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となりの笑顔⑰
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「宇野、覚悟決まってるのか」
「覚悟はわからないけど、僕は空井が好き」
正解かわからない。でもいろいろと言葉を並べるより、これが一番はっきりとしていて、しっくりくる。空井が好き。だから求めたいし求められたい。無理強いなんてしないから、空井がだめだと言えば宇野こそ我慢する。
空井の手を握ると、整った顔がぴくりと強張ったのがわかる。心臓はどきどきしているが、なるべく平静を装った。
「空井が好き。だから大丈夫」
「……わかった。俺も覚悟決める」
ようやく笑ってくれた空井が、宇野の手を引く。玄関に入ってドアが閉まったら、わかっていても緊張してきた。この家には、空井と宇野のふたりきり。ご両親は月曜日の夜まで帰ってこない。
「先に部屋行ってて。飲みもの持ってくる」
「う、うん。わかった」
静かに階段をあがり、空井の部屋に入る。部屋の中はきちんと整理されていて、来客用のものと思われる布団がひと組、ベッドの下にたたんで置いてある。ベッドと布団を見るといっそうどきどきしてくるから、反対方向を向いて座った。
(空井とふたりきり……)
力の入ってしまう肩を上下させ、ほぐすために動かす。深呼吸をしたら少し落ちついてきた。
「おまたせ。外寒かったから、あったかいの持ってきた」
「ありがとう」
ふたつのマグカップにココアが入っている。口をつけると甘みが口内に広がった。ほっとする味だ。
「隣座っていいか?」
「……うん。どうぞ」
確認する必要なんてないのに、きちんと聞いてくるところが律儀だなと思う。ふたりきりを意識しているのは、宇野だけではないということだ。
なにを話したらいいかわからず、ふたりで無言のままココアを飲む。ココアを飲み終わったら話しかけようと決めて、静かにココアを飲んだ。あとふた口ほどのココアを飲み干す勇気が出ない。でも、いつまでも無言でいたくない。
「あのさ」
「っ……」
突然話しかけられて、おおげさに驚いてしまった。身体が跳ねた宇野に、空井も驚いている。
「……緊張してるの、俺もだから」
「うん……わかってる」
微妙な距離感で隣り合って座る。動けず固まっていたら、隣の空井が噴き出した。
「なに?」
「いや、お兄さんたちのことがはっきりしたら、絡まれなくなったなと思って」
「あ、うん。ずっとありがとう」
空井にはずっと守ってもらったから、感謝と申しわけなさがある。本人としては好きでやっていることだと言うけれど、それでも大変だったと思う。なんとか解決して平和な毎日になったのに、もっとどきどきする。空井との関係が変わって、宇野にとってはこれまでとまったく違う日々になった。
「公開告白にはびっくりしたけど」
宇野も噴き出すと、空井は決まりが悪そうに目を泳がせる。
「どうしても宇野を悪く言われたくなかったし、俺の気持ちもちゃんとわからせたかったんだよ」
「うん、ありがとう」
たぶん空井には空井の計画があって、あんなふうに告白するつもりはなかったのだ。でも、宇野を守るためにみんなの前で口にしてくれた。優しい人だとつくづく思う。
まだ長いとは言えない、空井との時間を思い出す。そうしたらバレンタインのことも思い出してしまい、もやもやがよみがえってしまった。
「どうした? 眉間にしわ寄ってる」
「……ちょっと」
「ん?」
空井だって今さら言われても困るし、バレンタインはとっくにすぎた。それでも宇野の心に引っかかっている。
「空井、コンビニ行かない?」
「なんで急に?」
「ちょっと……買いたいものがあって」
不思議そうにしながらも、空井はつき合ってくれた。宇野がお菓子コーナーでチョコを見ているあいだ、空井は別のところを見に行っていた。雰囲気だけでも、とピンク色のいちごチョコをひとつ取り、レジに向かう。空井もなにかを買ったようで、ポケットにしまいながら振り向いた。
「なに買ったの?」
「宇野はチョコ買うのか?」
「う、うん」
本当に今さらだ。でもずっと引っかかったままでいたくない。
空井の家に戻って、部屋でチョコを差し出した。当然空井は首をひねっている。チョコの理由を説明すると、空井は笑いながら受け取ってくれた。
「宇野からチョコもらえるなんて、嬉しい」
「女子からもたくさんもらってたけどね」
つい拗ねたことを言うと、空井は笑いを止めて真剣な顔になった。
「嫉妬したか?」
「…………すごくした」
「素直に言えて偉いな」
額にキスをくれて、目を閉じる。頬にも唇が触れ、じらすように唇以外の場所にキスが落ちる。唇にもキスがほしくて少し顎をあげると、ちゅっと音を立てて唇が重なった。
