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第一章
薬師パーティー、勇者ご一行に遭遇
しおりを挟む【魔王城ふもと】
アイザックのパーティーにはいくつか約束ごとがある。町で面倒を起こさない。目立たないように行動する。お昼寝中のマオを起こさない、等々。
そのうちのひとつに「困ったときは代表者であるアイザックが交渉・決定権・責任を持つ」がある。穏やかに場を収めたい人間が、アイザックのみだったというのが大きいが。
「魔王城のふもとの町には無かったね、プディリンの素材。」
魔王城に最も近い町を一行は出てきたところだ。ここの店にないのならば、やはり自分で入手するしかない。イヴァリースを出発してから人間の姿のままのハロが、最後尾をゆっくり歩くマオを振り返る。
「マオは心当たり無いのー?プディリンの居場所。」
「城内の上層部には出ないな。同じ魔王城でも、恐らくは下水施設か地下か。」
魔王城で暮らしていたマオと、魔物に詳しいハロは頼りになる。
「あ、それなら下水かもよ。水属性だから。」
「むぅ。気は進まぬが案内しよう。」
その時だ。
「あ。」「ん?」「おや。」「む。」
全員が気が付いた。巨大な力を隠す気の無いパーティーがこちらに向かっていることに。
「どうするアイザック。奇襲するか?」
「このまま待つ?隠れる?」
好戦的なマオとジュアン。ハロはアイザックの意向を待つ。
「いや、このまま魔王城の下水まで案内して。」
「いいのか。」
「でもアイザックこのままだと追いつかれるよ。向こうは馬だ。」
「ありふれた魔物討伐パーティーだって言い張るよ。みんなは静かにね。」
「ふむ。まるっきり嘘ではないわけだ。」
やがてハロの読み通り、馬に乗った四人組がやってくる。
「こんばんは!こんなところにいたら危ないですよ!もうじき夜になります。」
声を聞いてから振りかえれば、一目で良いものだと分かる輝く装備を身に着けた好青年。聖職者と思しき服装の男。杖ととんがり帽子を装備した魔法使いの女性。大剣を背負う戦士のような大男が目に入った。自分たちとはどこまでも対照的なジョブだ。そう、見るからに、
「勇者様、で、いらっしゃいますか。」
「ええ。あなたは?」
「薬師のアイザックです。薬の材料となる魔物を狩りに来ています。」
「薬に魔物を!汚らわしい。」
聖職者が明らかな嫌悪をあらわす。これが最も一般的な反応なので、まともな人がいることにアイザックはむしろ安堵する。
「まさか魔王の手のものではないでしょうね!」
「落ち着いてクリス。呪術では珍しくないのよ。」
魔法使いが諫める。
すました顔のアイザックは、内心冷や汗ダラダラである。マオが勇者一行をにらみつけているのも、さっそく聖職者に魔王の関係者と警戒されているのも大変よろしくない。面倒事は御免だし、魔王VS勇者のガチバトルをここで始められたら、非戦闘員はたまったものではない。
「ご忠告感謝します。すぐに安全なキャンプ地を探しますね。」
もちろんその場所から、両パーティーともにキャンプ地を探すのだ。安全で、近くにある場所にキャンプ地がかぶるのも道理である。勇者ですらここで休むのに、一般的なパーティーを装いたいアイザックたちが遠くに移動するのも不自然だ。
「もし夜魔物が出ても、僕らが守りますからねっ。」
「ア…アリガトウゴザイマス。」
勇者オースティンの笑顔がまぶしい。さすが勇者、行きずりの俺たちにもこんなに親切。
一方、聖職者のクリストファー、通称クリスの視線は険しい。物凄く警戒されている。助けを求めてほかの勇者パーティーの2人を確認するも、魔法使いのアリシアさんはハロと料理に夢中。戦士のカルロスさんはぐらぐらと舟をこいで今にも眠りそうだ。マオとジュアンが幼く見えるからか、ハロと俺が保護者に見えているのだろう。完全にこちらのパーティーを保護対象に見ているのが伝わってくる。
マオの形相を見ても、
「大丈夫だよ~、別にお兄ちゃんが取られるわけじゃないからね~。」
と、勇者はにこにこしている。子ども扱いがさらにマオの眉間のしわを濃くした。
本当に気が付いていないのか。はたまた、魔王とはいえ、この程度なら簡単に倒せるという余裕の表れなのか。ドキドキするアイザックの思いも知らず、ハロがアリシアさんとすっかり仲良くなったため、夕飯もご一緒することになってしまったのだった。
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