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激闘編
三日月党との激闘 六
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「剣を持たないのか?」
「私は琉球古武術の使い手。剣などなくても一撃で相手を倒せる」
「琉球古武術。。」
桜が初めて聞く武術であった。
桜とて柔術の達人。
武術同士の戦いにも対応は出来る。
だが、ここで相手の土俵に乗る事はない。
桜が抜刀すると吹雪は懐からヌンチャクを取り出す。
ヌンチャクは琉球古武術の武器だが、桜は初めて見る武器に戸惑いを隠せない。
吹雪は桜の前でヌンチャクを縦横無尽に振るう。
「この見た事もない武器はどうやって使うものなのか。。」
そう考えている間もなくヌンチャクの攻撃が襲いかかる。
変幻自在の動きに加えて左右の手に持ち替えながら攻撃してくるため、右からくるのか左から来るのか読みづらい。
樫で出来ているヌンチャクは硬く、当たった時の破壊力は相当なものである。
刀で弾いていては刀が折れてしまう可能性もあった。
〔このまま受け続けてはまずい。こちらから仕掛けていくしかない〕
そう考えた桜は一気に前に出る。
「焔乃舞(ほむらのまい)」
この桜の一文字斬りを吹雪はヌンチャクの鎖部分で受け止めて刀ごと弾き飛ばすつもりであったが、焔乃舞の速度と威力は予想を超えていて逆にヌンチャクが飛ばされそうになる。
吹雪は必死で桜の刀を止め投げ技に持っていこうとするも、桜もこれに対応して二人はその場で互いに側転するような形となり着地した。
二人は間合いを取りゆっくりと立ち上がると、吹雪が再びヌンチャクで攻撃を仕掛ける。
桜は縦横に変幻自在に動くヌンチャクに苦戦するが、ヌンチャクは上半身のみに攻撃が限定される事と長刀の方が長さがある分、突きの構えをすれば相手は容易にこちらの間合いに入れない事を見破った。
上から振り下ろされるヌンチャクを刀で受け止めると同時に前に出て吹雪の右足に下段蹴りを打ち込む。
「ぐ。。」
吹雪が少しだが顔を歪める。
〔間合いが掴めてきた〕
桜がそう思って前に出ようと踏み込んだ時、吹雪が左手にもう一本のヌンチャクを持ち、左右二本のヌンチャクを振るう。
〔二本!〕
これには桜も内心驚きを隠せない。
ようやく間合いを掴んだと思ったのも束の間、二本のヌンチャクを両手からの超高速で振るわれると全く吹雪の間合いに入り込む隙が無くなってしまった。
〔これは凄まじい。全く入り込む余地が無い。。〕
桜は再び突きの構えを取る。
長刀の長さを活かした攻撃から突破口を見出さないと、このままではやられてしまう。
「華一閃(はないっせん)」
頭にさえ攻撃を受けなければ腕や肩に一撃食らっても構わずに突進する捨て身の作戦であった。
吹雪はこの突きを間一髪で右に身体を捻りかわして桜の頭部目掛けてヌンチャクを振り抜く。
だが、桜も吹雪が右に避けると予測していた。
桜はあえて隙を見せるように身体の左側をガラ空きにして誘い込み、華一閃を放ったのだ。
突きを「予想通り」かわした吹雪に桜は右足を軸に身体を高速回転させて突きから一文字斬りへの連続攻撃を展開する。
「焔乃舞(ほむらのまい)」
「くそ。。」
吹雪は攻撃体制に入っていたところから強引に右へ飛び、辛うじて焔乃舞をかわす。
「強い。。」
「なかなかやるな。。不知火が倒される訳だ」
吹雪は起き上がるとヌンチャクを捨てて新たな武器を持った。
今度はトンファーである。
またも見た事もない武器。
桜は納刀して居合い抜きの構えをとる。
相手の武器や技が不明ならば、受けるのは不利。ならば先手必勝で一気に勝負をつける。
ジリジリと少しずつ前に出る桜にトンファーを構えて居合い抜きに備える吹雪。
「迅速斬(じんそくざん)」
桜の技が発動するとカアンという大きな音を立てて刀とトンファーが激突する。
吹雪の右腕がビリビリと痺びれるが、その衝撃に耐えて左手のトンファーがくるりと回転しながら桜の顔目掛けて放たれる。
「双刀撃(そうとうげき)」