「覚悟はわからないけど、僕は空井が好き」
正解かわからない。でもいろいろと言葉を並べるより、これが一番はっきりとしていて、しっくりくる。空井が好き。だから求めたいし求められたい。無理強いなんてしないから、空井がだめだと言えば宇野こそ我慢する。
空井の手を握ると、整った顔がぴくりと強張ったのがわかる。心臓はどきどきしているが、なるべく平静を装った。
「空井が好き。だから大丈夫」
「……わかった。俺も覚悟決める」
ようやく笑ってくれた空井が、宇野の手を引く。玄関に入ってドアが閉まったら、わかっていても緊張してきた。この家には、空井と宇野のふたりきり。ご両親は月曜日の夜まで帰ってこない。
「先に部屋行ってて。飲みもの持ってくる」
「う、うん。わかった」
静かに階段をあがり、空井の部屋に入る。部屋の中はきちんと整理されていて、来客用のものと思われる布団がひと組、ベッドの下にたたんで置いてある。ベッドと布団を見るといっそうどきどきしてくるから、反対方向を向いて座った。
(空井とふたりきり……)
力の入ってしまう肩を上下させ、ほぐすために動かす。深呼吸をしたら少し落ちついてきた。
「おまたせ。外寒かったから、あったかいの持ってきた」
「ありがとう」
ふたつのマグカップにココアが入っている。口をつけると甘みが口内に広がった。ほっとする味だ。
「隣座っていいか?」
「……うん。どうぞ」
確認する必要なんてないのに、きちんと聞いてくるところが律儀だなと思う。ふたりきりを意識しているのは、宇野だけではないということだ。
なにを話したらいいかわからず、ふたりで無言のままココアを飲む。ココアを飲み終わったら話しかけようと決めて、静かにココアを飲んだ。あとふた口ほどのココアを飲み干す勇気が出ない。でも、いつまでも無言でいたくない。
「あのさ」
「っ……」
突然話しかけられて、おおげさに驚いてしまった。身体が跳ねた宇野に、空井も驚いている。
「……緊張してるの、俺もだから」
「うん……わかってる」
微妙な距離感で隣り合って座る。動けず固まっていたら、隣の空井が噴き出した。
「なに?」
「いや、お兄さんたちのことがはっきりしたら、絡まれなくなったなと思って」
「あ、うん。ずっとありがとう」
空井にはずっと守ってもらったから、感謝と申しわけなさがある。本人としては好きでやっていることだと言うけれど、それでも大変だったと思う。なんとか解決して平和な毎日になったのに、もっとどきどきする。空井との関係が変わって、宇野にとってはこれまでとまったく違う日々になった。
「公開告白にはびっくりしたけど」
宇野も噴き出すと、空井は決まりが悪そうに目を泳がせる。
「どうしても宇野を悪く言われたくなかったし、俺の気持ちもちゃんとわからせたかったんだよ」
「うん、ありがとう」
たぶん空井には空井の計画があって、あんなふうに告白するつもりはなかったのだ。でも、宇野を守るためにみんなの前で口にしてくれた。優しい人だとつくづく思う。
まだ長いとは言えない、空井との時間を思い出す。そうしたらバレンタインのことも思い出してしまい、もやもやがよみがえってしまった。
「どうした? 眉間にしわ寄ってる」
「……ちょっと」
「ん?」
空井だって今さら言われても困るし、バレンタインはとっくにすぎた。それでも宇野の心に引っかかっている。
「空井、コンビニ行かない?」
「なんで急に?」
「ちょっと……買いたいものがあって」
不思議そうにしながらも、空井はつき合ってくれた。宇野がお菓子コーナーでチョコを見ているあいだ、空井は別のところを見に行っていた。雰囲気だけでも、とピンク色のいちごチョコをひとつ取り、レジに向かう。空井もなにかを買ったようで、ポケットにしまいながら振り向いた。
「なに買ったの?」
「宇野はチョコ買うのか?」
「う、うん」
本当に今さらだ。でもずっと引っかかったままでいたくない。
空井の家に戻って、部屋でチョコを差し出した。当然空井は首をひねっている。チョコの理由を説明すると、空井は笑いながら受け取ってくれた。
「宇野からチョコもらえるなんて、嬉しい」
「女子からもたくさんもらってたけどね」
つい拗ねたことを言うと、空井は笑いを止めて真剣な顔になった。
「嫉妬したか?」
「…………すごくした」
「素直に言えて偉いな」
額にキスをくれて、目を閉じる。頬にも唇が触れ、じらすように唇以外の場所にキスが落ちる。唇にもキスがほしくて少し顎をあげると、ちゅっと音を立てて唇が重なった。
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