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第二章
愛が故の思惑
しおりを挟む「…………ここ、どこ。」
「魔王城の我の部屋だ。」
「うわ、マジか…………っふ…………!!」
ジュアンとは違う、舌を押し込む、深い口づけ。でも、色気も雰囲気もなく、ただ唾液を流し込もうとする動きだった。息もできない上に、不自然な姿勢でのしかかられているため苦しく、ドンドンとマオの背を叩く。
「な、なに、ごめんね……?」
「このたわけ!」
「あ、うん、口以外無事とか、信じてもらえないよね。」
「見てわかるわ馬鹿!おまえ!!人間の姿で、今にも死にそうではないか!!!何日もあんな状況で、おまえ……騙して唾液奪うくらいしろ馬鹿者が!!!」
「ええ……?」
栄養面で不足はないはずだが、魔力切れが続いて頭がよく回っていないらしい。そういえば、人間のまま、何日耐えたんだっけ?
でも、必死に貞操を守った恋人をもう少し労ってほしいとも思うアイザック。
「角、は、さすがに今は抜けぬし、唾液では追いつかぬな。体液……アイザック、血は飲めるか?腕や足のが良いか?」
愛されてるなあと思う。魔王様なのに、腕や足、くれちゃうんだ。魅力的だけど、それはダメだ。
「いいよ、マオ。ちゅーして。」
「だが、それでは、」
「いいから、魔力、ちょーだい。」
他の方法も少し頭をよぎったが、今は、これでいい。
「ごめんね、ありがと、マオ。」
「五月蠅い。さっさと食え。」
捨てられても、不快感あらわに詰られても仕方ないのに、自分の心配をしてくれる。アイザックは久しぶりに、薬による強制的な眠りではなく、幸福感に包まれながら、安心して眠りに落ちたのだった。
「バタバタしてたけど、本当にこのままジュアン連れて旅をしても、マオは嫌じゃない?あれで許したの?」
「殴り足りぬに決まっておろうが!!死の淵ギリギリまで痛めつけてやりたかった!!!…………おまえがあんなにも弱り果てて死にそうだから優先したのだぞ!!この!!おおうつけが!!」
「うん、ありがと、ありがとうね。あの、ちょっと、落ち着いて声を小さく、」
「できるかばーーーーか!!!」
「うん……そうだね…………。」
ふんっ、とアイザックに背を向けるマオ。
「ジュアン。あれは、不安定だ。魔族の子供は、心の成長が身体の成長に影響する。あれはまだ、あの見た目相応の精神なのだ。」
「……そう、なんだね。」
180歳のマオも、俺と同じくらいの精神年齢ということだろうか。
「あのような姿の者を外に出すなど、あの家の者は信じられぬ。だが、仕方がない。あの家は我が配下ではなく、人間社会に帰属している。」
「うん。」
「あれはまた、不安定になり、問題を起こすかもしれん。でもおまえは、共に旅をしたいのだろう?我は、それを否定するほど狭量ではない。抱擁や頭を撫でるのも、してやるといい。あれにはまだ、そういうことが必要だ。」
「分かった。」
「だが、魔力補給だけは、非常時をのぞき、我で行え。」
それで様子を見てだめなら……そう、小声で言ったのをアイザックは聞き逃さなかった。
それについて尋ねようとしたところで、
「だがいいか!非常時は!!相手を殺してでも自分を優先せよ!!魔王命令だ!!」
「え、あー、うん、その……」
「魔王命令だ!是以外認めぬ!!!!」
「あー……かしこまりました、魔王様。」
「ふんっ!」
二日後。
町の外で合流したジュアンを、マオがもう一発殴りつけて、一行は旅を再開した。
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