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本当は、どんなひと?
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パチン、パチン。
ホチキスで冊子をつくる作業中。
ほかのみんなは先に終わらせて、「おつかれー」って次から次へと帰っていく。
気づけば、会議室に残っているのは、わたしと会長と副会長の三人だけ……。
ちょっと、ようすをうかがってみると。
坂木副会長が退屈そうに、ふわあ、とあくびしている。
国竹会長はというと、メガネのレンズを光らせながら、なぜかこっちを見ていた。
わたしは、その視線を受けて、背筋が縮みあがった。
ひいいっ。
会長、怒ってる……!
はやく、はやくしなくちゃ!
わたしは姿勢をただし、作業の続きに取り組んだ。
けれども、焦るばかりでいっこうに進まない。
わたしに割り当てられた分だけ、未処理のまま、まだまだ残っている。
挽回するどころか、墓穴を掘っている状態だ。おまけに、
「いたっ!」
紙で親指の先を切ってしまった。
すると、会長が急に立って、わたしのところにスタスタとやってきた。
「そんなに難しいことなら、ほかのだれかに替わってもらうか?」
また、メガネのレンズがキラリーンと光る。
「あ、あっ、すっ、すみません!」
申し訳なさすぎて、わたしはガバッと頭をさげた。
「自分でもわかっているんです、鈍くさいって」
「鈍くさい? じゃ、ノルマをこなせるんだな?」
「だいじょうぶです。ちゃんと、自分の分はやっていきます。どれだけ時間がかかっても……」
はっ!
わーん! わたしってば~!
会長はわたしの鈍くささが気に入らないのに、それに輪をかけてひどい発言を自らしてしまった!
とても会長の顔を見られなくて、そのままうつむいていたら。
「おーい、総司! こーんなつり目で文句を言われたら、もも花ちゃんが怖がるじゃん」
坂木副会長がわたしの肩を持ってくれた。
そして、つづけておどろくことを口にしたんだ。
「怖がらなくていーよ。コイツはね、心配しているだけなんだからさ」
――え。
おどろいてパッと顔をあげたら、国竹会長と目があった。
その瞬間、会長の顔は、みるみる真っ赤になった。
「おっ、おまえ……!」
会長は、副会長に向かって声をあらげた。
でも、反対に、
「照れるなよ。なあ、そーだろ? 本当のこと言えよ、ちゃんと」
副会長にからかわれて。
会長はワナワナとふるえたあと、
「ああ、そうだよ!」
投げやりのように答えて、自分の席へと戻っていった。
なんだったんだろう。
思わず目をパチクリさせていると。
「ゴメンねー、あいつ口ベタでさ。通訳がいるんだよねー」
坂木副会長がニヤニヤしながら小声で言った。
「はあ」
「じつはね」
と、急にささやき声が低くなる。
「あいつも、むかし疲労骨折で大変だったときがあったから、気になっただけだと思うよ」
「疲労骨折……」
病気やケガの知識にうといわたしでも、どこかで聞いたことがある言葉だった。
「あいつ、小1のころからサッカーをやっててね、練習のしすぎで足を痛めたこともあったんだ」
やっと、ことの次第がのみこめて、「あっ」と気づいた。
会長は、わたしがひざを痛めているんじゃないかって思ったんだ!
鬼ごっこしていたとき目の前で転んじゃったから、委員会にも遅れてきたから、心配してくれていただけなんだ。
それなのに、わたしときたら……。
ガタッと、イスをうしろに倒すような勢いで立ちあがる。
「心配かけて、すみませんでした!」
けれども、会長はこっちを見てくれなかった。
自分の作業に没頭しているような感じで、ノートパソコンとにらめっこしている。
そのまま、ボソッとひと言。
「いいから仕事のつづき」
「あ、はい……」
わたしは再び、イスに腰を下ろした。
でも気になってしかたなかった。
国竹会長って、どんなひとなんだろう。
結局わたしの作業が終わるまで、仕事をしながらずっといてくれたし(坂木副会長は居眠りしていた)。
「失礼します」って帰るときも、呼びとめられて、
「あ、いや、その、さっきは、怖がらせてわるかった……!」
きまりわるそうにあやまってきたし、そのときも顔がほんのり赤かった。
てっきり怖いひとって思ってしまったけれど、じつはちがうみたい。
本当はやさしいひと、だったりするのかな……?
