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(68)番外編・桜の下を ◇侑大視点◇②
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◇◆◇
要の香りがする。
優しい香り…大好き。
髪を撫でてくれる手も大好き。
優しい手つきにまた眠くなってくる。
もうちょっと目を閉じてて、そしたら……柔らかいものが唇に触れた。
まだ目を閉じていたいけど瞼を上げる。
要の笑顔。
「おはよ、侑大」
「おはよ」
「起きる?」
「ん」
起きるけど、まず要に抱きついて要を補給。
まだしばらく忙しいし。
「侑大、今日はちょっと早めに出ない?」
「なんで?」
「電車の中から見えた、駅の向こう側の川沿いの桜が綺麗だったから、侑大と見たいなって思って」
「行く!」
要とお花見散歩!
嬉しい!!
「起きよ。早く行こう」
「まだ今からじゃ早過ぎるよ」
俺が身体を起こして要の腕を引っ張ると、要は身体を起こしながらおかしそうに笑う。
朝食を作りながらもう出勤したい気分。
早く出かけたい。
要と桜の下を歩きたい。
去年はお花見、どうしたっけ…。
「…?」
思い出せない。
「??」
「どうした?」
要に聞かれて、去年の桜の時期の事が思い出せないと言うと。
「うん。あの頃侑大、ずっと複雑そうな顔してたからね」
「複雑?」
なんで?
「ほなみが引っ越してきて時間経ってなかったからじゃない?」
「ああ…」
「でも三人でほなみが買ってきた桜のスイーツは食べたよ」
「そう…覚えてない」
そんなに色々考えてたんだ。
うん、確かになんか複雑だったのは覚えてるような…。
「へー、覚えてないんだ。ダイちゃん冷たーい」
「!!」
突然ナミの部屋のドアが開いて本人が現れた。
「え? なんで?」
「今日休みだから」
「ほなみも朝ご飯食べる?」
「うん。でもまだ二度寝するからあとで」
ナミの店も忙しいって言ってたから疲れてるんだろうな。
二度寝するって言ったのにナミは椅子に座ってキッチンに並ぶ俺と要をじっと見ている。
「カナちゃんとダイちゃんってほんと仲いいね」
「うん」
だって要の事、大好きだし。
でもこんな風に言うって事は…。
「佐羽さんと喧嘩した?」
「そうなの!」
やっぱり。
「今度はなんで?」
要が聞くと、ナミは大きな溜め息を吐く。
「それがさぁ……」
結局ナミは二度寝せず、そのまま三人で朝食を食べた。
◇◆◇
朝食後、のんびりしてから早い昼食をとってそわそわしてたら、要がそろそろ支度しようかって言うのでパパッと準備した。
「いってきまーす」
「…ダイちゃん、仕事行くのに随分嬉しそうだね」
「要とお花見散歩してから行くから」
「へー」
「じゃあほなみ、いってきます」
「いってらっしゃーい」
珍しくナミに見送られて部屋を出る。
ぽかぽかあったかい。
のんびり歩いて駅の向こう側へ。
川沿いに桜の樹がたくさん並んでいて、あまりの美しさに溜め息が出てしまう。
「綺麗だね」
「うん…」
要の言葉に頷くしかできない。
同じように桜の下を散歩している人達がいるけど、平日の昼間だからそんなに多くない。
優しい風の吹く中、満開の桜の下を要と歩く。
幸せっていう言葉しか浮かばない。
この綺麗な景色を一緒に見たいって思ってくれた、その相手が俺だっていう事の喜びに胸がいっぱいになる。
「要、ありがと」
「なにが?」
「隣にいてくれて」
要の手を取ってぶんぶん揺らす。
困ったように笑う顔が優しくてどきどきする。
ほんと、幸せ。
のんびり歩いてふたりきりの時間を楽しむ。
会話がなくてもすごく楽しい。
不思議だけど、要の周りの空気に触れているだけで楽しいから言葉がなくても大丈夫。
もちろん会話も必要だけど、でも無理して話さないと気まずいって事がない。
大切な人。
なにより大切にしたい。
要の香りがする。
優しい香り…大好き。
髪を撫でてくれる手も大好き。
優しい手つきにまた眠くなってくる。
もうちょっと目を閉じてて、そしたら……柔らかいものが唇に触れた。
まだ目を閉じていたいけど瞼を上げる。
要の笑顔。
「おはよ、侑大」
「おはよ」
「起きる?」
「ん」
起きるけど、まず要に抱きついて要を補給。
まだしばらく忙しいし。
「侑大、今日はちょっと早めに出ない?」
「なんで?」
「電車の中から見えた、駅の向こう側の川沿いの桜が綺麗だったから、侑大と見たいなって思って」
「行く!」
要とお花見散歩!
