キミのすべては俺のもの

すずかけあおい

文字の大きさ
277 / 283

(68)番外編・桜の下を ◇侑大視点◇②

しおりを挟む
◇◆◇

要の香りがする。
優しい香り…大好き。
髪を撫でてくれる手も大好き。
優しい手つきにまた眠くなってくる。
もうちょっと目を閉じてて、そしたら……柔らかいものが唇に触れた。
まだ目を閉じていたいけど瞼を上げる。
要の笑顔。

「おはよ、侑大」
「おはよ」
「起きる?」
「ん」

起きるけど、まず要に抱きついて要を補給。
まだしばらく忙しいし。

「侑大、今日はちょっと早めに出ない?」
「なんで?」
「電車の中から見えた、駅の向こう側の川沿いの桜が綺麗だったから、侑大と見たいなって思って」
「行く!」

要とお花見散歩!
嬉しい!!

「起きよ。早く行こう」
「まだ今からじゃ早過ぎるよ」

俺が身体を起こして要の腕を引っ張ると、要は身体を起こしながらおかしそうに笑う。
朝食を作りながらもう出勤したい気分。
早く出かけたい。
要と桜の下を歩きたい。
去年はお花見、どうしたっけ…。

「…?」

思い出せない。

「??」
「どうした?」

要に聞かれて、去年の桜の時期の事が思い出せないと言うと。

「うん。あの頃侑大、ずっと複雑そうな顔してたからね」
「複雑?」

なんで?

「ほなみが引っ越してきて時間経ってなかったからじゃない?」
「ああ…」
「でも三人でほなみが買ってきた桜のスイーツは食べたよ」
「そう…覚えてない」

そんなに色々考えてたんだ。
うん、確かになんか複雑だったのは覚えてるような…。

「へー、覚えてないんだ。ダイちゃん冷たーい」
「!!」

突然ナミの部屋のドアが開いて本人が現れた。

「え? なんで?」
「今日休みだから」
「ほなみも朝ご飯食べる?」
「うん。でもまだ二度寝するからあとで」

ナミの店も忙しいって言ってたから疲れてるんだろうな。
二度寝するって言ったのにナミは椅子に座ってキッチンに並ぶ俺と要をじっと見ている。

「カナちゃんとダイちゃんってほんと仲いいね」
「うん」

だって要の事、大好きだし。
でもこんな風に言うって事は…。

佐羽さわさんと喧嘩した?」
「そうなの!」

やっぱり。

「今度はなんで?」

要が聞くと、ナミは大きな溜め息を吐く。

「それがさぁ……」

結局ナミは二度寝せず、そのまま三人で朝食を食べた。

◇◆◇

朝食後、のんびりしてから早い昼食をとってそわそわしてたら、要がそろそろ支度しようかって言うのでパパッと準備した。

「いってきまーす」
「…ダイちゃん、仕事行くのに随分嬉しそうだね」
「要とお花見散歩してから行くから」
「へー」
「じゃあほなみ、いってきます」
「いってらっしゃーい」

珍しくナミに見送られて部屋を出る。
ぽかぽかあったかい。
のんびり歩いて駅の向こう側へ。
川沿いに桜の樹がたくさん並んでいて、あまりの美しさに溜め息が出てしまう。

「綺麗だね」
「うん…」

要の言葉に頷くしかできない。
同じように桜の下を散歩している人達がいるけど、平日の昼間だからそんなに多くない。
優しい風の吹く中、満開の桜の下を要と歩く。
幸せっていう言葉しか浮かばない。
この綺麗な景色を一緒に見たいって思ってくれた、その相手が俺だっていう事の喜びに胸がいっぱいになる。

「要、ありがと」
「なにが?」
「隣にいてくれて」

要の手を取ってぶんぶん揺らす。
困ったように笑う顔が優しくてどきどきする。

ほんと、幸せ。

のんびり歩いてふたりきりの時間を楽しむ。
会話がなくてもすごく楽しい。
不思議だけど、要の周りの空気に触れているだけで楽しいから言葉がなくても大丈夫。
もちろん会話も必要だけど、でも無理して話さないと気まずいって事がない。
大切な人。
なにより大切にしたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

俺だけ愛してよ!!!!!

ひな
BL
長内 春馬(24) 村上 大輔(23) 俺と春馬は付き合っている。 春馬は社内の人気者であり、俺の憧れだ。 幼馴染という関係だったが、ひょんなことから俺と春馬は付き合いだした。 春馬のことが好きすぎて、いつもヘラって春馬に迷惑をかけてしまう。 嫉妬でおかしくなりそう。 春馬のことが大好き。 離れないで欲しい。 そんな想いが膨らんで、俺は春馬を嫉妬させてみようとした。

人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

白妙スイ@1/9新刊発売
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。 ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。 秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。 戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。 ●八架 深都(はちか みと) 20歳、大学2年生 好奇心旺盛な性格 ●秋木 晴士(あきぎ せいじ) 26歳、小説家 重度の不眠症らしいが……? ※性的描写が含まれます 完結いたしました!

処理中です...