ホチキスで冊子をつくる作業中。
ほかのみんなは先に終わらせて、「おつかれー」って次から次へと帰っていく。
気づけば、会議室に残っているのは、わたしと会長と副会長の三人だけ……。
ちょっと、ようすをうかがってみると。
坂木副会長が退屈そうに、ふわあ、とあくびしている。
国竹会長はというと、メガネのレンズを光らせながら、なぜかこっちを見ていた。
わたしは、その視線を受けて、背筋が縮みあがった。
ひいいっ。
会長、怒ってる……!
はやく、はやくしなくちゃ!
わたしは姿勢をただし、作業の続きに取り組んだ。
けれども、焦るばかりでいっこうに進まない。
わたしに割り当てられた分だけ、未処理のまま、まだまだ残っている。
挽回するどころか、墓穴を掘っている状態だ。おまけに、
「いたっ!」
紙で親指の先を切ってしまった。
すると、会長が急に立って、わたしのところにスタスタとやってきた。
「そんなに難しいことなら、ほかのだれかに替わってもらうか?」
また、メガネのレンズがキラリーンと光る。
「あ、あっ、すっ、すみません!」
申し訳なさすぎて、わたしはガバッと頭をさげた。
「自分でもわかっているんです、鈍くさいって」
「鈍くさい? じゃ、ノルマをこなせるんだな?」
「だいじょうぶです。ちゃんと、自分の分はやっていきます。どれだけ時間がかかっても……」
はっ!
わーん! わたしってば~!
会長はわたしの鈍くささが気に入らないのに、それに輪をかけてひどい発言を自らしてしまった!
とても会長の顔を見られなくて、そのままうつむいていたら。
「おーい、総司! こーんなつり目で文句を言われたら、もも花ちゃんが怖がるじゃん」
坂木副会長がわたしの肩を持ってくれた。
そして、つづけておどろくことを口にしたんだ。
「怖がらなくていーよ。コイツはね、心配しているだけなんだからさ」
――え。
おどろいてパッと顔をあげたら、国竹会長と目があった。
その瞬間、会長の顔は、みるみる真っ赤になった。
「おっ、おまえ……!」
会長は、副会長に向かって声をあらげた。
でも、反対に、
「照れるなよ。なあ、そーだろ? 本当のこと言えよ、ちゃんと」
副会長にからかわれて。
会長はワナワナとふるえたあと、
「ああ、そうだよ!」
投げやりのように答えて、自分の席へと戻っていった。
なんだったんだろう。
思わず目をパチクリさせていると。
「ゴメンねー、あいつ口ベタでさ。通訳がいるんだよねー」
坂木副会長がニヤニヤしながら小声で言った。
「はあ」
「じつはね」
と、急にささやき声が低くなる。
「あいつも、むかし疲労骨折で大変だったときがあったから、気になっただけだと思うよ」
「疲労骨折……」
病気やケガの知識にうといわたしでも、どこかで聞いたことがある言葉だった。
「あいつ、小1のころからサッカーをやっててね、練習のしすぎで足を痛めたこともあったんだ」
やっと、ことの次第がのみこめて、「あっ」と気づいた。
会長は、わたしがひざを痛めているんじゃないかって思ったんだ!
鬼ごっこしていたとき目の前で転んじゃったから、委員会にも遅れてきたから、心配してくれていただけなんだ。
それなのに、わたしときたら……。
ガタッと、イスをうしろに倒すような勢いで立ちあがる。
「心配かけて、すみませんでした!」
けれども、会長はこっちを見てくれなかった。
自分の作業に没頭しているような感じで、ノートパソコンとにらめっこしている。
そのまま、ボソッとひと言。
「いいから仕事のつづき」
「あ、はい……」
わたしは再び、イスに腰を下ろした。
でも気になってしかたなかった。
国竹会長って、どんなひとなんだろう。
結局わたしの作業が終わるまで、仕事をしながらずっといてくれたし(坂木副会長は居眠りしていた)。
「失礼します」って帰るときも、呼びとめられて、
「あ、いや、その、さっきは、怖がらせてわるかった……!」
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