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◇◆◇◆◇
藍流と流風から離れて一週間。
食欲がなくて、夜も全然眠れない。
日に日にしおれていく自分を鏡で見る。
でもきっとこれでいい。
いつかはこうなる日が来たんだから、手遅れになる前に離れてよかったんだ。
「……」
もうとっくに手遅れじゃん。
日に日になにもする気がなくなってく。
力が入らないまま学校に向かう。
スマホのメッセージももう見ていない。
駅で藍流と流風が待っていない。
それに慣れないといけないのに、まだふたりを探してしまう。
……はぁ。
もうずっと、溜め息と仲良し。
満員電車に乗り込んだ。
◇◆◇◆◇
「もう一週間。既読もつかない」
「うん…」
「流風、なにか思い当たる事ある?」
「ない…。急に様子がおかしくなった」
「誰かになにか嫌な事とか言われたのかな」
「そんな嫌な事言う人いないと思うけど」
藍流と流風は顔を見合わせる。
「奏、どうしたんだろう…」
流風が小さく言う。
藍流は暫し考え込んでから。
「俺達の事、嫌いになったのかな!?」
「なんで!? 俺達なにかした!?」
ふたりでわたわたして、同時にスマホをチェックするけれど既読はつかず、返信もない。
「…奏は優しいから、今までずっと我慢してただけだったらどうしよう」
藍流の言った言葉に流風が顔面蒼白になる。
「え? じゃあ奏、俺達から離れて行っちゃうの?」
流風の言葉に今度は藍流が真っ青になる。
「そんなのやだ!」
「やだ!」
藍流と流風は頭を抱えて悶え唸った。
◇◆◇◆◇
なんかふらふらする。
あんまり食べてないし寝られていないからかも。
学校の最寄り駅で満員電車から降りた途端目の前が真っ白になった。
「「奏!」」
遠くで俺を呼ぶ声が聞こえた――…。
…………
………
……
…
「…?」
目を開けると俺はベッドに寝ていた。
「…保健室…?」
学校の保健室のようだ。
記憶をたどってみるけれど、電車を降りたところでそれは途切れていて、どうやってここまで来られたのか思い出せない。
身体を起こしたらカーテンが開いて養護教諭の渡部先生が顔を覗かせた。
「あ、気が付いた?」
「はい…えっと、俺…?」
「駅で倒れたのを矢橋くんがここまで運んでくれたんだよ。救急車呼ぼうかと思ったけど、大騒ぎになると浅羽くんがあとで気にするかもしれないからって」
「矢橋くんってどっちの…?」
「両方。矢橋兄弟」
「…そう、ですか」
俺なんかをまだ心配してくれてるんだ。
絶対傷付けたのに。
…そうだよな、藍流も流風も優しいから…。
「浅羽くんって、矢橋兄弟に求愛されてOKした、あの浅羽くんでしょ?」
「え? あ…はい」
「矢橋兄弟、すごい心配してたよ。授業があるから教室に行かせたけど」
先生達も俺達の事、知ってるんだ…。
でも、俺がふたりから逃げ出した事は知らないみたい。
誰にも言ってないから当たり前か。
「なにかあった?」
「え?」
「『悩んでます』って顔してる」
「……」
「第三者の意見、聞いてみてもいいかもよ?」
どうしよう…でも、確かに先生の言う通り、ひとりで悩んでたって仕方ないかもしれない。
「…藍流と流風の愛情が怖くて」
「怖い?」
「あまりに俺を愛してくれるから、それを失った時に自分がすごく傷付くのが怖くて、俺、ふたりから逃げちゃって…」
「うん」
「ふたりを傷付けちゃって…でもふたりは優しくて…っ」
涙がぼろぼろ零れ始める。
「とりあえず、矢橋兄弟とちゃんと話をしてみたら?」
「…話…」
「怖いとかそういうのも全部含めて、矢橋くん達は浅羽くんの気持ちを知りたいって思ってるんじゃないかな」
「……」
「人の心の中の事は、本人が話してくれないとわからないからね」
そうだ…ちゃんと話をしよう。
俺の心の中の事、ふたりになにも言わずにいたけど、それじゃいつまで経ってもふたりを傷付けるだけだ。
自分が傷付きたくないからって、ふたりを傷付けちゃいけない。
でも…今更俺の話なんて聞いてくれるかな…。
「大丈夫」
「え?」
「矢橋くん達は浅羽くんの話を聞きたいって思ってるよ」
「なんでわかったんですか…? 俺の考えてる事」
「なんとなくね。そんな顔してた」
「顔…」
話、聞いてくれるかな…。
