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第一章
ゆかいな仲間たち、パーティーを結成する
しおりを挟む「ウィルの町のことは知っているな。」
うなづく二人。片方はタマゴサンドをほおばる次代魔王、ハーゲンである。
「俺はアイザック。アイザック・スティール。ウィルの町の、北の集落の生まれだ。ウィルの町のほとんどはエルフだ。俺はその町で薬を作って売っていた。問題が起きたのは数日前、いやもう先週のことか。」
ある女性に告白されたが、彼女に対して恋愛感情がないのでアイザックは断り続けてきた。何度伝えても諦めないので、人間はエルフより短命で、置いていかれるのがつらいから嫌だと、種族を理由に断るようにした。
それでも諦められずに思いつめた彼女は、街中でエルフを人間に変える禁術を発動させてしまった。種族の枠を超える禁忌の魔法は女の予想より広範囲に影響し、不運なことに町中のエルフに広がった。多くのエルフが人間となり、変化に体が耐えられず弱体化した。
それだけでも問題この上ないのだが、老人や子どもの中には生命維持が困難になり、昏睡状態に陥った者たちが出たのだ。
彼女は過ちを犯したが、根は悪人ではない。急いでこの禁術を解くべく、ミズチにある王城に向かい、罪を償いながら対処法を探していた。アイザックも薬を作るべく旅に出たのだ。
旅の行先は魔王城。そこに棲むプディリンの素材が必要となるからだ。
「そういうわけで、俺はパーティーを組んで、依頼をこなして旅費を稼ぎながら魔王城に向かいたい。プディリンだけ狩りまくって帰ってくるのが目的だ。俺は薬師としてなら役には立てるが、戦闘は任せることになる。……危険かもしれないが、俺と、魔王城まで一緒にパーティーを組んでくれるか?」
元気よく手を挙げたのはジュアン。
「はいはーい質問!商人に頼むのじゃだめなの?プディリンの素材。」
「もし販売している商人が見つかったとしても難しいと思う。魔王城の魔物の素材となると希少で、魔王城ふもとの町でしか手に入らない。あと、高レベルダンジョンの材料は高額になるから、俺には買えないかも。」
にやにやと、頬にタマゴを付けたまま尋ねてくるのは魔王。
「おまえがついて来るのは足手まといではないか?何故他の優秀な者に依頼しない?」
アイザックはしばらく迷っていたが、結局は告げた。
「……誰よりも、俺が真っ先に治りたいから。」
自分勝手だが、こればかりはどうしようもない。この体では……
食べたいものが、食べられない。
(ああ、おなかがすいた。)
「僕は行くよ!だからそんな顔しないで!」
ぺっしぺっしとジョアンに背を叩かれる。アイザックはただ空腹なだけである。
「それに安全な旅なんてないしね!旅は初めてじゃないよ!」
二人の様子を見ていた魔王も楽しそうに笑い声をあげる。
「ふはははは!おまえたちは面白い。暇つぶしについていってやろう。」
「いいのか。」
「欲深きものは大好きだ。暇だからこうして昼寝していたのだしな。」
「そうか……。じゃあ、まずは。」
アイザックとジュアンが顔を見合わせる。
「「人間になろうか。」」
頭の角はターバンを深めにかぶらせて隠して、服も何とか言い聞かせて冒険者の服に着替えさせる。そして名前だ。そもそも、魔王というのはこの世界ではジョブ名にあたる。そして、そのジョブが誇りであっても、人間の町で堂々と名乗られてはトラブルになる。
「まーお」
「マオウ」
「ま・お!」
「マオ」
「そうそう。フルネームは?」
「マオ・パインリブ。」
「大丈夫そうだな。」
ただでさえ魔族が歩いているととにかく目立つのが人間のコミュニティ。おびえるもの、挑んでくるもの、邪悪だと浄めてくるもの、好奇の眼を向けるもの……。強い魔族ほど隠したりはしないのだが、面倒事を避けたいアイザックとしては隠してほしい。
街中で名乗られても困るので偽名…「マオ」としてパーティーに加えることにする。
「よろしくねーマオ!」
「よろしく頼むぞジュアン。」
苗字はジュアンから借りて、マオは養子の兄弟という設定だ。二人が忘れないといいのだが。
「三人いれば大丈夫かな。パーティーメンバーとして……しばらく、よろしくね。」
「あいあいリーダー!」
「我の助力に感謝しろ、人間。」
「あはは、そうだね。」
マオの言動は偉そうであるものの、威圧されている感覚はない。これが素なのだろう。それにジュアンと一緒にいるのを見ると、どうにも微笑ましく感じてしまうアイザックだった。もし弟がいたらこんな感じなのだろうかなんて、能天気なことを考えてしまう。
「ところでアイザック!もう旅に出る!?」
「いや、」
にやりとほほえむ。
「狩りの時間にしよう。」
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