呪われ薬師、最強の仲間たちと旅に出る~美味しそうだと思っているのは秘密です~

なーの( *¯ ꒳¯*)ナー

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第二章

幻想の産物

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 正しいお守りの作り方はちょっと違うのよねーと、胸の間からハロ、アイザックとおそろいのタグを取り出す。

「これが貴方たちをみつけた方法。」

「知ってたよ。」

「あら。」

「ハロ?」

 ハロにしては珍しく、表情無く語り出す。

「僕一人の時は、もう一度殺される可能性を考えて作れなかった。だがアイザックが現れた。僕とアイザックの二人が、いや、二つの発信機が一緒に彷徨っうろついていたら、お師匠様がどう動くか知りたかったのさ。会えるかもしれない、殺されるかもしれない。でも、」

 にたりと、ハロは笑った。

「実験は、成功だ。」

 殺意は感じないしね、とハロ。あらあら、と魔女はいたずらをした幼子をみたかのように、頬に手を当て苦笑する。

「私、今とても機嫌がいいの。だから今日はこれでバイバイしてあげる。しばらくはあなたたちに再び会うつもりはないし、あなたたちは私が嫌いみたいだから避けるでしょう?アイザック、あなた、何か知りたいことは?」

 ひとつだけ答えてあげる、と妖艶に笑う魔女。

 もちろん、知りたいことはたくさんある。何故自分を選んだのかとか、蟲毒についてとか、故郷の村についてとか、今後また関わる気なのかとか。

 だが、まずは、

「おまえの、名前は?」

「…………。」

「アイザック、魔女や呪術師はあまり本名を名乗らないよ。生死に関わるから。」

「そ、そうなのか。」

「ふふ、そうね。あの頃はまだ小さかったものね、覚えてないのも無理ないわ。」

 愉快そうにふふふと笑う。

「ファンタズマ、そう呼んでちょうだい?」

 ママでも母さんでもいいのよ?

 嬉しそうに彼女がそう言うと、周囲の光の壁が音をたて崩れはじめた。

「ごきげんよう、私の可愛い子どもたち。良い旅を。」

 そう言うと彼女は姿を消した。転移魔法テレポートか、そもそも、もとからその場所にいなかったのか。

「アイザック、捕まって!このままだと暴風で吹き飛ぶよ。」

 二人は魔女のいた噴水に捕まり、目を閉じた。





「起きぬかっ!!」

 激しく頭を打って意識が戻る。アイザックはマオに肩を掴まれていた。

「すげー!石頭だ!」

「ジュアン、あんまりしゃべるんじゃないよ。」

 アイザックはマオの頭突きで目を覚ました。
 そこは宿屋のソファー。それも医務室のようだ。後ろで医師であろう人が目を丸くしていた。

「アイザック、君は暴風壁の崩壊で結局吹っ飛んだ。でも大事には至らず、二人とも合流できたよ。事情説明も僕からしてある。」

「ありがとう、……えーと。」

「今まで通り、ハロで。名前ももう呼んでいいよ。意味なかったしね。」

「そっか。……タグは?」

「嫌なら外してくれ。」

 しばし悩んだアイザックは言う。

「これは壊してくれ。でも、またハロの作ったアクセサリーが欲しいかな。」

「ここでいちゃつくな、うつけどもが。ハロ、またファンタズマとやらが現れた時の対策はあるのか。」

「ないけど……大丈夫じゃないかなあ。」

「根拠は?」

「バカ親って感じだったから最悪の展開にはならなさそうだ。」

 なんだそれは、と言われるハロだったが、アイザックにもその表現は分かるような気がした。災厄の魔女、ファンタズマは無害だろうと。同時に、あの人を止めるには、自分たちの力では無理だとも思う。

 医務室を出て宿の部屋に向かう四人。

「部屋割り、俺とハロでもいいかな。」

「かまわん。」

「いーよー。」

「ありがとね、二人とも。」


 部屋に入るなりアイザックはハロの背に抱き着いた。

「おや、積極的ぃ。」

「…………。」

「おーい、アイザック?」

 どうしたのとべりべりアイザックをはがす。ふらふらとベッドに倒れこみ布団をかぶるアイザック。

「………っとに。」

「うん。」

「ほんっとに怖かった!!」

 おーよしよしと、布団越しに頭を撫でるハロ。確かに自分はお師匠様の奇行危言には慣れていたが、アイザックはほぼ初めましてだったのだなあと思い至る。

「マオもジュアンもハロも充分頭おかしいけど、本物の気違いは…………、それもあんなに強い上に気が触れてるとか、ほんと怖かった……!」

 おまえもおまえでなあ!と続く説教を聞き流しながら、二つのドッグタグを破壊する。

「まさかお師匠様も、僕らが巡り合って一緒に過ごすとは、想定してなかったんだろうね。あの人も、予想外の出来事が大好きだから。」

「ファンタズマの理屈で言うと俺ら兄弟……兄弟弟子的なものなのかな。」

「ふふふ可愛い弟よ。」

「はいはい頼れるお兄ちゃんですこと。」

「……。」

「なに。」

「お兄ちゃんってもっかい言って。」

「変態。」


 災厄の魔女ファンタズマとは、もう二度と会いたくない。

 この時は、そう思っていたのに。



 第二章 完
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