恋をする前に、世界はどうやら滅ぶらしいです。

無月

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純愛と青春と

「じゃあ、俺もそろそろ帰ります」
「はいはい、お疲れ~
おれは千夏を探しにでも行こうかね…」

あいつ、荷物ほっぽって出て行っちゃったよ
どーせ、どっかの教室に籠城してるだろうし、持って行ってやるかねと、考えながら鞄を手に取ると蒼太に止められた

「あ、いや吉田さんは俺が迎えに行きます。」
「……大丈夫?」
「こうでもしないと、あの人は本気だとわからないでしょ?」

にんまりと笑う蒼太の顔をこいつのファンがみたら陶然とするだろうに、この場にいるのは男のおれで、更にはこの顔を向ける人間はたった一人だけ
罪な男だ事で…
そしてそんな男に、こんな顔をさせた従姉妹が恐ろしい
本人が?と言われたら本人の未来がと答えるけど

「はー、程々にね
じゃないと突拍子もないことしでかすから」
「それはもちろん。中学時代からの付き合うですから」
「それならいいけど…
あれ、聞いてなかったけどお前いつからあいつ好きだったの?」
「一目惚れですけど」
「はわわ、純愛だ…」

そりゃ世界終わる前に気持ちを伝えようと躍起になるわ
中学の時に一目惚れってことは、四年かぁ…思わぬところで青春の甘酸っぱさを感じられた
…うん!頑張れ千夏!お前の未来はお前の行動にかかっている!!あと一か月もないけど!!

「じゃ、俺行くんで」
「うぃーじゃあまた明日」

うん、いいものを聞けた
後で叔父さんが怖いけども、それは今感じられた青春を思えば苦でもない

廊下に出ると、合っているのか合っていないのか解らない吹奏楽部の演奏が聞こえる
この日常もあと一か月もないというのだから驚きだ

校門を抜けて、いつも通りの帰り道を歩く
どっかの家の夕飯の匂いがする、あそこの家は肉じゃがかな?うちの晩御飯、今日はなんだろうななんて考えてながら歩く
終わるってのに、結局おれはなんも変わらないまんまだなと小さく笑いながら家の扉を開けた

「ただいま」
「お帰り」
「え?父さん?」

玄関には出かけようと靴を取り出していた父、林道一が立っていた
いつもこの時間帯は仕事部屋にこもっているのに今から外に出るのかと首をかしげていると父は苦笑いして買い忘れと言ってメモ用紙を見せてきた

「桜子ちゃんがな、カレーにはやっぱり福神漬けが無いとって言ってて」
「あーじゃあ今日はカレーなのか
分かった行ってらっしゃい、桜子さん手伝うことありそうかな?」
「作業が結構長引いちまってな、さっき作り始めたとこなんじゃねぇかな
じゃ、行ってくる」

ガラガラと扉を鳴らして出て行った父さんを見送り、トントンと包丁のなる音がするキッチンへとおれは顔を出した
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