桜は左手で小太刀を抜いて吹雪のトンファーを弾き返す。
「ひゅっ!」
吹雪の気合いの声とともに連続の蹴り技にトンファーの攻撃が桜を襲う。
トンファーの左右から縦に横に高速回転で繰り出される攻撃に桜は幻惑されそうになる。
トンファーの攻撃を刀で受け止めたと思えば左右の蹴りが飛んでくる。
〔まさかこんな使い方をする武器だとは。。琉球古武術は奥深い〕
桜はヌンチャクといいトンファーといい見た事も聞いた事もない武器とその戦い方に感嘆していた。
世の中にはまだまだ自分の知らない流派や技がある。
だがいつまでも感心している場合ではなく、この難敵を打ち破らなければならない。
桜が二刀流の構えを見せると吹雪はいったん後ろに下がって距離を置いた。
トンファーはヌンチャク同様、当たった時の破壊力は脅威だが刀に比べて長さがない。
つまり相手の動きと武器の使い方がわかってくれば長刀を持つ桜の間合いで戦える。
だが気をつけなければならないのはトンファーは直角型。
その形状を利用して刀や相手の首ねっこを引っ掛けての攻撃も可能であるからだ。
桜と吹雪は再びジリジリと間合いを詰めていく。
先に動いたのはやはり桜だった。
「銀龍牙(しろがねのりょうが)」
刀とトンファーが激しくぶつかる音が鳴り響く。
超神速の六連撃を吹雪は左右のトンファーを高速回転させながら弾き防ぎ切った。
が、攻撃はそこで終わりではなかった。
今度は桜がお返しとばかりに左回し蹴りを吹雪に浴びせる。
吹雪はそれをかわすが、かわしたと思ったところに左頬に蹴りが当たり思わず顔を背ける。
かけ蹴りをやり返されたのだ。
「ちっ。。」
己の技をやり返された吹雪は思わず舌打ちした。
そこへ立て直す隙を与えず桜の連続攻撃が入る。
「双刀閃(そうとうせん)」
桜は小太刀を吹雪に向かって投げつけた。
吹雪がそれをトンファーで弾き飛ばすが、同じ軌道から長刀で突きが来る。
双刀閃は小太刀を相手に投げつけたと同時に華一閃による突きを同じ軌道で放つ連続技である。
「くそ!」
吹雪は華一閃をかわそうと身体を捻るが、桜の技が途中で止まる。
「なに?」
桜は突きと見せかけて刀を右手から左手に持ち替えた。
「焔乃舞(ほむらのまい)」
左手による焔乃舞を放ち、吹雪はこれを防御出来ず右胸から腹部にかけて斬り裂かれた。
飛び散る血飛沫。
それでも吹雪は倒れず、右手を振り上げて攻撃をしようとする。
桜がその右手を掴んだ。
「やめな。もう勝負はついている」
吹雪はしばらく桜の顔を見つめるが、力尽きトンファーが手から離れて床にカランと落ちると自らもその場に崩れ落ちた。
「。。私たちはこの数年実践経験がなかった。その差が出てしまったという事か」
「あなたは強かったよ。私は運が良かっただけ」
「戦いの中で生き残れるのは実力がある証拠。私は生涯最高の相手に出会えて満足だ。出来れば友人として出会いたかったがな。。」
「吹雪。。」
「三日月党の残りは六人衆の頭、夢幻と頭領の養源斎の二人だけ。。その二人を倒せば大奥にいる三日月党は全滅だ。お方様は後ろ盾を失うだろう。。」
それだけ言い終えると吹雪は息を引き取った。
桜は吹雪の身体をあお向けにして手を合わせた。
「私もあなたとは敵味方じゃなく友人として出会いたかった。。」
吹雪との戦いを終えた桜は泉凪のいる部屋に戻ろうとするが、身体の異変に気がつく。
「あ。。」
突然頭がぐらっとなり、目が回る感覚に襲われる。
桜は立っていられず、その場にしゃがみ込む。
「あ、あれ?おかしいな。。どうしたんだろう。。」
そして次に全身を痛みが襲って来た。
「う。。あああ」
腕と足が。特に右腕に猛烈な痛みが襲い桜はうめき声を上げた。
吹雪の攻撃を受けたからだけではなかった。
桜流抜刀術を酷使したために身体に限界が近づいてきていたのだ。
彩雲から言われた半年どころかまだ二ヶ月も経っていない時期であった。
「こんなに早く限界が来るなんて。。」
桜は三日月党との連戦と死闘で身体への負担が一気に限界にきてしまったのだと悟った。
幸い、目眩も痛みもしばらくするとおさまってきて、桜は壁によりかかりながら何とか立ち上がる。
