たった一つの居場所が失われても、細い糸を手繰り寄せて

青森りんご

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第二章:再起と新たな出会い

第六話 風詠み

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 リリアが辿り着いたのは、街の中心から少し外れた場所にある、小さな宿屋だった。

 木造の建物は古びてはいるが、清潔に保たれており、入り口には「風詠みの宿」と書かれた看板が揺れている。

(ここね……)

 リリアは深呼吸をし、そっと扉を押した。

「いらっしゃい!」

 入るなり、明るい声が迎えてくれた。カウンターの向こうにいたのは、三十代半ばの快活そうな女性だった。栗色の髪をゆるく束ね、エプロン姿の彼女は人懐っこい笑顔を浮かべている。

「ごめんなさい、お客さんじゃなくて……ここで働きたいのですが」

「あら!」

 女性は目を輝かせた。

「あなたが求人を見て来てくれたのね? 助かるわ! ちょうど忙しくて、猫の手も借りたいくらいだったのよ」

「ええと……面接とかは?」

「そんな堅苦しいことしないわよ。名前は?」

「リリア……リリア・アーヴィングです」

 本名を名乗るわけにはいかなかった。リリア・フォン・アルセインとして生きた自分は、もうこの世にいない。

(これからは、リリア・アーヴィングとして生きる)

「リリアね! 私はミラ、この宿の主人よ。よろしくね!」

 ミラは気さくな笑顔で手を差し出した。リリアは戸惑いながらも、その手を握り返す。

「よろしくお願いします」

「うんうん、いい返事! じゃあ早速だけど、お仕事の説明をするわね」

 こうして、リリアの新たな生活が始まった。

 最初は慣れない仕事に戸惑うこともあったが、ミラや他の従業員たちの助けもあり、少しずつ宿屋の仕事を覚えていった。

 そんな中、リリアはこの街で思わぬ才能を発揮することになる――。
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