霊媒巫女の奇妙な日常

葉月麗雄

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最終章 最後の戦い

青龍見参。そして最後の聖剣

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「稀さまあああ」

瑠奈と莉乃の二人は主人の死に怒りと悲しみを爆発させて法元に襲い掛かる。

「いけない。二人とも逃げて」

瑠奈と莉乃がの三節棍とヌンチャク同時攻撃が法元の体を捉えるが、二人がいくら攻撃しても法元にとっては蚊に刺されたほどにも感じていない。
ウザいといった表情で法元が手をはらうと二人は簡単に振り飛ばされてしまう。

「私たちの攻撃がまったく通用しない」

「こんな奴がこの世に存在するなんて」

瑠奈と莉乃は自分たちの無力を呪った。

聖菜は倒れたまま動かない稀を見て悲しみと怒りが込み上げてくる。

「よくも。。よくも私の親友を」

その瞬間、まるで炎が跳ね上がるような霊気が聖菜の体から発せられる。
聖菜の怒りがその眠っていた能力を呼び覚ました。
さらに太蔵が聖菜に与えた霊力が聖菜の持つ霊力と融合して新しい能力が生まれたのだ。

「聖菜?」

黒澤真美は急激に跳ね上がり膨張していく聖菜の霊力に驚く。

「これほどの霊力が聖菜の中で眠っていたなんて。。」



ー天界ー

「これは。。ようやく新たな主がお目覚めか」

天界で次の主である聖菜の力が目覚めるのを待っていた十二神将、青龍にまでその気は届いていた。

「どうした?」

「二郎神君(じろうしんくん)、どうやら私は地上に行かなければならないようだ。今まで修行に付き合ってくれてありがとう」

「そうか、待っていた人が目覚めたのだな」

「十五年か。我々にとってはほんのひと時であったが人が成長するには十分な時間だったようだ」

その時、二人の背後に巨大な気が現れた。
それはまさしく神だけが持つ大いなる光の気であった。

「青龍、行くのかい?」

「九天玄女(きゅうてんげんにょ)様」

青龍と二郎神君は主の前に膝を折り平伏する。
声をかけたのは天界の女神、九天玄女(きゅうてんげんにょ)であった。

「はい、私はかつての主であった刀祢美里から最後の命を承っていました。娘の聖菜を助けてくれと。私は聖菜が我が主に相応しい力をつけるまではここで見守ると申し上げました。その時が来たようです」

「そうですか。相手は手強いですよ。気をつけて」

「いくら怠け者の私でも主の願いを無視するわけにはいきませんからね。では行って参ります」

青龍は九天玄女に一礼すると下界へと降りていった。



「怒りでキレたのか、それがお前の本来の力なのか知らぬが面白い」

法元がさらに霊力をアップさせると暴風のような風が巻き起こり、雪乃たちは吹き飛ばされないように踏ん張るのが精一杯であった。

「ダメだ、聖菜。あいつの力が強すぎて飛ばされる。。うわあああ」

「那由多!」

那由多が時空に飛ばされそうになったその時、那由多の身体を支えて抱き上げた者がいた。

「那由多、久しぶりだな」

「青龍! 来てくれたんだね。助かったよ」

「あなたは。。」

「俺は青龍。あなたの母、美里の式神だった者です。我が主からの最後の命により娘であるあなたを助けに来ました。」

「青龍が来てくれたと言う事は聖菜を正式に主人として認めてくれたって事だよ」

那由多がそう言い終えると青龍が聖菜の前にひざまづく。

「今よりあなたが私のご主人様です。何なりとお申し付け下さい」

「青龍、私と契約してくれてありがとう。最終決戦よ。一緒に法元を倒そう」

「はい!」

聖菜と青龍が並んで立つと法元は小癪なという表情で二人を睨みつける。

「式神如きが俺に勝てるとでも」

「やってみなきゃわからないだろ」

「面倒だ、二人まとめてかかって来い」

法元の挑発に青龍と聖菜は二人がかりで斬りかかる。

「動けるのは聖菜さんとあの式神だけ。。早く回復してくれ。。」

凛が悔しさを滲ませてそう言ったその時、闘技場に一つの影が近づいてきた。

「間に合って良かった!」

ロングヘアを後ろに束ねて知性的な印象を受ける三十代くらいの女性。
それは雪乃たちのよく知る人物であった。

「蓮香! 来てくれたのか」

「遅くなってごめん。七星剣最後の一つを持つ人を連れて来るのに時間が掛かってしまったの」

「最後の一本が見つかったのか?」

「ええ、あれを」

全員が一斉に蓮香の指差す方向を見ると、そこにたっていたのは生駒舞美であった。

「舞美? その姿は?」

凛が驚くのも無理はない。
舞美は十五年前と全く変わらない姿であったからだ。

「仮死の術を施してこの十五年間眠っていたのよ」

「仮死の術? 聞いた事がある。今の医学では直せない不治の病にかかった患者を一時的に仮死状態にして延命させるための術。でも、それをどうして舞美が?」

「そこにいる法元と一緒よ。ハザマ幼虫は寄生している本体が仮死状態になると冬眠に入る。かと言ってそのままにしておけば十数年寄生された後、本体を食い破ってしまうからこの能力を持ったまま眠って時が来るのを待っていたのよ」

