きみをください

すずかけあおい

文字の大きさ
9 / 13

きみをください⑨

しおりを挟む
◇◆◇


土曜日は結人さんが来ないランチタイム。
平日と違って混雑しない店でぼんやり昨日の事を思い出す。
結人さんの温もりはとても落ち着くものだった。
心臓は本当に爆発するかと思ったけど。

「そろそろ閉める準備しようか」
「はい」

土曜日は夜の営業はなしで日曜日が休み。
とは言っても土曜日の昼はぽつぽつとしかお客さまが来ないから土曜日の出勤自体、そんなに大変じゃない。
メインのお客さまはやっぱり、平日に来てくださる周辺の会社の方達。

閉店作業を終えて店を出る。
アパートに向かって歩き出そうとして足を止める。
スマホを出してメッセージを送ろうと思ってやっぱりやめる。
うしろを振り返ってみると。

「今、誰に連絡しようとした?」
「……秘密です」

結人さんと並んで歩く。
今日はスーツじゃない。
ちらちら見ていると結人さんが笑う。

「そんな見方しないで、正面から見てもいいよ?」
「……」

恥ずかしい…。

「…スーツじゃないの、初めて見たので」
「そうだね」
「なに着てもかっこいいですね…」
「ありがとう」

なにを言っていいのかわからず外見を褒めてしまう。
でも結人さんは微笑んでくれた。
それからぽつぽつとなんでもない話をしながら歩く。

「そういえば結人さんっていくつなんですか?」
「俺に興味がある?」

結人さんの言葉は色々含んでいるようだけれど、俺は否定せずに頷く。

「三十」
「…二十代だと思ってました」
「啓真はいくつ?」
「二十六です」

そっか……でもそんなに上でもないのか。
俺、結人さんの事、全然知らない。

「啓真は本当に可愛いね」
「えっ!?」
「俺をもっと知りたいって顔してる」
「……」

また顔に出てるのか。
これ、なんとかならないのかな。

「俺が知りたければ、啓真を教えて」
「結人さん、俺を知りたいんですか?」
「知りたいよ。好きな人の事はなんでも知りたい」
「!!」

好きな人…。

顔がぶわぁっと熱くなって、心臓がどっくんどっくん言い始める。
そんな俺の顔を覗き込んで、結人さんは優しく微笑む。

「啓真が大好きだよ」
「……」

どっくんどっくんどっくんどっくん…

心臓の動きが大変な事になってる。
結人さんを見上げて口を開く。

「お」
「残念。時間切れだ」

見るとアパートの前。
結人さんがそのまま帰って行こうとするので咄嗟に手を掴んでしまう。

「啓真?」
「……今日も、おにぎり食べませんか?」
「……」

こんな風に誰かを部屋に誘うなんてした事ないから、どう言うのがいいかわからないから思い付いたままを言う。
結人さんは俺が掴んだ手をぎゅっと握り返して微笑む。

「じゃあお邪魔しようかな」
「…はい」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

【完結・短編】game

七瀬おむ
BL
仕事に忙殺される社会人がゲーム実況で救われる話。 美形×平凡/ヤンデレ感あり/社会人 <あらすじ> 社会人の高井 直樹(たかい なおき)は、仕事に忙殺され、疲れ切った日々を過ごしていた。そんなとき、ハイスペックイケメンの友人である篠原 大和(しのはら やまと)に2人組のゲーム実況者として一緒にやらないかと誘われる。直樹は仕事のかたわら、ゲーム実況を大和と共にやっていくことに楽しさを見出していくが……。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

処理中です...