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ヒミツの放課後
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ひともんちゃくがあった日から数日後。
わたしと国竹センパイは、毎朝いっしょに登校するようになっていた。
えへへ。
こんなにしあわせでいいのかな。
好きなひとといっしょに登校だなんて、あこがれのシチュエーションだもんね。
うれしくてたまらなかったけれど、本当のことを言っちゃうと、背中でまわりからの視線を感じてはいるんだ。
ジロジロ、好奇心の目で見られているのがわかる。
敵意もビシバシ感じちゃうよ。
美野里ちゃんと小林くんに相談しても、「気にしなくていいんじゃない?」ってニヤニヤされちゃって、ちっとも真剣に受けとってくれないんだ。
うーん、困ったなあ。
今朝もまわりの視線を気にしながら、センパイに話しかける。
「こ、コンピューター部のひとたちとの話しあい、あれから、どうなったんですか……?」
「PC購入のこと?」
「あ、はい、そうです。わたし、気になっちゃって……」
「金額が金額だからな。生徒会と連名で、校長や理事長に嘆願書を提出することにしたんだ。今その準備でいそがしくしてる」
センパイは得意そうに笑みを浮かべた。
「あと、SNSの監視もやめることになったよ。やっぱり生徒が生徒を……って、よくないからな。かわりに今後は、インターネット・リテラシーの活動に力をいれる方針だ。そっちのほうが、生徒会としても大歓迎だよ」
そっかあ、何もかもいい方向になってるんだ。
よかった。
あのとき、勇気をだして本当によかった……。
「センパイ、わたしにもまた言ってくださいね。お手伝いできることがあったら」
「ありがとう、そうさせてもらうよ」
センパイにそう言ってもらえたので、わたしは安心した。
けど、もうひとつ、心配なことがあるんだ。
だって、わたしたち今、手をつないでいるから……!
いっしょに登校するだけでも大変なことなのに、さっきからずっと手をにぎられていて。
うひゃあ、恥ずかしいよう……!
もうまもなく校舎が見えてくる。
まわりに生徒の姿もチラホラ増えてきた。
ど、どうしよう!
ひょっとしてセンパイ、気づいてないのかな。
このままではいけないから、
「あの、その、そろそろ手を離さないと……!」
わたしはセンパイの手から、自分の手を引き抜こうとした。
けれど。
ギュッ。
かえって、さらにいちだんと強くにぎられてしまったんだ。
「このままでいい」
国竹センパイはボソッとひとこと。
どうしてなのか、口もとをキリッと引きしめる。
ドキッ。
うれしいけれど、ときめく気持ちとうらはらに、わたしはスッカリ気が動転してしまった。
「だだだ、だって、わたしたちがつきあっているのは、ヒミツなんじゃ――」
すると、国竹センパイは口もとに皮肉な笑みをのせた。
「とっくにバレてるだろ。それにヒミツにしようと言ったのは、おれが生徒会長だってことが原因で、もも花にメーワクをかけるようなことがあったらいけないって思ったからなんだ。けど、今回の件でヒミツにするのはまちがってるってよくわかった」
「え……? 今回の件って?」
ますます意味がわからない。
「あの、それ、どういうことですか? もっと具体的に……」
「べつに。もも花は知らなくていい」
センパイの顔がますます険しくなる。
どうして?
何に怒っているの……?
首をかしげていると。
「口下手な友にかわって説明しよう!」
とつぜん、うしろから、だれかがスチャッとあらわれる。
それは、やっぱり坂木副会長だった。
「おい、やめろ! ハジメ!」
センパイはぎょっとして止めたけれど。
チッチッチッ。
坂木副会長は一本指を立てて横にふった。
「あのなあ、総司。おまえは生徒会長としては優秀かもしれないけど、カレシとしてはダメダメだぞっ。自分自身のことなんだ。もも花ちゃんだって知っておかなくちゃならないだろ? どうせ、わかっちゃうことだし」
なんて、お説教されたとたん。
センパイはふてくされたようにプイッと横を向いた。
「…………勝手にしろ」
「じゃ、勝手にする」
坂木副会長はそう言うと、くるっとわたしにからだを向けた。
「じつはね、懐が深いもも花ちゃんと、器の小っさい総司に感銘を受けたコンピューター部の連中が、ある組織を結成したんだよね。総司は、それに対して不満を持っているのだよ」
「新しい組織……? まさか……コンピューター部のひとたち、またセンパイを困らせているの?」
わたしは国竹センパイを見あげた。
でも、
「おれの口からは言いたくない」
って、へそを曲げられちゃった!
