよく、微睡み、火を見ながらゆっくり時間が進んでいく。
アーウェンは船を漕ぎ始め危ないと思い、縦に降っていた体を横に振るようにすると、支えるように柔らかい感触を感じる。頭を動かし、相手の顔を見る。パドーだ。安心して肩を借りる。このまま寝たい気分だ。
パドーは肩をずらす、アーウェンは、そのままパドーの体にそいながら落ちていく。最後にパドーにつかまれ、膝枕してもらうかたちとなった。
体を捻り、パドーの顔を見る。胸であまり見えない。
「なーにー」
パドーは覗き込んで、いやらしく笑う。
パドーの顔を見るだけで安心する。アーウェンは笑顔をパドーに向ける。
「それはずるいよ———」
パドーの声を聞きつつ眠りについていく。
翌日、アーウェンは寝てしまっていた。意識がはっきりしない中、温かく包まれている。体を動かすと、身体中にツルが絡まっているようになっている。身動きが取れない中よく見ると、皆の腕が体に乗っかっている。一つ一つ、腕をどかしてテントを開け、日差しを浴びる。皆は太陽の光を浴び、体を起こす。
アーウェンは皆より早く、テントを出てまたテントの入り口を締めるようとすると、中の皆は寂しそうにアーウェンを見つめる。アーウェンはそれに気づき、テントを開ける。
「いい朝日だよ、一緒に見よ」
アーウェンそう言い、そっと閉じる。
昨晩、火を起こした場所に目をやると、ふりふりの服を着たお人形が居る。
(嗚呼…)
アーウェン無償にその背中を抱きしめたくなる。
「……大丈夫だった」
アーウェンは言葉を振り絞って言った。
「え、あ…大丈夫だよ。何も起きなかったし、ほら、火だって」
アメリアはあっけらかんと言う。
森を抜け、テントを立てる。食材を切る者、火をこさえる者、調理器具を拭き、香辛料、調味料を用意する者。人それぞれ色々な役割に徹する。
「鹿狩ってきたよー」
アメリアは元気だ。人形だから体力は無尽蔵なのだろうか。あるいは魔力があれば関係ないのだろうか。
「あ、ありがとう…下処理したら、切り分けるから。アメリア処理出来る」
アメリアは火炎放射器で、毛を炙りダニや害虫を倒す。その後、皮を剥ぎ、部位ごとに切り分け、皮の裏面に肉を置く。
アメリアは綺麗に、肉を綺麗に切ってある。骨には、肉のカケラすらついていない。綺麗なものだ。
「これを煮込んで、野菜の端っこも入れて…それで…待つ」
アーウェンは思考停止ならぬ思考放棄した。
ぐつぐつしているうちに、ソースを作る。ハーブと水と塩、胡椒。りんごとほうれん草とトマトを入れる。それらを潰しながらかき混ぜる。茹で上がった、肉を入れ、ソースを掛けながら、じっくり焼く。
木の皿の上に乗せて、切り生焼けか確認する。
(成功だ)
そのまま切り分け、皆で食べる。
皆、鹿の半身の三分の一をペロリとたいらげた。気持ちよく、微睡み、火を見ながらゆっくり時間が進んでいく。
アーウェンは船を漕ぎ始め危ないと思い、縦に降っていた体を横に振るようにすると、支えるように柔らかい感触を感じる。頭を動かし、相手の顔を見る。パドーだ。安心して肩を借りる。このまま寝たい気分だ。
パドーは肩をずらす、アーウェンは、そのままパドーの体にそいながら落ちていく。最後にパドーにつかまれ、膝枕してもらうかたちとなった。
体を捻り、パドーの顔を見る。胸であまり見えない。
「なーにー」
パドーは覗き込んで、いやらしく笑う。
パドーの顔を見るだけで安心する。アーウェンは笑顔をパドーに向ける。
「それはずるいよ———」
パドーの声を聞きつつ眠りについていく。
翌日、アーウェンは寝てしまっていた。意識がはっきりしない中、温かく包まれている。体を動かすと、身体中にツルが絡まっているようになっている。身動きが取れない中よく見ると、皆の腕が体に乗っかっている。一つ一つ、腕をどかしてテントを開け、日差しを浴びる。皆は太陽の光を浴び、体を起こす。
アーウェンは皆より早く、テントを出てまたテントの入り口を締めるようとすると、中の皆は寂しそうにアーウェンを見つめる。アーウェンはそれに気づき、テントを開ける。
「いい朝日だよ、一緒に見よ」
アーウェンそう言い、そっと閉じる。
昨晩、火を起こした場所に目をやると、ふりふりの服を着たお人形が居る。
(嗚呼…)
アーウェン無償にその背中を抱きしめたくなる。
「……大丈夫だった」
アーウェンは言葉を振り絞って言った。
「え、あ…大丈夫だよ。何も起きなかったし、ほら、火だって」
アメリアはあっけらかんと言う。
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