俺達の関係

すずかけあおい

文字の大きさ
1 / 3

俺達の関係①

しおりを挟む
俺達の関係ってなんだろう。

紘一こういち、電気消してよ」
「いいじゃん。郁也いくやはもう寝るの?」
「…激しくされたから疲れた」

タオルケットを身体にかけて寝る体勢に入る。紘一はベッドに座ったまま本を読んでいる。こっちは色々されて腰が痛いのに。

「だからもう寝る」
「ん。おやすみ」

ちらりと紘一の顔を見てから瞼を下ろす。事後でも涼しい顔をしている。整った顔で、なんにもしてないよって顔しているのが憎たらしい。
パッと照明が落ちた。

「俺も寝る。おやすみ、郁也」

タオルケットの中にもぞもぞと紘一が入り込んでくる。

「…寝るの?」
「うん。もうキリのいいとこまで読んだから」
「そう…」

俺を気にしてってわけじゃない…と思う。
いつもそうだ。紘一の中心は紘一。
じゃあ、俺はなんなんだろう。

紘一とは高校一年から大学三年の今に至るまで一緒にいる。なんとなくそばにいて、なんとなくキスをするようになって、なんとなく身体を重ねるようになった。
大学に上がるときに家賃とか光熱費が楽になりそうだからとルームシェアを始めて一緒に住んでいる。友達以上ではあるけれど、恋人ではない。
はっきり恋人とくくられていないだけで、紘一の意識の中ではそう思ってくれているのかな、と考えたこともあるけれど、そうでもなさそうだ。

自分のしたいように、やりたいように。
まるで猫のように気ままな紘一。そんな紘一が好きなんだから、しょうがない。
ときどき、気まぐれにちょっとだけ見せてくれる優しさに、惹かれてしまったんだ。





紘一との共通の友人、洋治ようじ秀樹ひできに誘われて居酒屋で飲み。ふたりは高校が一緒だった。大学は離れてしまったけれど、気が合う仲間で時折顔を合わせている。

「実は、さ」

ハイボールを一口飲んだ洋治が緊張した面持ちで口を開く。なんだ。

「俺達、付き合い始めたんだ…っていうか、一緒に暮らし始めた」
「………」

秀樹の肩を抱き寄せる洋治。前に会ったとき、ちょっといい雰囲気だったけど、そうか、付き合い始めたのか…。

「なんで付き合い始めて同時に一緒に暮らし始めたんだよ」

つい聞いてしまう。気になるから。

「いやー…秀樹んとこ居心地よすぎてそのまま転がり込んだ。だから一緒に暮らし始めて付き合い始めたが正しい」
「そう、それが正しい」

ちょっと恥ずかしそうな洋治に対して呆れ顔の秀樹。洋治は前から秀樹のところに泊まってばかりいると秀樹から愚痴メッセージが来ていたっけ。それがそうなったか。

「おめでとう。お似合いだよ」

紘一が笑顔で祝福する。
あれ?

「だよな。俺、秀樹大好きだもん」
「おい」
「………」

洋治が惚気る。秀樹は照れる。俺はすっきりしない。
俺達はどうなの、紘一。友達のことは祝福するのに、俺達のことは考えないの? なんだかもやもや。

そのあとはずっとすっきりせず、酒の味もつまみの味もわからなかった。会話が右から左へ、左から右へ素通りしていく。気が付けばお開きになっていた。
紘一とふたりで帰宅。もやもやをどこに持って行っていいのかわからず、口を開けない。でも紘一は、俺が不機嫌なのかとか、気にすることもない。先にシャワーを浴びて部屋に戻ろうとするところを捕まえる。

「なに」
「……」
「部屋戻っていい?」

俺がこんな気持ちになっている理由を知りもしない。感じ取ろうとしもしない。様子がおかしいとも思わない。

「……俺達のこと、話し合いたい」
「は?」
「俺達ってなんなの?」

思い切って聞くと、紘一は特に驚くでもなく、表情を変えずに首を傾げた。

「なんなのって?」
「恋人でもないのにキスしてセックスして。でも友達でもなくて」

紘一の瞳がすっと冷める。

「郁也、なにが言いたいの?」

怯んで、やっぱりなんでもない、と言ってしまいそうになるのをぐっと堪える。そう言ってしまったらまた元に戻るだけ。ここまで言ったら最後まで言いたい。

「俺は、紘一が好きだから恋人になりたい」
「……」
「紘一は俺が好きじゃない? なんとも思ってない?」
「……今更恋人になる必要性がわからない。別にいいじゃん、このままで」

冷たい言葉を残して紘一は部屋に入ってしまった。パタンとドアの閉まる音。
虚しくて悲しくて笑いがこみ上げてきた。それでも紘一が好きな自分がばかみたいで、悔しい。

「……好きなのは俺だけなんだ…」

泣くのも悔しい。静かに静かに、音をたてないように自宅を出た。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『倉津先輩』

すずかけあおい
BL
熱しやすく冷めやすいと有名な倉津先輩を密かに好きな悠莉。 ある日、その倉津先輩に告白されて、一時の夢でもいいと悠莉は頷く。

恋愛対象

すずかけあおい
BL
俺は周助が好き。でも周助が好きなのは俺じゃない。 攻めに片想いする受けの話です。ハッピーエンドです。 〔攻め〕周助(しゅうすけ) 〔受け〕理津(りつ)

優しい恋に酔いながら

すずかけあおい
BL
一途な攻め×浅はかでいたい受けです。 「誰でもいいから抱かれてみたい」 達哉の言葉に、藤亜は怒って――。 〔攻め〕藤亜(とうあ)20歳 〔受け〕達哉(たつや)20歳 藤の花言葉:「優しさ」「歓迎」「決して離れない」「恋に酔う」「忠実な」

【BL】無償の愛と愛を知らない僕。

ありま氷炎
BL
何かしないと、人は僕を愛してくれない。 それが嫌で、僕は家を飛び出した。 僕を拾ってくれた人は、何も言わず家に置いてくれた。 両親が迎えにきて、仕方なく家に帰った。 それから十数年後、僕は彼と再会した。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

好きだからキスしたい

すずかけあおい
BL
「たまには実晴からキスしてみろ」攻めからキスを求められた受けの話です。 〔攻め〕玲央 〔受け〕実晴

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...