「そんなあ! 話してくれないと、わからないじゃないですか~!」
困り果てたそのとき、
「ほら、あれを見てみなよ」
坂木副会長が前方を指さした。
見ると、校門の前にうわさのコンピューター部のひとたちがいた。
こっちに向かって、大きく手をふっている。
彼らが持っている横断幕には、次の文字がデカデカと書かれてあった。
『城山もも花ちゃんを見守り隊』
はあ?
ポカンとしたわたし。
「える、おー、ぶいっ、いー! もも花ちゃーん!!」
校門前は、まるでコンサート会場並の大騒ぎだ。
「な、何あれ……?」
ボーゼンとしていたら。
坂木副会長はおもしろそうにニマニマした。
「もも花ちゃんのファンクラブだよ」
「えええー!」
うそー!
聞いてないよおおお。
思わず顔をひきつらせる。
坂木副会長は、国竹センパイの肩に手を置いた。
「あんなものできたら、カレシとしてはハラハラするよなあ。もも花ちゃんはおれのものってアピールしたくなるよなあ、総司?」
「だまれ」
国竹センパイ、すごーく怒っているみたい。坂木副会長にからかわれて、ますます不機嫌そう。
けど、わたしはうれしかった。
怒っているのは、ヤキモチをやいてくれたってことでしょ?
「だいじょうです。わたし、センパイひとすじですから心配しないでください」
すると、国竹センパイは、やっと、こっちを見てくれた。
そして、わたしの耳もとにくちびるを近づけてささやく。
「だったら、証明してもらうから覚悟しろよ。放課後、待ってるから」
「えっ!」
ヒミツの交際はみんなにバレてしまったけれど。
ふたりきりのヒミツの放課後は、まだ終わらない――。
わたしと国竹センパイは、毎朝いっしょに登校するようになっていた。
えへへ。
こんなにしあわせでいいのかな。
好きなひとといっしょに登校だなんて、あこがれのシチュエーションだもんね。
うれしくてたまらなかったけれど、本当のことを言っちゃうと、背中でまわりからの視線を感じてはいるんだ。
ジロジロ、好奇心の目で見られているのがわかる。
敵意もビシバシ感じちゃうよ。
美野里ちゃんと小林くんに相談しても、「気にしなくていいんじゃない?」ってニヤニヤされちゃって、ちっとも真剣に受けとってくれないんだ。
うーん、困ったなあ。
今朝もまわりの視線を気にしながら、センパイに話しかける。
「こ、コンピューター部のひとたちとの話しあい、あれから、どうなったんですか……?」
「PC購入のこと?」
「あ、はい、そうです。わたし、気になっちゃって……」
「金額が金額だからな。生徒会と連名で、校長や理事長に嘆願書を提出することにしたんだ。今その準備でいそがしくしてる」
センパイは得意そうに笑みを浮かべた。
「あと、SNSの監視もやめることになったよ。やっぱり生徒が生徒を……って、よくないからな。かわりに今後は、インターネット・リテラシーの活動に力をいれる方針だ。そっちのほうが、生徒会としても大歓迎だよ」
そっかあ、何もかもいい方向になってるんだ。
よかった。
あのとき、勇気をだして本当によかった……。
「センパイ、わたしにもまた言ってくださいね。お手伝いできることがあったら」
「ありがとう、そうさせてもらうよ」
センパイにそう言ってもらえたので、わたしは安心した。
けど、もうひとつ、心配なことがあるんだ。
だって、わたしたち今、手をつないでいるから……!
いっしょに登校するだけでも大変なことなのに、さっきからずっと手をにぎられていて。
うひゃあ、恥ずかしいよう……!
もうまもなく校舎が見えてくる。
まわりに生徒の姿もチラホラ増えてきた。
ど、どうしよう!