「あ。。あと少し。。私の身体、あと少しだけもって。お願い」
「私は琉球古武術の使い手。剣などなくても一撃で相手を倒せる」
「琉球古武術。。」
桜が初めて聞く武術であった。
桜とて柔術の達人。
武術同士の戦いにも対応は出来る。
だが、ここで相手の土俵に乗る事はない。
桜が抜刀すると吹雪は懐からヌンチャクを取り出す。
ヌンチャクは琉球古武術の武器だが、桜は初めて見る武器に戸惑いを隠せない。
吹雪は桜の前でヌンチャクを縦横無尽に振るう。
「この見た事もない武器はどうやって使うものなのか。。」
そう考えている間もなくヌンチャクの攻撃が襲いかかる。
変幻自在の動きに加えて左右の手に持ち替えながら攻撃してくるため、右からくるのか左から来るのか読みづらい。
樫で出来ているヌンチャクは硬く、当たった時の破壊力は相当なものである。
刀で弾いていては刀が折れてしまう可能性もあった。
〔このまま受け続けてはまずい。こちらから仕掛けていくしかない〕
そう考えた桜は一気に前に出る。
「焔乃舞(ほむらのまい)」
この桜の一文字斬りを吹雪はヌンチャクの鎖部分で受け止めて刀ごと弾き飛ばすつもりであったが、焔乃舞の速度と威力は予想を超えていて逆にヌンチャクが飛ばされそうになる。
吹雪は必死で桜の刀を止め投げ技に持っていこうとするも、桜もこれに対応して二人はその場で互いに側転するような形となり着地した。
二人は間合いを取りゆっくりと立ち上がると、吹雪が再びヌンチャクで攻撃を仕掛ける。
桜は縦横に変幻自在に動くヌンチャクに苦戦するが、ヌンチャクは上半身のみに攻撃が限定される事と長刀の方が長さがある分、突きの構えをすれば相手は容易にこちらの間合いに入れない事を見破った。
上から振り下ろされるヌンチャクを刀で受け止めると同時に前に出て吹雪の右足に下段蹴りを打ち込む。
「ぐ。。」
吹雪が少しだが顔を歪める。
〔間合いが掴めてきた〕
桜がそう思って前に出ようと踏み込んだ時、吹雪が左手にもう一本のヌンチャクを持ち、左右二本のヌンチャクを振るう。
〔二本!〕
これには桜も内心驚きを隠せない。
ようやく間合いを掴んだと思ったのも束の間、二本のヌンチャクを両手からの超高速で振るわれると全く吹雪の間合いに入り込む隙が無くなってしまった。
〔これは凄まじい。全く入り込む余地が無い。。〕
桜は再び突きの構えを取る。
長刀の長さを活かした攻撃から突破口を見出さないと、このままではやられてしまう。
「華一閃(はないっせん)」
頭にさえ攻撃を受けなければ腕や肩に一撃食らっても構わずに突進する捨て身の作戦であった。
吹雪はこの突きを間一髪で右に身体を捻りかわして桜の頭部目掛けてヌンチャクを振り抜く。
だが、桜も吹雪が右に避けると予測していた。
桜はあえて隙を見せるように身体の左側をガラ空きにして誘い込み、華一閃を放ったのだ。
突きを「予想通り」かわした吹雪に桜は右足を軸に身体を高速回転させて突きから一文字斬りへの連続攻撃を展開する。
「焔乃舞(ほむらのまい)」
「くそ。。」
吹雪は攻撃体制に入っていたところから強引に右へ飛び、辛うじて焔乃舞をかわす。
「強い。。」
「なかなかやるな。。不知火が倒される訳だ」
吹雪は起き上がるとヌンチャクを捨てて新たな武器を持った。
今度はトンファーである。
またも見た事もない武器。
桜は納刀して居合い抜きの構えをとる。
相手の武器や技が不明ならば、受けるのは不利。ならば先手必勝で一気に勝負をつける。
ジリジリと少しずつ前に出る桜にトンファーを構えて居合い抜きに備える吹雪。
「迅速斬(じんそくざん)」
桜の技が発動するとカアンという大きな音を立てて刀とトンファーが激突する。
吹雪の右腕がビリビリと痺びれるが、その衝撃に耐えて左手のトンファーがくるりと回転しながら桜の顔目掛けて放たれる。
「双刀撃(そうとうげき)」
桜は左手で小太刀を抜いて吹雪のトンファーを弾き返す。
「ひゅっ!」
吹雪の気合いの声とともに連続の蹴り技にトンファーの攻撃が桜を襲う。
トンファーの左右から縦に横に高速回転で繰り出される攻撃に桜は幻惑されそうになる。
