甘いこと

すずかけあおい

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甘いこと③

「脱がせてあげる」

関さんの部屋に入ると、すぐに謎なことを言われた。
脱がせるって、なにを脱がせるんだ。
靴?

「えっと…?」
「おいで」

先に靴を脱いだ関さんが俺を抱き上げる…!
俺、まだ靴脱いでないのに!
リビングまでそのまま連れて行かれて、椅子に下ろされる。
足元にしゃがんだ関さんが、片方ずつ革靴を脱がせてくれる。
床に置かれる靴を見ていたらスラックスの裾から手が滑り込んできて脹脛を撫でられ、ぞくっとしてしまう。

「関さん…?」

妖しい色を瞳にたたえた関さんが立ち上がり、隣の部屋に行ってすぐ戻ってくるけど、手に持っているものに目が釘付けになる。
手錠っていうか手枷…?
革っぽい素材でできてる。

「いい子にしててくれるよな?」
「え? は?」

ジャケットを脱がされ、ネクタイを外され…。
俺が呆然としていると関さんは手際よく服を脱がせていき、スラックスを下ろされたところでようやく我に返って慌てる。

「関さん!? な、なにして…」
「下着だけならいいか…」
「は? ええっ!?」

関さんもスーツを脱ぎ始める。
なにが始まるんだ。
いい身体してるな…ってそんなこと考えてる場合じゃなくて。
同じく下着だけになった関さんが、手枷の片方を自分の左手首にさっと着けて俺の右手を取る。
右手首に手枷がはめられる。

「? 関さん…?」
「ふたりでひとつ」

微笑む関さん。

「ずっとこうしたかった。山喜…」
「あ…」

キス…。
どうしよう…関さんとキスしてる…。
そのまま、寝室と思われる、ベッドの置いてある部屋に連れて行かれた。
ちらりと背後を見ると、リビングの床にふたり分の衣服と俺の革靴が落ちている。

「あの、関さん…これは…」
「山喜が可愛いから捕まえたくなったんだよ」

ベッドに寝かされ、俺の上に関さんが覆いかぶさる。
下着だけの男がベッドにふたり……え、マジで?

「待って、関さん…」
「山喜、好きだよ」

またキス。

「逃がさないから、わかってくれると嬉しいな」
「あぅ…あ」

肌をなぞられ、ぞくぞくする。
関さんの愛撫に身体も心も昂っていく。
肩に噛み付かれてびくんと身体が跳ねた。

「山喜に俺の痕、いっぱい残すから」

なにをされるかわからないのに、怖くない。
関さんだから?
好きだから?

「関さんは、俺が好きなんですか…?」
「“兼人かねと”って呼んで。素春もとはる…」

俺の名前、覚えててくれたんだ…。
肌にキスが落ちる。

「あの、兼人さんは、俺が好きなんですか…?」
「そうだよ。昼のときからずっと言ってるだろ? ようやく言えたんだ。もう我慢しない」
「昼…」

社食で一緒になったとき?

『山喜はなにが好き? 俺は山喜が好き』

あれってそういう意味だったのか…。

「ずっと好きだった…好きだから捕まえる」
「ずっと…」
「気持ち悪い? 怖い? …でも、絶対逃がさないよ」
「あっ…」

鎖骨を噛まれる。
きゅっと歯に力をこめられると、鋭い感覚に身体が震えた。
兼人さんの髪に指をさしこんで受け入れると、顔を上げた兼人さんが優しく微笑む。

「素春は俺を受け止めてくれると思ってた」
「兼人さん…」
「好きだよ、素春…全部俺のものにする」

肌を貪りながら、兼人さんが俺の名前を繰り返し呼ぶ。
どんどん脳が蕩けていって、なにもわからなくなる。

「素春…素春……」

繰り返される甘い響きに身体が動かない。
ひとつになって、揺さぶられて、限界まで昇らされて。
手枷で繋がった手を握られて、指を絡めると深いキスが与えられる。
底なし沼にはまっていくような、ずるずると引き込まれる感じに心地好さを覚える。
肌と肌が触れ合う度に心が跳ねて、蜜が零れる。
言葉にならないほどの官能が俺を満たし、溺れさせていく。

「好きだ…素春」

ぞくりとする低い声に、兼人さんの背に回した左手で爪を立てた。


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