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甘いこと①
食べるのが綺麗だな、と思っていた。
「山喜、ここ空いてる?」
「え? あ、はい」
「じゃあ座らせてもらうね」
そう言って関さんが俺の向かいに座った。
空いてるところいっぱいあるのに、なんでそこ?
広い社員食堂。
まだ昼休みが始まってすぐだからそんなに混んでない。
あと十五分もしたら席は選べないだろうけど、今はまだ余裕があるのになぜか部署の先輩の関さんは俺の向かいに座った。
「山喜っていつもひとりだね。ひとりが好き?」
「いえ、そういうわけじゃ…」
「じゃあこれからは俺が一緒にいようかな」
「は?」
いただきます、とBランチを食べ始める関さん。
思わずじっと見てしまう。
食べてるだけなのにすごく色気があるって言うか、なんか違う。
俺も合わせてAランチを食べるけれど、すごく緊張する。
関さんがかっこいいのも緊張する要因だし、じっと見られてるのは更なる緊張を生む。
前から、食べるのが綺麗な人だなと思っていたので、その関さんに食べるところを見られるのはどきどきする。
残さないとかそういう綺麗さじゃなくて、上品と言うのか、ひとつひとつの動きが綺麗。
俺も、作法がひどいということはないと思うけど、でも綺麗に食べられているかなと姿勢を正す。
「関さん、お隣いいですか?」
早速女性社員が隣を狙ってきた。
モテる人も大変だな。
「だめ」
「「え?」」
女性社員と俺の声が重なってしまって、ちょっと睨まれた。
「俺の隣ということで座りたいのであればだめ。意図せず隣になってしまうなら仕方ないけど」
仕方ないとか言った。
関さんってこういうとこある。
ていうか関さん、俺の向かいに座る時には意図して座ってきたじゃん。
それはいいのか。
「失礼しました…」
女性は去って行った。
「いいんですか?」
「俺、ずっと山喜と色々話したいって思ってたんだ」
「……」
聞いてない?
「山喜はなにが好き?」
「なにって…」
「俺は山喜が好き」
「? ありがとうございます?」
迷惑ばかりかけてるから、好かれてるとは思わなかった。
俺の答えに関さんが満足そうに笑む。
「それは、山喜も俺が好きってことでいいんだよね?」
「えっと、尊敬してます」
「つまり好きってことだよね?」
「えーと…まあ、はい」
「ありがとう。これからよろしく」
「?」
なにがよろしく?
あ、仕事のことかな。
でも、関さんは新しいプロジェクトのメンバーに入っててそっちにかかりきりになるんじゃ…?
よくわからないけれど、こういうときは。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
これでなんとかなるだろう。
関さんにはこれからもお世話になるし、いい関係を築いていたい。
「そんなにぼんやりしてると、雁字搦めにしちゃうけど?」
「はい?」
「意味がわからないならいい」
「?」
ぼんやり?
ぼんやりしてたかな…ちょっとしてたかも。
昼休みでも気を抜くなってことかもしれない。
「気を付けます」
ランチについているプリンの蓋を開けると、関さんが俺のトレーに自分のBランチについてるゼリーをのせる。
「さっき、プリンかゼリーか悩んでただろ。あげる」
「いいんですか?」
「俺、好んでは食べないから」
「ありがとうございます!」
俺は甘いものが大好きなので嬉しい。
お礼の声も大きくなってしまう。
あれ?
「なんで俺が悩んでたこと知ってるんですか?」
「山喜がひとりで『プリン…ゼリー、プリン…』ってぶつぶつ言ってるの聞いてたから」
「聞いてたんですか!?」
「うん。聞いてた。それでプリンのAランチを選んでたから俺はゼリーのBランチにしたんだよ」
「? なんで…?」
「山喜にゼリーをあげたかったからに決まってるだろ」
優しく微笑む関さん。
これはモテる。
「すみません、ありがたくいただきます」
「いっぱい甘えて? 俺、恋人は甘やかしたいタイプだから」
「はい?」
なに?
今、なんと…?
「山喜はきっとすごく甘えるタイプなんだろうなって思うんだけど、どう?」
「どうって…」
恋人いない歴が年齢と同じ俺に聞いてるんだろうか。
どう答えればいいんだろう。
「それとも、恋人に素直に甘えられないほう? それも可愛いな」
「えっと…?」
「大丈夫。俺、全部受け止めるよ」
「……?」
わけがわからない。
慣れてない俺をからかってるのかな。
俺はこういうとき、どう答えるのがいいのかがまずわからない。
「あの、関さん」
「なに?」
「俺、慣れてないので…」
「!」
「…恥ずかしいんですが、ちょっとよくわからなくて」
関さんがこれ以上ないくらいの笑顔を浮かべる。
「大丈夫。俺に任せればいいよ。じゃ、先戻るな」
「はい…」
任せればって言われても、そもそもなにを任せればいいのかがわからない。
疑問符だらけになってる俺を置いて関さんは行ってしまった。
「山喜、ここ空いてる?」
「え? あ、はい」
「じゃあ座らせてもらうね」
そう言って関さんが俺の向かいに座った。
空いてるところいっぱいあるのに、なんでそこ?
