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第一章
尋ね人、兄の頭上で発見される
しおりを挟む第七宝物庫は物が山積みという文字通りで、その大半が金貨だった。ジュアンはそんな貴重品をがっちゃがっちゃとかきわけ何かを探している。ハロは大きな水晶玉を掲げている。よほど嬉しいのか、そんなハロのまわりにはお花が飛んでいる。しかしアイザックには欲しいものは見つからなかった。強いて言えばお兄さんの角をもらえたら……。やめよう。よだれが止まらなくなる。
「兄ちゃん!俺これにしたよ!」
質のいい二丁拳銃を真っ先に兄に見せるジュアン。
「おーそうかそうか。ところでジュアン。こいつはおまえの知り合いか?」
なぜか土で汚れたマオが、兄ふたりに囲まれていた。
「そうだよ!マオっていうの!仲間!」
「やるねえ。どうやって合流したんだい?マオ。」
「そいつは俺も知りたい。どうやって厳重な警備と強固な結界を抜けて侵入してきたんだ?なあ?」
わくわく好奇心のハロと殺気立ったエイドリアン。温度差で風邪をひきそうだ。
「結界は半球型で、地上にしかなかったからな。地中を掘って進んできたのだ。」
「転移系の魔法は?」
「上級の魔法は、探知されて面倒だろう?」
イーヴォルを守るパインリブ家としては驚きを隠せないようだ。
「なるほどねえ。地中から入れちゃうのかあ。」
「盲点だったな兄貴。」
突如扉が開かれる。
「……うるさい。」
入ってきたのは、白猫を頭にのせ、他にも数匹の猫を引き連れた、眠そうな一本角の悪魔。これまたジュアンにそっくりだが、覇気が全くない。
「エヴァン兄さん!」
四番目の兄らしい。エヴァンに抱き着いたジュアンも、彼の猫たち同様さっそく撫でられる。またアイザックが近づいて行く。その目は黒いままだ。
「な、なにあんた。」
「しーっ。じっとしてなーエヴァン。」
にやにやと興味津々でブライアンは傍観の構えだ。
「失礼いたします。」
あくまで丁寧に、エヴァンの頭に乗っていた白猫を抱き上げると、ただじーっと見つめる。
「……猫、好きなの。」
「好きではありますね。」
そういって荷物から取り出した薬瓶のふたをとる。白猫は進んでその薬を飲んだ。
次の瞬間、猫が爆発し、白い煙が立ち上る。その煙に全員がむせた。酷く喉に来る煙だ。ひとしきり苦しんだ後、目をひらけばそこには白銀の髪の女性が立っていた。
「なんかごめんな?副作用で発生する煙を吸いこむと咽るんだ。」
一人口元を覆い無事だったアイザックは、先に言えとマオに怒鳴られる。おずおずと、白い美女が口を開いた。
「獣化の呪い、解呪していただけたこと、感謝いたします。私は月白の魔女。」
「月白の!」
「依頼されていた、行方不明の女性だね。」
エイドリアンが信じられないようなものを見る目で弟を見る。
「エヴァンおまえまさか…」
「いや、兄さんちがう……俺、森で拾っただけ……。」
月白の魔女いわく、呪術の研究に失敗し猫になってしまった。家に帰っても気づいてもらえず、解呪の呪文は詠唱できない。路頭に迷っていたところをエヴァンに拾われ、養ってもらっていたという。
「旦那さん探してますよ。」
「一般人だけどいい人だよ。」
「猫の貴女に気づかなかったがな。」
「マオはお口閉じてて。」
ふふと魔女は笑う。
「あの人の待つ家に帰るつもりです。何かお礼をしたいのですが……そうですね、ではエヴァン様には幸運のまじないを。」
「………おまえがいてくれて楽しかったよ、シロ。」
にこりと笑う魔女。
「エヴァン様、お世話になりました。お薬を使ってくださったお兄さんは……何がよろしいですか。」
「あなたの髪の毛をいただけますか。」
「うえええ!?」
さすがのジュアンもこの反応である。マオもドン引きだ。
「おまえ、なかなか鬼畜だな。女の髪を切りたがるとは……。」
「いや、マオ、そうじゃなくてね……月白の魔女さん、あなたの魔力の籠った体の一部として髪の毛を少しいただけますか。薬の精製に使うので。」
「人間すらも薬にするの!?」
「呪術ではよく使うよお。」
ハロはのんきなものである。魔女は直ぐに答える。
「かまいませんよ。いっそ散髪屋でばっさりいきましょう!」
「なんでノリノリなのお姉さん!?」
「それならこのブライアン様が腕のいいやつ呼んでやるよ。今夜は泊まってけ!」
「ありがとうございます!」
上がっていく皆のテンション。パインリブはお祝い事や宴会が好きな一族だ。その夜は皆で宴会を楽しむことになった。
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