優しい魔法使い

すずかけあおい

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優しい魔法使い①

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三か月くらい前から、もともと仕事で返信の遅い俺からの連絡が頻繁に途切れてしまっていた。
連絡がとれても、通話中に寝落ちてしまったり。
一か月前から既読無視されるようになった。

で、ようやく取れた休みにあいつのマンションに行ったら、玄関先で俺の知らない男とキスしてた。
俺に気付いた冬真とうまは冷めた目で一瞥する。

「もうかいの顔、見たくない」

ふたりは部屋に入って行った。

………。

「俺が悪いんだけどさ!」

いつものバーでママの藍樹あきさんに愚痴る。
それしか発散方法がない。
俺の相談相手になってくれる人は他にいないから。

「また仕事で?」
「うん…休み取れなくて、ようやく休み取れて冬真の誕生日だしって部屋行ったら他の男とキスしてた」
「いい加減転職したら? そのうち身体壊すよ?」
「…うん」

わかってはいるけど次の就職先が見つからないかもしれないとか、それなりに頼りにされてるから周りに悪いとか考えると辞められない。

「で、彼氏探し?」
「うん」
「また仕事ばっかになるんじゃないの?」
「………」

否定できない。

「難しいよね、仕事だって大事だし」
「そう! そうなんです!」

隣に座っていた男性が話に入ってくる。
優しい声。

「そういえばあさひさんも仕事ばっかだよね」

藍樹さんが笑うと旭さんと呼ばれた男性は恥ずかしそうにしたあとに微笑む。

「ごめんね、勝手に話に入っちゃって」
「いえ…」
「よかったらご一緒しませんか?」

こんな風に誘われるの初めてだからどうしようって思ってたら藍樹さんがすっといなくなった。
なにか意味があるのかな…。
とりあえずあぶない感じの人じゃないから、いいか。

「はい、ぜひ」
「ありがとう。俺は旭」
「櫂です」

お互い仕事が忙しくて振られてばっかりって話してたら盛り上がって、なんか仕事の愚痴とか元カレの愚痴とか言い合って、すごく気分よくて。

で。

「………」

起きたらホテル。
隣には旭さん。
俺も旭さんも裸で、俺の身体のあちこちにはキスマークが残ってる。

「……え?」
「ん…」
「ひっ!」

変な声出ちゃった。
旭さんの瞼が上がって、俺を見つけて柔らかく微笑む。

「おはよ」
「…おはようございます」
「身体辛くない?」
「……はい」

旭さんが俺を抱き締めて、それからすぅっと深く呼吸をする。

「櫂くん、優しい香りするね」
「そう、ですか?」
「うん、落ち着く」

すんすんとにおいを嗅がれてたら身体が疼き出す。
肌に触れる指や髪の感触、カラダが覚えてる。
見た目に反してすごく激しく抱かれた、気がする。
記憶ないけど。

「すみません、旭さん…あの、俺」

記憶ないって言ったら怒るかな。
でも嘘つくの嫌だし。

「櫂くん、俺と付き合わない?」
「え?」
「元カレなんて忘れさせてあげる」

ちゅ、ちゅと肌にキスを落とされて、ゾクゾクが背筋を駆け上がる。
朝からこんな…。

「…朝?」
「ん?」
「仕事! 今何時!?」

慌てて起き上がって時間を見るとまだ五時。
窓がないから外が明るいか暗いかわからなくて時間の感覚がなんかおかしい。

「もう時間切れ?」
「いえ、まだ大丈夫でした…」

ほっとしてから固まる。
またベッドに戻るべき?
なんか気恥ずかしい。

「櫂くん」
「?」
「おいで」
「あ…」

どきどきする。
記憶はなくても身体はしっかり、この人に抱かれたって覚えている。
そっとベッドに近寄ると、布団の中に引きずり込まれた。

「わ…」
「櫂くん、素直で可愛い」

ぎゅっと抱き締められる。
人肌の温もりが久しぶりで温かくて涙が滲んできた。

「なにか哀しい?」

頬に唇が触れる。
両側の頬にキスをしながら旭さんが聞くので。

「いえ、…あったかくて気持ちいいなって思って」
「そうだね」

唇が重なる。
たぶん昨夜もキスをしたんだろうな。
唇が旭さんのキスを懐かしがってる。
こんなに相手が欲しくなるの、初めてかもしれない。

「旭さん…」
「なに?」
「…俺と、付き合ってください…」

この人の体温、心地好すぎる。
お日様の下にいるみたいに心がぽかぽかする。
ゆりかごに揺られているみたいで、ずっとこの腕の中にいたい。
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