遣らずの雨

すずかけあおい

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遣らずの雨①

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たつみ!!」
「………」
「無視しないでよ!」
「だって耀よう…」
「今日もかっこいいね、好きだよ巽」
「………」
「ああ! 置いてかないで!!」

相変わらずつれないんだから。

大好きな巽はかっこよくて背が高くてスタイルもよくて頭もよくて…いいとこばっかり。
俺にはないとこばっかりだから眩しくて眩しくて憧れて憧れて、高三にして初めて同じクラスになれて嬉しくて仕方ないんだからちょっとくらい浮かれたっていいじゃん。

入学式で見つけてからずっと好きだった。
だから周りが引くくらい好き好きって言い続けた。
巽も最初は引いてたけど、それでも言い続けたら、

『しょうがねえな』

って。
優しい!
そういうとこも好き。

もっと近付きたい。
もっとそばにいたい。

「巽、昨日告白されたでしょ? どうだった?」
「…なんで知ってんの」
「だって相手の子が俺に『私、新井あらいくんに告白するから!』って宣言してたから」
「……」

可愛い子だったから、巽がもし付き合う気になっちゃったらどうしようって嫌などきどきが収まらなかった。

「…耀って俺のなに?」
「え?」
「恋人だっけ」
「……違う」

そうなれたら嬉しいけど。

「男が好きなら、ちゃんと耀を好きになってくれる人を好きになったほうがいいって何度も言ってるよな」
「……うん」

それで、その度に『そうじゃない』って思ってる。
男が好きなんじゃなくて、巽が好きなんだ。
巽が俺を選ばないのはわかってるけど、でも好きなものは好きで、気持ちが抑えられない。
それをわかってくれって言うのは俺の我儘だから口を噤む。

「悪い。意地悪な事言った」
「…ううん」
「遅刻する。行こ」

巽は本当に優しい。
その優しさが時に苦しくて、だけど好きだからやっぱり嬉しくて。
前を歩く巽の背中を見つめながらあとをついて行く。
本当は隣を歩きたいけど、それは俺じゃない。
万にひとつの可能性があって俺がそうなれるならどんなに幸せだろう。

巽が選んで、隣に立つ人はどんな人かな。
その時がきたら祝福できるように、笑っておめでとうを言えるように、今は巽のそばにいさせて。

「耀、急ごう」

ぽつぽつと雨が降り出し、とぼとぼうしろを歩く俺の腕を巽が掴むので心臓が高鳴って、顔が熱くなってくる。

「いつまでも落ち込んだ顔すんな」
「うん…。ごめん」

巽の優しさに触れる度に無性に泣きたくなってしまうのは、それだけ巽が好きだから。
いつか巽は巽だけの人を見つけるのをわかっている。


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