しあわせをあなたと

すずかけあおい

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それから

それから③

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 怜司は莉久を急かさない。もう灯里にも認めてもらって、怜司の部屋への外泊も了承してくれている。それなのに――。
 ひとつのベッドで、怜司の腕の中におさまっている莉久は抱き枕だろうか。怜司は引っ越しのときにセミダブルのベッドを買ったので、若干狭いけれど窮屈ではない。莉久としては窮屈なシングルベッドでくっつくのもよかったと思うのだが、それは秘密だ。
 怜司が男役のタチなら、莉久は受け入れたい。タチとかネコとかより、莉久にとっては相手が怜司であることが一番大事なことだ。

「どうした?」
「起きてたの?」
「起きた」

 寝ぼけた声の怜司が、莉久の額にキスをする。目を閉じると、唇にもキスが落ちてきた。

「なんでもない」

 どうしたと聞かれてはっきり言っていいかわからないし、こうしていられるのも幸せなのもたしかだ。怜司の首もとに頬をすり寄せる。

「莉久は無防備だよな」

 困ったような声に、莉久はあえて無防備を装って怜司に脚を絡めてみた。なんでもない顔をして自然に、と自分に言い聞かせるが、早々に頬が熱くなった。

「怜司さん、いつになったら手を出してくれる?」
「は?」
「……待ってるんだけど」

 もうここまできたらいっそ言ってしまおうと、ついにその言葉を口にした。怜司は驚いた表情で莉久をまじまじと見る。

「莉久は一度も『していい』って言ったことないだろ」
「し、していいなんて言えないよ! いつだっていいに決まってるし」
「言われないとわかんねえよ」

 ため息をつくので、呆れただろうかと顔を見つめる。なにかを含む瞳が莉久をとらえ、唇が重なった。
 唇の隙間から舌が入ってくる。息があがるキスに、怜司の寝間着のシャツを握った。

「そういう誘い方されたら、止まらねえぞ」
「止まらなくていい……」
「前みたいに、莉久がいくだけじゃ終われないからな」
「うん……。あのときみたいに、俺だけじゃ嫌だよ」

 口腔でなめらかに動く舌に翻弄される。キスにくらりとしているあいだに、莉久の寝間着が乱された。シャツの裾から大きな手がもぐり込む。

「ん、ぁ……」

 熱い手のひらが肌を撫で、すみずみまで知り尽くそうと動く。こんなにねっとりと肌をまさぐられたことがなく、恥ずかしくて顔を背けた。

「っあ……」

 首にキスをされ、ぴくりと身体が跳ねる。喉仏のラインを舌でなぞられたら、ひどく甘えた声が出た。ぞくぞくと肌が甘く粟立ち、背筋が震える。
 怜司の手が胸の突起を捕まえた。鈍く疼く感覚に、思わず身体を捩る莉久の突起を指の腹でこねる。

「莉久……まずい」
「な、なに……?」
「……暴走しそう」
「あっ……」

 性急に莉久の服を脱がせた怜司は、薄く色のついた乳暈ごと口に含んだ。指で転がされる以上に身体が疼き、知らず腰が揺れた。
 暴走、の言葉のとおり、怜司の瞳は熱く欲情し、莉久を視線で捕まえて離さない。見られていることが恥ずかしくて腕で顔を隠しても、すぐにその腕をはずされる。火照る身体が暴かれていき、肌を重ねて抱き合った。

「莉久……」

 へその横に口づけた怜司の手が、下着越しに莉久の形を変えたものに触れる。軽く揉まれて腰が跳ねた。

「……見ないで」
「全部見る」
「やだ」

 下着を脱がされ、すでにしとどにしずくを零している昂ぶりが露わになる。怜司の長い指がそれを握り、やんわりと扱いた。


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