そして何もなかった

平 昌綱

文字の大きさ
19 / 22

後悔と星空

しおりを挟む
 青子とは次第に疎遠になっていった。僕は修学旅行の準備に追われ、忙しい日々を過ごしていた。僕のクラスでは、バスの座席、新幹線の座席、ホテルの部屋割り、班別研修の班割りまで、すべて僕が裁量を任されていた。そのため、学生の意見を重視して自由に決めることができたが、その分、調整作業に追われて大変だったのをよく覚えている。

 青子とは、たまにDMで会話をする程度の関係になっていた。

「最近どう?」
「まあ、普通かな。そっちは?」
「同じような感じ。修学旅行の準備でバタバタしてるけど」

 そんな他愛ない会話ばかりだった。以前のように盛り上がることもなく、一度生まれた距離を埋めるのは難しいものだと感じていた。

 ある日、プラネタリウムのチケットを手に入れた。僕の街のプラネタリウムはギネス記録に登録されるほどのもので、評判も良い。誰を誘おうかと考えたとき、まず最初に青子のことが浮かんだ。

「青子を誘おうかな……」

 けれど、最近のぎこちなさを思い出し、なんとなく誘えない気がした。結局、僕は別の人を誘うことにした。

 誘ったのは、隣の管弦楽部の部長——仮にR’氏としよう。自分でもなぜ彼女を誘ったのかよく分からなかった。僕たち理科部と同じ顧問の先生がいる縁もあったからかもしれない。

「急だけど、プラネタリウム行かない?」
「いいよ、行ってみたいと思ってたし」

 思いのほかあっさりと了承され、僕は少し拍子抜けした。

 後日、青子の親友にこのことを話したときだった。

「えっ、それ青子を誘えばよかったのに」
「いや……誘っても、来ないと思ったから」
「そんなことないよ。誘えば絶対来てくれたと思う」

 その言葉に、胸の奥がチクリと痛んだ。

「……そうだったのかな」

 僕は自分の選択を悔やんだが、後戻りはできない。

 R’氏とのデートは淡々と進んだ。プラネタリウムでは、二人とも途中で眠ってしまう始末だった。

「なんか、意外と疲れるね」
「ほんとだね。星、きれいだったけど、寝ちゃったのもったいなかったかな」

 その時、ふと頭をよぎったのは青子のことだった。もしあの時、青子を誘っていたら、もっと違う時間を過ごせたのかもしれない。

「でも、誘わなくてよかったのかもな……」

 僕の中には、そんな矛盾した思いもあった。きっと僕は、その時の自分に、青子への想いを認める余裕がなかったのだろう。いや、認めるのが怖かったのかもしれない…
時には自分の心に素直に従うのがいいのかもしれないと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
青春
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

処理中です...