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#9
#9 ②
◇◆◇◆◇
「んん…」
眠たい。
いっぱい食べたからかも。
「奏がおねむになってる」
「可愛いなぁ、もう」
藍流と流風の膝枕で横になってうとうとする。
ふたりの手料理のあとに膝枕なんて、すごい贅沢。
藍流が俺の頬をつついて流風が俺の唇に触る。
「やっぱりほっぺたがぷにぷになのが可愛いなぁ」
「そう? 唇がふわふわなほうが可愛いよ」
「え?」
「え?」
「…?」
ふたりがなんか言ってる。
うとうとしながら頬をつつかれ、唇を触られたままでいる。
「あのさぁ、流風」
「なに?」
「このほっぺたのよさがわからない?」
「藍流こそ、奏の唇のよさがわからないの?」
言い合いしてる…?
でも眠い。
「けんか、しないで…」
藍流と流風の頬に手を伸ばす。
そうしたら険しかったように見えたふたりの顔が一気に緩んだ。
「そうだね」
「ごめんね」
ほっとしたらそのまま眠ってしまった。
喧嘩はだめ…。
……………
…………
………
……
…
「……ん」
瞼をゆっくり上げると藍流の部屋が目に入った。
「…?」
ベッドじゃない。
しっかりした枕は膝枕だ。
見上げるとなんだか暗い顔をした藍流と流風が。
「…どうしたの?」
「「………」」
起き上がってふたりの頬に手を伸ばす。
「あ、俺が寝ちゃってつまらなかった?」
ふるふるとふたりは首を横に振る。
じゃあなんだ。
「俺、重かったから足が痺れた? ごめん」
また首を横に振る藍流と流風。
だったらなんだろう。
「どうしたの?」
ふたりの手をきゅっと握って聞くと。
「…奏の前で喧嘩しちゃった」
「奏は俺達が喧嘩するの嫌って言ってたのに…」
「ああ…」
藍流と流風がしゅんと言う。
喧嘩…言い合いくらいだった気がするけど。
うとうとしてたからあんまりよく覚えてない。
「大丈夫。確かに喧嘩は嫌だけど、そんな事で嫌いになったりしないから」
「…ほんとに?」
「絶対?」
「うん」
藍流も流風も自信なさげに聞くので、俺は頷く。
するとふたりはほっと表情を和らげて俺を抱き締めた。
「奏、ごめんね」
「もう喧嘩しないから」
「ちゃんと仲直りしてくれるなら喧嘩してもいいよ。俺だって結構短気だから親とすぐ喧嘩になるし…」
あ、すごい余計な事喋っちゃった。
俺のほうこそ嫌われそう。
「奏って短気なの?」
「…うん」
藍流が聞くので、頷く。
言わなきゃよかった。
ふたりを慰めるつもりだったのに墓穴掘った…。
落ち込む俺を、藍流と流風はキラキラした目で見つめる。
「じゃあ怒る奏をなだめるのが俺達の仕事だね」
「一生懸命頑張るよ」
流風も藍流もすごく嬉しそう。
俺はへこんでるって言うのに。
「将来はやっぱり尻に敷かれるのかなぁ」
「どうしよう…どきどきするな? 流風」
「うん。早く奏と暮らしたい」
なんでそんな話になるんだろう。
と思ってたら。
「そういえば奏は学年末テストの時にいきなり怒って自分で」
「わあああ!!!」
流風の言葉を叫んで遮る。
なんでそういう事を思い出すんだ!
俺も思い出してしまって顔が燃えそうに熱くなる。
あの時の事は本当にもう…なんて言うか……うん。
「とにかく! 俺だって喧嘩くらいするんだからふたりもそんなに気にしない事!」
恥ずかしさをごまかすためにちょっと大きめの声でそう言うと、藍流と流風は声を揃えて『はーい!』と元気よく返事をした。
十分仲いいじゃん…。
「ねえ、奏」
「ねえねえねえ」
「な、なに?」
急に藍流と流風がすり寄ってくる。
俺はちょっと後ずさる。
なんか嫌な予感。
「あれ、また見たいなぁ?」
「あれ?」
藍流が『あれ』と言う。
嫌な予感が増す。
「うん。あれ」
流風も『あれ』。
「…俺、まだ眠いかも」
寝よう。
わからないふりをしてそのまま寝ちゃおう。
もそもそとクッションを枕にして横になる。
「かーわいい、奏」
「恥ずかしがってる。冗談だよ」
藍流と流風が俺を抱きかかえて、また膝枕の体勢にしてくれる。
「…ほんとに冗談?」
ふたりを見上げて聞くと。
「奏は思い出すと恥ずかしいんでしょ?」
「…うん」
藍流に聞かれて頷く。
もうすでにちょっと顔が熱い。
だってあれは本当にヤケって言うか、めちゃくちゃな気持ちだったし、それにふたりを振り回しちゃった申し訳なさもあるし…。
「だから俺達の大切な思い出にしておく」
流風が自分の胸に手を置く。
「……忘れてくれないの?」
「「それは無理」」
「……」
優しいんだか優しくないんだかわからない。
でもやっぱりすごく優しい。
大好き。
「…藍流、流風、キスして」
「うん」
「いっぱいしてあげる」
藍流と流風が順番にキスをくれる。
