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神宮寺稀過去編
神宮寺稀が誕生するまで 二
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翌日、高さは三百メートルはあろうかという小高い丘を和花と蓮香は登っていた。
丘というより小さい山であった。
草木もない岩だけの山を歩くなど和花には初めてであった。
ここは一般の人は立ち入り禁止となっている。
万一入っても強力な硫黄のガスによって酸欠となり気を失ってしまうだろう。
蓮香や和花のような霊力を持った人間だけが、結界を張る事により硫黄のガスを防いで行ける。
霊力を放ち結界を張りながらの行程はかなりの体力を消耗する。
まして三百メートルとはいえ、上り坂である。
二人は途中何度か休みながら三十分以上かけてようやく山頂にたどり着いた。
その山頂には五十センチほどの高さに石を積み上げた三角形上の遺跡のような物が五箇所に置かれており、その形は五角形を示していた。
そして中央に一段と高く積まれた石の上に一本の剣が刺さっていた。
「ここにあるのは紫式部。神楽と同じ能力を持つ聖剣。この剣が主人と認めた人間ならここから抜く事が出来る。ただしかなりの霊力がある事とこの剣が主人と認めない限りは抜けないわ。私はまったくダメだった。
この剣がなぜここにあるのかを私に聞かれても困るわ。七聖剣は平安時代に同じ刀鍛冶から作られた剣。それを所持するのは安倍晴明に認められた力を持つ家系の者たち、あるいはそれに殉ずる者と決められていた。
他の剣はそれぞれ所持する者が存在する中で、この紫式部だけが幕末以降百五十年以上主のない状態でここに残されたという事しか知らないわ」
蓮香は言わなかったが、実は傀に変身した舞美の力を持ってしてもまったく動かなかった。
聖剣が主と認めた者以外は何人たりとも持つ事は叶わないのだ。
「ここでの修行の成果を試すだけでなく、私が聖菜さんの力になれるのか、それを知るためにもこの剣に主として認められたい」
「あなたを初めて見た時からもしかしたらと思っていた。和花ならこの剣の継承者となれるかも知れない。そう思ったんだ。さあ、剣を持ってみて」
和花はゆっくりと歩き出し、紫式部の前に立つと恐る恐る紫式部を手にする。
突然全身に電流が走るような衝撃を感じた。
思わず手を離そうとするが、蓮香から「手を離しちゃだめ」と言われてぐっと堪える。
蓮香も驚いていた。
剣がスパークしているのがはっきりとわかったからだ。
舞美の時にはうんともすんとも言わず、何の反応もなかった剣が呼応しているかのようであった。
「これは。。剣が反応を示した。紫式部は和花が主に相応しい人物かを見定めている」
剣を手に持った和花は脳裏に何か見えてくるのを感じていた。
何だろうと必死で霊力を高めていくと、少しずつだが輪郭がはっきりと見え始めて来た。
「何? これは?」
それは長い鎌を持った死神であったが、顔を見ると義理の父である佐々木賢治であった。
「う。。」
和花は幼い頃から散々痛めつけられた賢治を見ると意識的に萎縮してしまう。
「お前まだ生きてたのか? とっくに死んでいると思っていたぜ」
和花が動揺しているのを見て蓮香が声を上げる。
「和花、落ち着いて。それが試練。あなたの脳裏に浮かぶ過去を断ち切れれば、剣はあなたを所有者と認める」
「過去を断ち切る。。」
「落ち着いて今までの修行を思い出して。今のあなたなら試練を乗り越えられる」
死神の姿をした賢治は大鎌を振り回して和花に襲い掛かってくる。
だが、和花は冷静にその攻撃をかわした。
すぐさま二撃目、三撃目が来るが和花は紫式部を握りながら何とか避ける。
だが、結界に刺さった剣を握りながら避けるのにも限界がある。
賢治の大鎌がついに和花の動きを捉えて頭上に振り下ろされた。
もうダメか。。
そう思った瞬間、和花の気が一気に膨れ上がると紫式部が光を放ち、それに呼応するように和花は防御結界を張り巡らせた。
「何だと?」
和花の防御結界に大鎌の攻撃は弾き返される。
二度、三度と攻撃を仕掛けるが、防御結界はびくともしない。
「これは。。紫式部が私に同調している?」
和花はゆっくりと剣を結界から引くと、それまでびくともしなかった紫式部は結界から引き抜かれて和花の手に収まった。
「やった! ついに和花が紫式部を引き抜いた。紫式部は和花を主と認めたんだ」
蓮香も初めて見る紫式部の光に感慨深く見つめていた。
かつて戦った仲間たちの聖剣と同じ光を放つ剣を見たのは十三年ぶりであった。
「幻影よ、消えろ!」