広い社員食堂。
まだ昼休みが始まってすぐだからそんなに混んでない。
あと十五分もしたら席は選べないだろうけど、今はまだ余裕があるのになぜか部署の先輩の関さんは俺の向かいに座った。
「山喜っていつもひとりだね。ひとりが好き?」
「いえ、そういうわけじゃ…」
「じゃあこれからは俺が一緒にいようかな」
「は?」
いただきます、とBランチを食べ始める関さん。
思わずじっと見てしまう。
食べてるだけなのにすごく色気があるって言うか、なんか違う。
俺も合わせてAランチを食べるけれど、すごく緊張する。
関さんがかっこいいのも緊張する要因だし、じっと見られてるのは更なる緊張を生む。
前から、食べるのが綺麗な人だなと思っていたので、その関さんに食べるところを見られるのはどきどきする。
残さないとかそういう綺麗さじゃなくて、上品と言うのか、ひとつひとつの動きが綺麗。
俺も、作法がひどいということはないと思うけど、でも綺麗に食べられているかなと姿勢を正す。
「関さん、お隣いいですか?」
早速女性社員が隣を狙ってきた。
モテる人も大変だな。
「だめ」
「「え?」」
女性社員と俺の声が重なってしまって、ちょっと睨まれた。
「俺の隣ということで座りたいのであればだめ。意図せず隣になってしまうなら仕方ないけど」
仕方ないとか言った。
関さんってこういうとこある。
ていうか関さん、俺の向かいに座る時には意図して座ってきたじゃん。
それはいいのか。
「失礼しました…」
女性は去って行った。
「いいんですか?」
「俺、ずっと山喜と色々話したいって思ってたんだ」
「……」
聞いてない?
「山喜はなにが好き?」
「なにって…」
「俺は山喜が好き」
「? ありがとうございます?」
迷惑ばかりかけてるから、好かれてるとは思わなかった。
俺の答えに関さんが満足そうに笑む。
「それは、山喜も俺が好きってことでいいんだよね?」
「えっと、尊敬してます」
「つまり好きってことだよね?」
「えーと…まあ、はい」
「ありがとう。これからよろしく」
「?」
なにがよろしく?
あ、仕事のことかな。
でも、関さんは新しいプロジェクトのメンバーに入っててそっちにかかりきりになるんじゃ…?
よくわからないけれど、こういうときは。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
これでなんとかなるだろう。
関さんにはこれからもお世話になるし、いい関係を築いていたい。
「そんなにぼんやりしてると、雁字搦めにしちゃうけど?」
「はい?」
「意味がわからないならいい」
「?」
ぼんやり?
ぼんやりしてたかな…ちょっとしてたかも。
昼休みでも気を抜くなってことかもしれない。
「気を付けます」
ランチについているプリンの蓋を開けると、関さんが俺のトレーに自分のBランチについてるゼリーをのせる。
「さっき、プリンかゼリーか悩んでただろ。あげる」
「いいんですか?」
「俺、好んでは食べないから」
「ありがとうございます!」
俺は甘いものが大好きなので嬉しい。
お礼の声も大きくなってしまう。
あれ?
「なんで俺が悩んでたこと知ってるんですか?」
「山喜がひとりで『プリン…ゼリー、プリン…』ってぶつぶつ言ってるの聞いてたから」
「聞いてたんですか!?」
「うん。聞いてた。それでプリンのAランチを選んでたから俺はゼリーのBランチにしたんだよ」
「? なんで…?」
「山喜にゼリーをあげたかったからに決まってるだろ」
優しく微笑む関さん。
これはモテる。
「すみません、ありがたくいただきます」
「いっぱい甘えて? 俺、恋人は甘やかしたいタイプだから」
「はい?」
なに?
今、なんと…?
「山喜はきっとすごく甘えるタイプなんだろうなって思うんだけど、どう?」
「どうって…」
恋人いない歴が年齢と同じ俺に聞いてるんだろうか。
どう答えればいいんだろう。
「それとも、恋人に素直に甘えられないほう? それも可愛いな」
「えっと…?」
「大丈夫。俺、全部受け止めるよ」
「……?」
わけがわからない。
慣れてない俺をからかってるのかな。
俺はこういうとき、どう答えるのがいいのかがまずわからない。
「あの、関さん」
「なに?」
「俺、慣れてないので…」
「!」
「…恥ずかしいんですが、ちょっとよくわからなくて」
関さんがこれ以上ないくらいの笑顔を浮かべる。
「大丈夫。俺に任せればいいよ。じゃ、先戻るな」
「はい…」
任せればって言われても、そもそもなにを任せればいいのかがわからない。
疑問符だらけになってる俺を置いて関さんは行ってしまった。
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