そして何もなかった

平 昌綱

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最後の一年とエピローグ

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 ついに高校生活も最後の一年を迎えた。

 これまでの二年間を振り返ると、楽しいことも苦しいこともたくさんあった。特に、青子との関係はずっと不思議なものだった。親しいけれど決して特別ではなく、時には距離が近くなり、時には遠ざかる。その微妙な距離感が心地よいようでいて、時折寂しさが混ざることもあった。

 そんな中、春休みになり、新しいクラスが発表された。その日の午後、青子からDMが届いた。

 「また赤子と同じクラスだよ……」

 どうやら、犬猿の仲である赤子と再び同じクラスになってしまったらしい。クラス分けの不安が、文面からでもはっきりと伝わってくる。青子はそれがよほどショックだったのか、少し間を置いてもう一通メッセージを送ってきた。

 「仲介してくれない?」

 青子が僕にこうして頼ることは、実は珍しいことではなかった。何かとトラブルが起きたとき、僕はいつも間に入る役割を担っていた。いわば「クラスのアメリカ」として、時には揉め事の調整役、時には愚痴の聞き役として関わることが多かった。だから、今回も彼女にとっては自然な流れだったのかもしれない。

 でも、僕の中にはいつもと違う感情があった。

 「これが最後かもしれない」

 高校生活は残り一年しかない。おそらく、こんなふうに頼られるのも、これが最後になるだろう。そう思うと、胸の奥にほんの少しの寂しさがこみ上げてきた。

 春休みの穏やかな空気の中、僕はスマホの画面を見つめながらため息をついた。正直、面倒だと思う気持ちがなかったわけではない。でも、それ以上に「最後の一年くらい、できることはしてやりたい」という気持ちの方が強かった。

 「わかった、なんとかするよ。」

 そう打ち込み、送信ボタンを押す。既読がつくまでの数秒間が、妙に長く感じられた。

 それから数分後、青子から短い返事が届いた。

 「ありがとう。頼りにしてる。」

 たったそれだけのメッセージだったが、なぜか心の奥にじんわりと染み込んでいった。

 これから始まる最後の一年は、どんなものになるのだろう。青子との関係も、このまま何も変わらずに終わるのか。それとも、何かが変わるのか。僕にはまだわからない。

 ただ一つだけ確かなのは、この一年は、もう二度と戻ってこないということだった。

 だからこそ、一瞬一瞬を大切にしていこうと思った。季節が巡り、春が過ぎ、夏が来て、最後の秋が訪れる頃には、僕たちはどんな風に笑っているのだろうか──。

 これが、高校生活最後の一年の始まりだった。
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