和花が紫式部をひと振りすると死神の姿をした賢治は真っ二つに斬り裂かれて霧のように消えていった。
「やった。。」
和花はその場で膝をついたところを蓮香に支えられた。
「やったね、和花。これで紫式部は正式にあなたの物になった。あなたはこれからその剣を使ってかつての美里さんや聖菜さんのように困っている人たちを助けるために尽力してあげて」
「蓮香さん、私にそんな事出来ますか?」
「あなたなら大丈夫。そしていずれ結界が破れて再び目覚めるであろう狭間法元を倒すために聖菜さんや私たちとともに戦って欲しい」
蓮香にそう言われても和花にはまだ自分にそれだけの事が出来るのか不安であった。
だが、聖菜がいずれその狭間法元と戦うのに自分の力が必要だと言うのであれば、必ず聖菜の力になろうと思っていた。
「蓮香さん、わかりました。私は聖菜さんに憧れて彼女のようになりたいと思って今日まで修行して来たのです。聖菜さんの助けになるのなら私はこの力を使って助けられる人を助けます」
こうして紫式部は和花の元へと収まる事となった。
それから三日後、和花と蓮香に別れの時がやってきた。
「蓮香さん、一年以上もお世話になりました。本当にありがとうございます」
「和花、いっときのお別れだけどまた会える日を楽しみにしているよ。もっとも次に会う時はおそらく狭間法元との戦いの時だと思う。必ず聖菜さんを助けて私たちも生き残ろう」
「はい」
「私はそれまでもう少しこの恐山でやる事があるから。もし私の仲間に出会うような事があったら蓮香は無事だと伝えておいて。そして舞美も心配しなくていいと」
「舞美さんにもお会いしたかったです。でも今は眠っておられるのですよね」
生駒舞美はこの恐山に来てすぐに蓮香の仮死の術によって長い眠りについたのだ。
ハザマ幼虫をいったん冬眠の状態にさせて法元が目覚めるまで傀としての能力を保つにはこれしか無いと舞美の決意に蓮香が押されてその選択をしたのだった。
「では、お元気で!」
こうして和花は一年と少し修行した恐山から下山して南町への帰路に着いた。
その帰り道、新幹線に一人乗る和花はこれからの事を考えていた。
「人助けと言っても具体的に何をどうすればいいのかな」
理想は聖菜のような霊媒巫女なのだが、和花は出来れは聖菜と同じ業態で聖菜の邪魔をするつもりはなかった。
違う業態をやりながら影から聖菜を見守るような感じがいいな。
そんな風にも考えていた。
「慌てなくてもいいかな。何をやるにも私にはまだ先立つ物がない。しばらくは働きながらお金を貯めていく事にしよう」
丘というより小さい山であった。
草木もない岩だけの山を歩くなど和花には初めてであった。
ここは一般の人は立ち入り禁止となっている。
万一入っても強力な硫黄のガスによって酸欠となり気を失ってしまうだろう。
蓮香や和花のような霊力を持った人間だけが、結界を張る事により硫黄のガスを防いで行ける。
霊力を放ち結界を張りながらの行程はかなりの体力を消耗する。
まして三百メートルとはいえ、上り坂である。
二人は途中何度か休みながら三十分以上かけてようやく山頂にたどり着いた。
その山頂には五十センチほどの高さに石を積み上げた三角形上の遺跡のような物が五箇所に置かれており、その形は五角形を示していた。
そして中央に一段と高く積まれた石の上に一本の剣が刺さっていた。
「ここにあるのは紫式部。神楽と同じ能力を持つ聖剣。この剣が主人と認めた人間ならここから抜く事が出来る。ただしかなりの霊力がある事とこの剣が主人と認めない限りは抜けないわ。私はまったくダメだった。
この剣がなぜここにあるのかを私に聞かれても困るわ。七聖剣は平安時代に同じ刀鍛冶から作られた剣。それを所持するのは安倍晴明に認められた力を持つ家系の者たち、あるいはそれに殉ずる者と決められていた。
他の剣はそれぞれ所持する者が存在する中で、この紫式部だけが幕末以降百五十年以上主のない状態でここに残されたという事しか知らないわ」
蓮香は言わなかったが、実は傀に変身した舞美の力を持ってしてもまったく動かなかった。
聖剣が主と認めた者以外は何人たりとも持つ事は叶わないのだ。
「ここでの修行の成果を試すだけでなく、私が聖菜さんの力になれるのか、それを知るためにもこの剣に主として認められたい」
「あなたを初めて見た時からもしかしたらと思っていた。和花ならこの剣の継承者となれるかも知れない。そう思ったんだ。さあ、剣を持ってみて」
和花はゆっくりと歩き出し、紫式部の前に立つと恐る恐る紫式部を手にする。
突然全身に電流が走るような衝撃を感じた。
思わず手を離そうとするが、蓮香から「手を離しちゃだめ」と言われてぐっと堪える。