そして舞美が手にしているのは橙色に輝く炎の剣、烈火剣であった。
これを見つけたのは偶然であった。
恐山で稀〔佐々木和花〕が紫式部を手にした後、さらにその近辺を調査しているうちにもう一つの奇妙な石を積み上げた結界域が見つかり、そこにこの剣が奉納されていたのだ。

そして眠りから目覚めた舞美がそれを手にすると、烈火剣は舞美を主と認め見事に抜くことが出来た。
正直、無理だろうと思っていたので驚いたというのが本音だが、もうそんな事を言っている場合ではなかった。

これは運が良かった、狭間法元を倒せという天からの贈り物だと思って烈火剣を手に舞美と蓮香は急ぎこの南町に向かう事にしたのだ。


「あなたたちは?」

聖菜は蓮香と舞美に初めて会う。
蓮香と舞美の二人は十五年前の美里の面影が多く残る聖菜の顔を見て思わず涙腺が緩んだ。

「姉さん。。」

「え?」

聖菜は自分よりひとまわりは歳上だろうと思われる女性から姉さんといきなり言われて戸惑いを隠せない。

「あ、ごめんなさい。あなたがあまりにも十五年前の美里さんに似ていたものだから。。私は蓮香と言います。幼少の頃は刀根神社で修行をしてまして、あなたのお母さんである美里さんとは姉妹弟子の関係で、太蔵さんは師匠なんです」

聖菜は蓮香が母と一緒に祖父太蔵の元で修行したと聞いて驚いた。

「美里さんは私にとっていい姉弟子でありお姉さんのような存在でした。それだけに助けられなかった自分の力のなさを後悔して今日まで過ごしました。

だから今度はあなたを。。いえ、あなただけでなくここにいる全員を必ず助ける。
倒れている人は私が回復させます。あなたも怪我や体力消耗したら私が治すから思いっきり戦って」

「お母さんに妹弟子がいたなんて初めて聞きました。お爺ちゃんもそんな事はひと言も。。」

聖菜はそこまで言うとはっと気がついたように蓮香の両腕を掴んで懇願する。

「蓮香さんは回復の能力を持っているの? それなら和花(のどか)を。。和花を助けてあげて」

和花と聞いて蓮香は驚き「わかったわ」と返事をするとすぐに駆け寄った。

「和花!」

蓮香はまだ微かに息のある事を確認してホッとする。

「大丈夫、危険な状態だけどまた息がある。死んでさえいなければ治療出来るから」

蓮香の言葉に聖菜だけでなく他の仲間たちもホッとし、瑠奈と莉菜は涙を流す。

「和花。今、治療回復させるから。もう少しだけ辛抱して」

舞美は聖菜に自分も法元と同じハザマ幼虫を埋め込まれた「傀」だと告げると聖菜は驚いた。

「私は自分の意思でハザマ幼虫の力を自由にコントロール出来る。そしてこの力で私をこんな目に合わせた狭間法元を倒すために今ここにいる。美里さんの仇を討ってこの戦いを終わらせよう」

舞美の言葉に聖菜はうなづく。
治療が終わり回復した稀は蓮香の姿を見て驚いたのと自分が助かった事が信じられないといった表情だった。

「蓮香? 蓮香なの?」

「和花、遅くなってごめん。あとでゆっくり話すから」

「私を生き返らせてくれてありがとう。命の恩人だね」

「いくらなんでもそれは無理。死んでなかったから回復させられたのよ」

蓮香は笑いながらそう言う。

「和花、立てる? 私は他の仲間たちも回復させてくる」

「私は大丈夫、他の仲間たちのところに行ってあげて」

蓮香はうなづくと雪乃たちの元に駆け寄り、一人一人に手を振りかざす。
蓮香の回復霊力で法元の攻撃で動けずにいた仲間が一人、また一人と起き上がった。

藤村桐子。

藤村雪乃。

西巻明日香。

宗像凛。

雪乃は法元に向かって剣を向ける。

「これで七星剣が全て揃った。法元、ハザマ幼虫を使って信者たちを奴隷化させ、永遠の若さと力を手に入れるというお前の野望もここまでよ」
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