甘いこと

すずかけあおい

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甘いこと②

なんか…見られてる?
パソコンに向かっているけど、視線を感じる。
振り返ると、資料を取りにデスクに戻って来たらしい関さんが、なぜか俺を見ている。

「どうかしましたか?」
「可愛いなって思って見てただけ」
「!?」

資料を手にしてご機嫌で会議室に戻って行く関さんの背中を見送る。
ゼリーをくれたり嘘っぽい褒め方されたり…なんかすごく、どきどきしてしまう。
人から優しくされるのに慣れてないからか、もうそれだけでぽーっとなる。
俺が可愛いなんて嘘に決まってるのに、それでも心はそわっとする。

関さん、好きかも…。

単純なのはわかってるけど、優しくされるとすぐ好きになってしまう心の軽い俺。
男から好かれるってどうなんだ。
しかも俺みたいな地味な奴。
俺は好かれるならどんな人でも嬉しいけど、人によってはやっぱり拒絶反応を示す人だっているはず。
でも一度ぽーっとなった心はふわふわしたまま。
関さんの視線を感じる度にどきっとしてしまうのだった。


◇◆◇


「山喜、一緒に帰ろう」
「はっ、い…」
「? 山喜?」

声が大きくなりそうで慌てて抑える。
一緒に帰ろうなんて、まるで恋人みたいじゃないか。
しかもさりげなく手を握られた!
これはもしかして脈あり?

「そんな嬉しそうな顔してると知らないよ?」
「えっ、なんですかそれ」

知らないって、どうなるんだ。
どきどきし始めてしまう。
いやいや、期待なんてしちゃいけない。
これは叶わぬ片想い…。

「山喜、今度うちに遊びにおいで」
「!」

叶わぬ、片想い……。
…なのに、期待しちゃうんだけど!

「あの…関さんって食事綺麗に食べますよね」
「え?」
「あ…あっ!? 別にいつも見てたわけじゃ…!」

見えてしまっただけで!
いや、見てたんだけど。
それは単にすごいなぁっていう意味の眼差しで…そうだよな?
自分がわからない。
もしかして俺、前から関さんが気になってた…?

「特別綺麗に食べてる自覚はないんだけどな。山喜の手って小さいね」
「は、はい…そうなんです。昔から手が小さいってよく言われて…」
「そんなとこまで可愛いんだ?」

関さん…それ女性に言ったら、みんなコロッといきますよ…。
俺も男だけどコロッといってます。

「あの、関さんはなにが好きですか? ゼリーのお礼になにかしたくて」
「俺は山喜が好きって言っただろ」
「えっと…じゃあ食べ物だと…?」
「山喜」

え、俺って食べ物なの?
関さんの認識だと俺って食われるの?
これ、どう返そう…。

「山喜、予定変更。このままうちおいで」
「いいんですか?」
「明日明後日休みなんだから、もっと一緒にいたい」

すごい優しい笑顔。
だめだ…落ちそう。
いや、真っ逆さまに落ちてる。
…もう抜け出せない。

「……行きます」

それ以外の答えなんてない。


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