蓮香も驚いていた。
剣がスパークしているのがはっきりとわかったからだ。
舞美の時にはうんともすんとも言わず、何の反応もなかった剣が呼応しているかのようであった。
「これは。。剣が反応を示した。紫式部は和花が主に相応しい人物かを見定めている」
剣を手に持った和花は脳裏に何か見えてくるのを感じていた。
何だろうと必死で霊力を高めていくと、少しずつだが輪郭がはっきりと見え始めて来た。
「何? これは?」
それは長い鎌を持った死神であったが、顔を見ると義理の父である佐々木賢治であった。
「う。。」
和花は幼い頃から散々痛めつけられた賢治を見ると意識的に萎縮してしまう。
「お前まだ生きてたのか? とっくに死んでいると思っていたぜ」
和花が動揺しているのを見て蓮香が声を上げる。
「和花、落ち着いて。それが試練。あなたの脳裏に浮かぶ過去を断ち切れれば、剣はあなたを所有者と認める」
「過去を断ち切る。。」
「落ち着いて今までの修行を思い出して。今のあなたなら試練を乗り越えられる」
死神の姿をした賢治は大鎌を振り回して和花に襲い掛かってくる。
だが、和花は冷静にその攻撃をかわした。
すぐさま二撃目、三撃目が来るが和花は紫式部を握りながら何とか避ける。
だが、結界に刺さった剣を握りながら避けるのにも限界がある。
賢治の大鎌がついに和花の動きを捉えて頭上に振り下ろされた。
もうダメか。。
そう思った瞬間、和花の気が一気に膨れ上がると紫式部が光を放ち、それに呼応するように和花は防御結界を張り巡らせた。
「何だと?」
和花の防御結界に大鎌の攻撃は弾き返される。
二度、三度と攻撃を仕掛けるが、防御結界はびくともしない。
「これは。。紫式部が私に同調している?」
和花はゆっくりと剣を結界から引くと、それまでびくともしなかった紫式部は結界から引き抜かれて和花の手に収まった。
「やった! ついに和花が紫式部を引き抜いた。紫式部は和花を主と認めたんだ」
蓮香も初めて見る紫式部の光に感慨深く見つめていた。
かつて戦った仲間たちの聖剣と同じ光を放つ剣を見たのは十三年ぶりであった。
「幻影よ、消えろ!」
和花が紫式部をひと振りすると死神の姿をした賢治は真っ二つに斬り裂かれて霧のように消えていった。
「やった。。」
和花はその場で膝をついたところを蓮香に支えられた。
「やったね、和花。これで紫式部は正式にあなたの物になった。あなたはこれからその剣を使ってかつての美里さんや聖菜さんのように困っている人たちを助けるために尽力してあげて」
「蓮香さん、私にそんな事出来ますか?」
「あなたなら大丈夫。そしていずれ結界が破れて再び目覚めるであろう狭間法元を倒すために聖菜さんや私たちとともに戦って欲しい」
蓮香にそう言われても和花にはまだ自分にそれだけの事が出来るのか不安であった。
だが、聖菜がいずれその狭間法元と戦うのに自分の力が必要だと言うのであれば、必ず聖菜の力になろうと思っていた。
「蓮香さん、わかりました。私は聖菜さんに憧れて彼女のようになりたいと思って今日まで修行して来たのです。聖菜さんの助けになるのなら私はこの力を使って助けられる人を助けます」
こうして紫式部は和花の元へと収まる事となった。
それから三日後、和花と蓮香に別れの時がやってきた。
「蓮香さん、一年以上もお世話になりました。本当にありがとうございます」
「和花、いっときのお別れだけどまた会える日を楽しみにしているよ。もっとも次に会う時はおそらく狭間法元との戦いの時だと思う。必ず聖菜さんを助けて私たちも生き残ろう」
「はい」
「私はそれまでもう少しこの恐山でやる事があるから。もし私の仲間に出会うような事があったら蓮香は無事だと伝えておいて。そして舞美も心配しなくていいと」
「舞美さんにもお会いしたかったです。でも今は眠っておられるのですよね」
生駒舞美はこの恐山に来てすぐに蓮香の仮死の術によって長い眠りについたのだ。
ハザマ幼虫をいったん冬眠の状態にさせて法元が目覚めるまで傀としての能力を保つにはこれしか無いと舞美の決意に蓮香が押されてその選択をしたのだった。
「では、お元気で!」
こうして和花は一年と少し修行した恐山から下山して南町への帰路に着いた。
その帰り道、新幹線に一人乗る和花はこれからの事を考えていた。
「人助けと言っても具体的に何をどうすればいいのかな」
理想は聖菜のような霊媒巫女なのだが、和花は出来れは聖菜と同じ業態で聖菜の邪魔をするつもりはなかった。
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