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夢じゃない③
翌日、出勤のために部屋を出ると航希と会った。
「お、おはよう」
「…おはよう、泰斗」
暗い表情の航希…どうしたんだろう。駅まで一緒に歩くけれど、昨日のような会話はない。ちら、と隣の航希を盗み見る。スーツ姿がかっこいい。当然だけど、もう大人の男の人なんだ。…それなのに俺の心は子どものまま。情けない。
「……泰斗」
「な、なに?」
「………彼女、どんな子?」
「!」
彼女に会わせてって言われるかな…。いもしない彼女にどうやって会わせるんだ。
「やっぱり可愛い?」
「えーっと…」
「その子のこと、…好き?」
「あの…」
「…そっか」
ひとりで納得している航希。ますますどんよりしている…なんだろう。俺もなんとなく視線が革靴のつま先に落ちる。
やっぱり、もうやり直しはもうできないのかもしれない。幼馴染以上になんてなれないんだ。…俺が好きなのは航希なのに。どんどん気持ちが落ち込んでくる。
「……泰斗」
名前を呼ばれて顔を上げると、航希の泣き笑いのような笑顔。
「結婚するときは、式には呼んでよ」
心が引き攣る。
でも、もしかして“幼馴染のやり直し”はできている…?
…これでいいんじゃないか。幼馴染以上になんてなれないんだから、そんなの欲張りすぎなんだから……。
なにも答えられず、曖昧に口元を歪めた。
航希が泣いている。なんで泣いてるの?
手を伸ばしても届かない。近寄りたくてもそばに行けない。苦しい思いで航希の名を呼び続ける。
「―――航希!」
はっと目を覚ます。
…夢…?
視界がゆらゆら揺れていて、俺も泣いていることに気が付く。
「っ…」
苦しい苦しい苦しい。
やっぱり“幼馴染のやり直し”じゃ嫌だ。
でも、どうしたらいいかわからない。素直になれない自分が悔しい。
毎晩、航希が泣いている夢を見る。その度に俺は泣きながら目を覚ます。
顔を合わせるとなんでもないように話ができているけれど苦しい。間違いなく“幼馴染のやり直し”はできている。
俺の心はなにを求めているんだろう。自分の心を探る。
幼馴染か、それ以上か。
それ以上を求めるならば、なにをするべきか。
―――素直になりたい。
冷たい水で顔を洗って決意する。鏡に映る俺は少しすっきりした顔をしていた。
でも、航希の気持ちがわからない。航希は俺をどう思っているんだろう。航希にとって俺ってなんだろう。
それに、また素直になれずにケンカになるかもしれない。不安が襲ってくる。
それでも前に進む努力をしたい。たとえ振られても、なにもしないで諦めるよりいい、はず。
洗面室から出ると、スマホの通知音が聞こえた。アプリを確認すると母からのメッセージ。
『航希くん、そっち行った?』
意味がわからず、『どういうこと?』と返信すると、すぐに母から電話がかかってきた。
『航希くん、行かなかったの?』
「だからどういうこと?」
母が言うには、航希が俺のひとり暮らし先の住所を聞きにきたとのこと。ケンカ別れをしたことは母に言っていないけれど、なんとなくわかっていたようだ。
「そんなの聞いてない」
『あ、黙っててって航希くんに言われてた』
「ええ…?」
いい加減すぎる…。
でも、航希だから教えたんだろう。誰彼構わずぺらぺら喋る人ではないから。
そうか…あのときの取ってつけたような驚きはそういうことか。引っ越しの挨拶にきたときの航希の違和感を思い出す。同時に胸が高鳴った。
『ちゃんと仲直りしなさいね。泰斗は航希くん大好きなんだから』
「…うん」
そう、俺は航希が大好き。
再会は偶然じゃなかったってことでいいんだろうか。
期待していい? それとも、深い意味はないのかな? これで偶然ってことある?