ひょっとしてセンパイ、気づいてないのかな。
このままではいけないから、
「あの、その、そろそろ手を離さないと……!」
わたしはセンパイの手から、自分の手を引き抜こうとした。
けれど。
ギュッ。
かえって、さらにいちだんと強くにぎられてしまったんだ。
「このままでいい」
国竹センパイはボソッとひとこと。
どうしてなのか、口もとをキリッと引きしめる。
ドキッ。
うれしいけれど、ときめく気持ちとうらはらに、わたしはスッカリ気が動転してしまった。
「だだだ、だって、わたしたちがつきあっているのは、ヒミツなんじゃ――」
すると、国竹センパイは口もとに皮肉な笑みをのせた。
「とっくにバレてるだろ。それにヒミツにしようと言ったのは、おれが生徒会長だってことが原因で、もも花にメーワクをかけるようなことがあったらいけないって思ったからなんだ。けど、今回の件でヒミツにするのはまちがってるってよくわかった」
「え……? 今回の件って?」
ますます意味がわからない。
「あの、それ、どういうことですか? もっと具体的に……」
「べつに。もも花は知らなくていい」
センパイの顔がますます険しくなる。
どうして?
何に怒っているの……?
首をかしげていると。
「口下手な友にかわって説明しよう!」
とつぜん、うしろから、だれかがスチャッとあらわれる。
それは、やっぱり坂木副会長だった。
「おい、やめろ! ハジメ!」
センパイはぎょっとして止めたけれど。
チッチッチッ。
坂木副会長は一本指を立てて横にふった。
「あのなあ、総司。おまえは生徒会長としては優秀かもしれないけど、カレシとしてはダメダメだぞっ。自分自身のことなんだ。もも花ちゃんだって知っておかなくちゃならないだろ? どうせ、わかっちゃうことだし」
なんて、お説教されたとたん。
センパイはふてくされたようにプイッと横を向いた。
「…………勝手にしろ」
「じゃ、勝手にする」
坂木副会長はそう言うと、くるっとわたしにからだを向けた。
「じつはね、懐が深いもも花ちゃんと、器の小っさい総司に感銘を受けたコンピューター部の連中が、ある組織を結成したんだよね。総司は、それに対して不満を持っているのだよ」
「新しい組織……? まさか……コンピューター部のひとたち、またセンパイを困らせているの?」
わたしは国竹センパイを見あげた。
でも、
「おれの口からは言いたくない」
って、へそを曲げられちゃった!
「そんなあ! 話してくれないと、わからないじゃないですか~!」
困り果てたそのとき、
「ほら、あれを見てみなよ」
坂木副会長が前方を指さした。
見ると、校門の前にうわさのコンピューター部のひとたちがいた。
こっちに向かって、大きく手をふっている。
彼らが持っている横断幕には、次の文字がデカデカと書かれてあった。
『城山もも花ちゃんを見守り隊』
はあ?
ポカンとしたわたし。
「える、おー、ぶいっ、いー! もも花ちゃーん!!」
校門前は、まるでコンサート会場並の大騒ぎだ。
「な、何あれ……?」
ボーゼンとしていたら。
坂木副会長はおもしろそうにニマニマした。
「もも花ちゃんのファンクラブだよ」
「えええー!」
うそー!
聞いてないよおおお。
思わず顔をひきつらせる。
坂木副会長は、国竹センパイの肩に手を置いた。
「あんなものできたら、カレシとしてはハラハラするよなあ。もも花ちゃんはおれのものってアピールしたくなるよなあ、総司?」
「だまれ」
国竹センパイ、すごーく怒っているみたい。坂木副会長にからかわれて、ますます不機嫌そう。
けど、わたしはうれしかった。
怒っているのは、ヤキモチをやいてくれたってことでしょ?
「だいじょうです。わたし、センパイひとすじですから心配しないでください」
すると、国竹センパイは、やっと、こっちを見てくれた。
そして、わたしの耳もとにくちびるを近づけてささやく。
「だったら、証明してもらうから覚悟しろよ。放課後、待ってるから」
「えっ!」
ヒミツの交際はみんなにバレてしまったけれど。
ふたりきりのヒミツの放課後は、まだ終わらない――。
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