トンファーの攻撃を刀で受け止めたと思えば左右の蹴りが飛んでくる。
〔まさかこんな使い方をする武器だとは。。琉球古武術は奥深い〕
桜はヌンチャクといいトンファーといい見た事も聞いた事もない武器とその戦い方に感嘆していた。
世の中にはまだまだ自分の知らない流派や技がある。
だがいつまでも感心している場合ではなく、この難敵を打ち破らなければならない。
桜が二刀流の構えを見せると吹雪はいったん後ろに下がって距離を置いた。
トンファーはヌンチャク同様、当たった時の破壊力は脅威だが刀に比べて長さがない。
つまり相手の動きと武器の使い方がわかってくれば長刀を持つ桜の間合いで戦える。
だが気をつけなければならないのはトンファーは直角型。
その形状を利用して刀や相手の首ねっこを引っ掛けての攻撃も可能であるからだ。
桜と吹雪は再びジリジリと間合いを詰めていく。
先に動いたのはやはり桜だった。
「銀龍牙(しろがねのりょうが)」
刀とトンファーが激しくぶつかる音が鳴り響く。
超神速の六連撃を吹雪は左右のトンファーを高速回転させながら弾き防ぎ切った。
が、攻撃はそこで終わりではなかった。
今度は桜がお返しとばかりに左回し蹴りを吹雪に浴びせる。
吹雪はそれをかわすが、かわしたと思ったところに左頬に蹴りが当たり思わず顔を背ける。
かけ蹴りをやり返されたのだ。
「ちっ。。」
己の技をやり返された吹雪は思わず舌打ちした。
そこへ立て直す隙を与えず桜の連続攻撃が入る。
「双刀閃(そうとうせん)」
桜は小太刀を吹雪に向かって投げつけた。
吹雪がそれをトンファーで弾き飛ばすが、同じ軌道から長刀で突きが来る。
双刀閃は小太刀を相手に投げつけたと同時に華一閃による突きを同じ軌道で放つ連続技である。
「くそ!」
吹雪は華一閃をかわそうと身体を捻るが、桜の技が途中で止まる。
「なに?」
桜は突きと見せかけて刀を右手から左手に持ち替えた。
「焔乃舞(ほむらのまい)」
左手による焔乃舞を放ち、吹雪はこれを防御出来ず右胸から腹部にかけて斬り裂かれた。
飛び散る血飛沫。
それでも吹雪は倒れず、右手を振り上げて攻撃をしようとする。
桜がその右手を掴んだ。
「やめな。もう勝負はついている」
吹雪はしばらく桜の顔を見つめるが、力尽きトンファーが手から離れて床にカランと落ちると自らもその場に崩れ落ちた。
「。。私たちはこの数年実践経験がなかった。その差が出てしまったという事か」
「あなたは強かったよ。私は運が良かっただけ」
「戦いの中で生き残れるのは実力がある証拠。私は生涯最高の相手に出会えて満足だ。出来れば友人として出会いたかったがな。。」
「吹雪。。」
「三日月党の残りは六人衆の頭、夢幻と頭領の養源斎の二人だけ。。その二人を倒せば大奥にいる三日月党は全滅だ。お方様は後ろ盾を失うだろう。。」
それだけ言い終えると吹雪は息を引き取った。
桜は吹雪の身体をあお向けにして手を合わせた。
「私もあなたとは敵味方じゃなく友人として出会いたかった。。」
吹雪との戦いを終えた桜は泉凪のいる部屋に戻ろうとするが、身体の異変に気がつく。
「あ。。」
突然頭がぐらっとなり、目が回る感覚に襲われる。
桜は立っていられず、その場にしゃがみ込む。
「あ、あれ?おかしいな。。どうしたんだろう。。」
そして次に全身を痛みが襲って来た。
「う。。あああ」
腕と足が。特に右腕に猛烈な痛みが襲い桜はうめき声を上げた。
吹雪の攻撃を受けたからだけではなかった。
桜流抜刀術を酷使したために身体に限界が近づいてきていたのだ。
彩雲から言われた半年どころかまだ二ヶ月も経っていない時期であった。
「こんなに早く限界が来るなんて。。」
桜は三日月党との連戦と死闘で身体への負担が一気に限界にきてしまったのだと悟った。
幸い、目眩も痛みもしばらくするとおさまってきて、桜は壁によりかかりながら何とか立ち上がる。
「あ。。あと少し。。私の身体、あと少しだけもって。お願い」
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