…それでもいい、当たって砕けよう。
メッセージアプリで航希に連絡をとろうかと思ったけれど、どうしてもすぐに顔が見たかったから隣に行った。インターホンを押すと航希が相変わらず暗い表情で出てきた。
「おはよう、どうしたの?」
「朝からごめん。今夜、時間作ってくれない?」
「? いいけど」
「じゃあ、よろしく」
ちゃんと話をしよう。砕けよう。
その日はめちゃくちゃ頑張って仕事をした。でも、少し不安になって手が止まる。拒絶されるかもしれない。…いや、それでもいい。
今夜は素直な俺で航希に会いたい。
「お、おはよう」
「…おはよう、泰斗」
暗い表情の航希…どうしたんだろう。駅まで一緒に歩くけれど、昨日のような会話はない。ちら、と隣の航希を盗み見る。スーツ姿がかっこいい。当然だけど、もう大人の男の人なんだ。…それなのに俺の心は子どものまま。情けない。
「……泰斗」
「な、なに?」
「………彼女、どんな子?」
「!」
彼女に会わせてって言われるかな…。いもしない彼女にどうやって会わせるんだ。
「やっぱり可愛い?」
「えーっと…」
「その子のこと、…好き?」
「あの…」
「…そっか」
ひとりで納得している航希。ますますどんよりしている…なんだろう。俺もなんとなく視線が革靴のつま先に落ちる。
やっぱり、もうやり直しはもうできないのかもしれない。幼馴染以上になんてなれないんだ。…俺が好きなのは航希なのに。どんどん気持ちが落ち込んでくる。
「……泰斗」
名前を呼ばれて顔を上げると、航希の泣き笑いのような笑顔。
「結婚するときは、式には呼んでよ」
心が引き攣る。
でも、もしかして“幼馴染のやり直し”はできている…?
…これでいいんじゃないか。幼馴染以上になんてなれないんだから、そんなの欲張りすぎなんだから……。
なにも答えられず、曖昧に口元を歪めた。
航希が泣いている。なんで泣いてるの?
手を伸ばしても届かない。近寄りたくてもそばに行けない。苦しい思いで航希の名を呼び続ける。
「―――航希!」
はっと目を覚ます。
…夢…?
視界がゆらゆら揺れていて、俺も泣いていることに気が付く。
「っ…」
苦しい苦しい苦しい。
やっぱり“幼馴染のやり直し”じゃ嫌だ。
でも、どうしたらいいかわからない。素直になれない自分が悔しい。
毎晩、航希が泣いている夢を見る。その度に俺は泣きながら目を覚ます。
顔を合わせるとなんでもないように話ができているけれど苦しい。間違いなく“幼馴染のやり直し”はできている。
俺の心はなにを求めているんだろう。自分の心を探る。
幼馴染か、それ以上か。
それ以上を求めるならば、なにをするべきか。
―――素直になりたい。
冷たい水で顔を洗って決意する。鏡に映る俺は少しすっきりした顔をしていた。
でも、航希の気持ちがわからない。航希は俺をどう思っているんだろう。航希にとって俺ってなんだろう。
それに、また素直になれずにケンカになるかもしれない。不安が襲ってくる。
それでも前に進む努力をしたい。たとえ振られても、なにもしないで諦めるよりいい、はず。
洗面室から出ると、スマホの通知音が聞こえた。アプリを確認すると母からのメッセージ。
『航希くん、そっち行った?』
意味がわからず、『どういうこと?』と返信すると、すぐに母から電話がかかってきた。
『航希くん、行かなかったの?』
「だからどういうこと?」
母が言うには、航希が俺のひとり暮らし先の住所を聞きにきたとのこと。ケンカ別れをしたことは母に言っていないけれど、なんとなくわかっていたようだ。
「そんなの聞いてない」
『あ、黙っててって航希くんに言われてた』
「ええ…?」
いい加減すぎる…。
でも、航希だから教えたんだろう。誰彼構わずぺらぺら喋る人ではないから。
そうか…あのときの取ってつけたような驚きはそういうことか。引っ越しの挨拶にきたときの航希の違和感を思い出す。同時に胸が高鳴った。
『ちゃんと仲直りしなさいね。泰斗は航希くん大好きなんだから』
「…うん」
そう、俺は航希が大好き。
再会は偶然じゃなかったってことでいいんだろうか。
期待していい? それとも、深い意味はないのかな? これで偶然ってことある?
…それでもいい、当たって砕けよう。
メッセージアプリで航希に連絡をとろうかと思ったけれど、どうしてもすぐに顔が見たかったから隣に行った。インターホンを押すと航希が相変わらず暗い表情で出てきた。
「おはよう、どうしたの?」
「朝からごめん。今夜、時間作ってくれない?」
「? いいけど」
「じゃあ、よろしく」
ちゃんと話をしよう。砕けよう。
その日はめちゃくちゃ頑張って仕事をした。でも、少し不安になって手が止まる。拒絶されるかもしれない。…いや、それでもいい。
今夜は素直な俺で航希に会いたい。
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