藍流と流風から離れて一週間。
食欲がなくて、夜も全然眠れない。
日に日にしおれていく自分を鏡で見る。
でもきっとこれでいい。
いつかはこうなる日が来たんだから、手遅れになる前に離れてよかったんだ。
「……」
もうとっくに手遅れじゃん。
日に日になにもする気がなくなってく。
力が入らないまま学校に向かう。
スマホのメッセージももう見ていない。
駅で藍流と流風が待っていない。
それに慣れないといけないのに、まだふたりを探してしまう。
……はぁ。
もうずっと、溜め息と仲良し。
満員電車に乗り込んだ。
◇◆◇◆◇
「もう一週間。既読もつかない」
「うん…」
「流風、なにか思い当たる事ある?」
「ない…。急に様子がおかしくなった」
「誰かになにか嫌な事とか言われたのかな」
「そんな嫌な事言う人いないと思うけど」
藍流と流風は顔を見合わせる。
「奏、どうしたんだろう…」
流風が小さく言う。
藍流は暫し考え込んでから。
「俺達の事、嫌いになったのかな!?」
「なんで!? 俺達なにかした!?」
ふたりでわたわたして、同時にスマホをチェックするけれど既読はつかず、返信もない。
「…奏は優しいから、今までずっと我慢してただけだったらどうしよう」
藍流の言った言葉に流風が顔面蒼白になる。
「え? じゃあ奏、俺達から離れて行っちゃうの?」
流風の言葉に今度は藍流が真っ青になる。
「そんなのやだ!」
「やだ!」
藍流と流風は頭を抱えて悶え唸った。
◇◆◇◆◇
なんかふらふらする。
あんまり食べてないし寝られていないからかも。
学校の最寄り駅で満員電車から降りた途端目の前が真っ白になった。
「「奏!」」
遠くで俺を呼ぶ声が聞こえた――…。
…………
………
……
…
「…?」
目を開けると俺はベッドに寝ていた。
「…保健室…?」
学校の保健室のようだ。
記憶をたどってみるけれど、電車を降りたところでそれは途切れていて、どうやってここまで来られたのか思い出せない。
身体を起こしたらカーテンが開いて養護教諭の渡部先生が顔を覗かせた。
「あ、気が付いた?」
「はい…えっと、俺…?」
「駅で倒れたのを矢橋くんがここまで運んでくれたんだよ。救急車呼ぼうかと思ったけど、大騒ぎになると浅羽くんがあとで気にするかもしれないからって」
「矢橋くんってどっちの…?」
「両方。矢橋兄弟」
「…そう、ですか」
俺なんかをまだ心配してくれてるんだ。
絶対傷付けたのに。
…そうだよな、藍流も流風も優しいから…。
「浅羽くんって、矢橋兄弟に求愛されてOKした、あの浅羽くんでしょ?」
「え? あ…はい」
「矢橋兄弟、すごい心配してたよ。授業があるから教室に行かせたけど」
先生達も俺達の事、知ってるんだ…。
でも、俺がふたりから逃げ出した事は知らないみたい。
誰にも言ってないから当たり前か。
「なにかあった?」
「え?」
「『悩んでます』って顔してる」
「……」
「第三者の意見、聞いてみてもいいかもよ?」
どうしよう…でも、確かに先生の言う通り、ひとりで悩んでたって仕方ないかもしれない。
「…藍流と流風の愛情が怖くて」
「怖い?」
「あまりに俺を愛してくれるから、それを失った時に自分がすごく傷付くのが怖くて、俺、ふたりから逃げちゃって…」
「うん」
「ふたりを傷付けちゃって…でもふたりは優しくて…っ」
涙がぼろぼろ零れ始める。
「とりあえず、矢橋兄弟とちゃんと話をしてみたら?」
「…話…」
「怖いとかそういうのも全部含めて、矢橋くん達は浅羽くんの気持ちを知りたいって思ってるんじゃないかな」
「……」
「人の心の中の事は、本人が話してくれないとわからないからね」
そうだ…ちゃんと話をしよう。
俺の心の中の事、ふたりになにも言わずにいたけど、それじゃいつまで経ってもふたりを傷付けるだけだ。
自分が傷付きたくないからって、ふたりを傷付けちゃいけない。
でも…今更俺の話なんて聞いてくれるかな…。
「大丈夫」
「え?」
「矢橋くん達は浅羽くんの話を聞きたいって思ってるよ」
「なんでわかったんですか…? 俺の考えてる事」
「なんとなくね。そんな顔してた」
「顔…」
話、聞いてくれるかな…。
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