嬉しい!!
「起きよ。早く行こう」
「まだ今からじゃ早過ぎるよ」
俺が身体を起こして要の腕を引っ張ると、要は身体を起こしながらおかしそうに笑う。
朝食を作りながらもう出勤したい気分。
早く出かけたい。
要と桜の下を歩きたい。
去年はお花見、どうしたっけ…。
「…?」
思い出せない。
「??」
「どうした?」
要に聞かれて、去年の桜の時期の事が思い出せないと言うと。
「うん。あの頃侑大、ずっと複雑そうな顔してたからね」
「複雑?」
なんで?
「ほなみが引っ越してきて時間経ってなかったからじゃない?」
「ああ…」
「でも三人でほなみが買ってきた桜のスイーツは食べたよ」
「そう…覚えてない」
そんなに色々考えてたんだ。
うん、確かになんか複雑だったのは覚えてるような…。
「へー、覚えてないんだ。ダイちゃん冷たーい」
「!!」
突然ナミの部屋のドアが開いて本人が現れた。
「え? なんで?」
「今日休みだから」
「ほなみも朝ご飯食べる?」
「うん。でもまだ二度寝するからあとで」
ナミの店も忙しいって言ってたから疲れてるんだろうな。
二度寝するって言ったのにナミは椅子に座ってキッチンに並ぶ俺と要をじっと見ている。
「カナちゃんとダイちゃんってほんと仲いいね」
「うん」
だって要の事、大好きだし。
でもこんな風に言うって事は…。
「佐羽さんと喧嘩した?」
「そうなの!」
やっぱり。
「今度はなんで?」
要が聞くと、ナミは大きな溜め息を吐く。
「それがさぁ……」
結局ナミは二度寝せず、そのまま三人で朝食を食べた。
◇◆◇
朝食後、のんびりしてから早い昼食をとってそわそわしてたら、要がそろそろ支度しようかって言うのでパパッと準備した。
「いってきまーす」
「…ダイちゃん、仕事行くのに随分嬉しそうだね」
「要とお花見散歩してから行くから」
「へー」
「じゃあほなみ、いってきます」
「いってらっしゃーい」
珍しくナミに見送られて部屋を出る。
ぽかぽかあったかい。
のんびり歩いて駅の向こう側へ。
川沿いに桜の樹がたくさん並んでいて、あまりの美しさに溜め息が出てしまう。
「綺麗だね」
「うん…」
要の言葉に頷くしかできない。
同じように桜の下を散歩している人達がいるけど、平日の昼間だからそんなに多くない。
優しい風の吹く中、満開の桜の下を要と歩く。
幸せっていう言葉しか浮かばない。
この綺麗な景色を一緒に見たいって思ってくれた、その相手が俺だっていう事の喜びに胸がいっぱいになる。
「要、ありがと」
「なにが?」
「隣にいてくれて」
要の手を取ってぶんぶん揺らす。
困ったように笑う顔が優しくてどきどきする。
ほんと、幸せ。
のんびり歩いてふたりきりの時間を楽しむ。
会話がなくてもすごく楽しい。
不思議だけど、要の周りの空気に触れているだけで楽しいから言葉がなくても大丈夫。
もちろん会話も必要だけど、でも無理して話さないと気まずいって事がない。
大切な人。
なにより大切にしたい。
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