彼方の大地で綴る【四章まで完結済み】

しいたけ農場

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第四章 空と大地の交差

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 煉瓦造りの倉庫の中。船に乗せるための貨物や武器が所狭しと置かれた建物の中央にはテーブルが置かれ、今は臨時の会議室となっている。

 そこで「ふわぁぁぁー!」と歓声を上げたのはクラウディアだった。彼女の視線の先にはテーブルと、その上に置かれた一枚の図面。


「こ、これっ……。これすごっ! 凄い! これできるの!? よっちゃん、これ作れるの!?」

「材料さえあればな」

「あるよ! 材料ある! ラニーニャ、ここに書かれてあるもの、持って来て、早く!」

「あのー。作戦会議じゃなかったんですか?」


 喜びの叫びを上げるクラウディアに、ラニーニャはあくまでも冷静に対応する。

 彼女をここまで歓喜させたのは、銃の図面だった。海上で使える武器の話から、クラウディアが今の特注のマスケット銃に満足していないこと、自作の図面があるという話に転がり、ヨハンがそこに改良案を書き加えたことが全ての始まりだった。


「武器も立派な作戦だよ! そもそも作戦って言っても、突っ込むしかないじゃん」

「いや、それはわたし達のいつものことでしょう? 今日は名高きイシュトナルの頭脳様がいるのですから」

「いや、残念ながら俺も作戦を考えるのは得意ではないからな。できる限り装備を整えて、相手を手早く制圧するのが一番だ」


 先日、その辺りの関係でへまをやらかしたばかりだとは、流石に黙っておいたが。

 それに加えて海上での戦いとなれば、ヨハンに理は全くない。


「……あ、そうですか。それじゃあ指定されたものを持って来ますけど、全部はないですよ」

「どれならすぐに用意できる?」


 ラニーニャが書きだされた材料から、この倉庫にあるもの、街で買えるものを選び出す。

 足りない物を把握したヨハンは、隅っこの方で大人しくしているアーデルハイトを呼び出した。


「アデル。ちょっといいか」

「……どうしたの? カナタ一人連れ戻せない役立たずに、何か用事?」


 どうやら先の失敗に責任を感じているようで、クラウディアにメッセージを伝えに来た後すぐに自分にできることはないかとウロウロしていたのだが力仕事はできず、海にもそれほど詳しくはないのでやることがなくなって、拗ねていたようだった。


「そんなに自分を責めるな。海賊船と早期に接触できたのも、カナタの無事を確認できたのもお前だったからだろう。他の奴はそうはいかん」

「……サアヤとかじゃ?」

「……まぁ、そうだな」


 当人の能力にしてもギフトにしてもサアヤは有能だが、こういう場面で役に立つ人材ではない。適材適所と言うやつだ。


「ふふ」


 小さな笑みを零すアーデルハイト。

 この時、細かいことを気にしないクラウディアはともかくとして、ラニーニャの目には全力で振り回される犬の尻尾が見えていたのだと言う。


「で、すまないがお前にやってもらうことがある」

「うん。何でも言って」

「ここに書いてある物を、俺の工房から取って来てほしい。それからエレオノーラ様に報告の手紙を書くから、それも渡して来てくれ」

「うんうん。……え?」

「なんだ?」

「……わたしの仕事って……」

「陸路を使えば三日以上かかるが、お前が全力で飛べば一日で往復できるだろう」

「いや、それはそうだけど。ねぇ、ひょっとしてわたしを選んでくれたのって」


 ここに彼女がいるということが答えではあるが、サアヤとアーデルハイトの二択にヨハンが出した答えは、当然アーデルハイトだった。


「いざと言うときの連絡役には申し分ないからな。それに、俺がイシュトナルを離れるなら、サアヤの仕事は尚更増えることになるだろうし」

「あ、そう。うん、もうそれ以上は言わなくていいわ」

「……ん、そうか? ちょっと待ってくれ、必要なものがまだ出るか……つっ!」

「あっちで海でも見てるから、リストができたら届けて」


 ヨハンの脛に蹴りを入れて、アーデルハイトは倉庫を出ていった。


「あらら。怒らせてしまったようですね」

「何故だ?」

「さあ。ラニーニャさんには何とも」


 明らかに知っている様子のラニーニャだが、問い詰めたところで答えてくれる様子でもなさそうだ。


「それでですね、よっちゃんさん。本当にお作戦なしで突撃するつもりですか?」

「いや、流石にそれはな。だが、舞台が海とあってはそれほど有効な戦術も取れない。だから」


 ヨハンの目が、キャラベル船に向けられる。

 風を受けて進む帆船の速度は、決して早いものではない。そしてそれは、相手の海賊船にも言えること。


「古風な船ですよね。元の世界にいたころは見たこともありませんでしたけど」

「だろうな。俺達の世界の船は当然、エンジンを積んでいるものだったからな。だから、例え風向きがあっていなくても相当な速度が出た」

「……ああ。つまり、そう言うことですか」


 意を得たり。ヨハンの考えを理解したラニーニャは、楽しそうな笑みを浮かべるのだった。
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