骨の形までわからなくなってしまうくらい、どんどん甘く溶けていく。
「ん…ぁ」
「奏、寝なくていいの?」
「俺と流風でずっと膝枕しててあげるから安心して寝ていいよ」
優しく髪を撫でる手。
たぶん、一生俺を守ってくれるんだろうな。
「ん…ねない…」
「うん、おやすみ」
「ねないよ…」
「そうだね」
「ん…」
ふわふわふわふわふわ……。
雲の上にいるみたい。
「!」
はっとして瞼を上げる。
また俺は寝ていたようだ。
見ると藍流と流風も俺の髪を撫でた体勢のままで寝ている。
起こさないようにそっと身体の向きを変えてふたりのほうを向いてまっすぐ寝顔を見つめる。
…可愛い。
「…ふふ…」
変な笑いがこみ上げてきて口を押さえる。
起こしたら可哀想だ。
よく寝てる。
張り切って疲れたのかも。
でもこの体勢だと辛くないかな。
かと言って体勢を変えたら起こしてしまう。
そんな事を考えながらふたりの寝顔をじっと見る。
綺麗な顔。
寝顔まで整ってるってずるい。
俺はたぶん間抜けな顔で寝てたんだろうな…それをふたりは喜んで見てたんだろうな…目に浮かぶ。
「…変なの」
藍流と流風ならどんな可愛い子もどんなかっこいい人も選べるはずなのに、誰が見たって平凡な俺なんだから。
「ほんと変…」
「ん…?」
「あ」
小声で言ったつもりが流風を起こしてしまった。
「んん…」
眠たい。
いっぱい食べたからかも。
「奏がおねむになってる」
「可愛いなぁ、もう」
藍流と流風の膝枕で横になってうとうとする。
ふたりの手料理のあとに膝枕なんて、すごい贅沢。
藍流が俺の頬をつついて流風が俺の唇に触る。
「やっぱりほっぺたがぷにぷになのが可愛いなぁ」
「そう? 唇がふわふわなほうが可愛いよ」
「え?」
「え?」
「…?」
ふたりがなんか言ってる。
うとうとしながら頬をつつかれ、唇を触られたままでいる。
「あのさぁ、流風」
「なに?」
「このほっぺたのよさがわからない?」
「藍流こそ、奏の唇のよさがわからないの?」
言い合いしてる…?
でも眠い。
「けんか、しないで…」
藍流と流風の頬に手を伸ばす。
そうしたら険しかったように見えたふたりの顔が一気に緩んだ。
「そうだね」
「ごめんね」
ほっとしたらそのまま眠ってしまった。
喧嘩はだめ…。
……………
…………
………
……
…
「……ん」
瞼をゆっくり上げると藍流の部屋が目に入った。
「…?」
ベッドじゃない。
しっかりした枕は膝枕だ。
見上げるとなんだか暗い顔をした藍流と流風が。
「…どうしたの?」
「「………」」
起き上がってふたりの頬に手を伸ばす。
「あ、俺が寝ちゃってつまらなかった?」
ふるふるとふたりは首を横に振る。
じゃあなんだ。
「俺、重かったから足が痺れた? ごめん」
また首を横に振る藍流と流風。
だったらなんだろう。
「どうしたの?」
ふたりの手をきゅっと握って聞くと。
「…奏の前で喧嘩しちゃった」
「奏は俺達が喧嘩するの嫌って言ってたのに…」
「ああ…」
藍流と流風がしゅんと言う。
喧嘩…言い合いくらいだった気がするけど。
うとうとしてたからあんまりよく覚えてない。
「大丈夫。確かに喧嘩は嫌だけど、そんな事で嫌いになったりしないから」
「…ほんとに?」
「絶対?」
「うん」
藍流も流風も自信なさげに聞くので、俺は頷く。
するとふたりはほっと表情を和らげて俺を抱き締めた。
「奏、ごめんね」
「もう喧嘩しないから」
「ちゃんと仲直りしてくれるなら喧嘩してもいいよ。俺だって結構短気だから親とすぐ喧嘩になるし…」
あ、すごい余計な事喋っちゃった。
俺のほうこそ嫌われそう。
「奏って短気なの?」
「…うん」
藍流が聞くので、頷く。
言わなきゃよかった。
ふたりを慰めるつもりだったのに墓穴掘った…。
落ち込む俺を、藍流と流風はキラキラした目で見つめる。
「じゃあ怒る奏をなだめるのが俺達の仕事だね」
「一生懸命頑張るよ」
流風も藍流もすごく嬉しそう。
俺はへこんでるって言うのに。
「将来はやっぱり尻に敷かれるのかなぁ」
「どうしよう…どきどきするな? 流風」
「うん。早く奏と暮らしたい」
なんでそんな話になるんだろう。
と思ってたら。
「そういえば奏は学年末テストの時にいきなり怒って自分で」
「わあああ!!!」
流風の言葉を叫んで遮る。
なんでそういう事を思い出すんだ!
俺も思い出してしまって顔が燃えそうに熱くなる。
あの時の事は本当にもう…なんて言うか……うん。
「とにかく! 俺だって喧嘩くらいするんだからふたりもそんなに気にしない事!」
恥ずかしさをごまかすためにちょっと大きめの声でそう言うと、藍流と流風は声を揃えて『はーい!』と元気よく返事をした。
十分仲いいじゃん…。
「ねえ、奏」
「ねえねえねえ」
「な、なに?」
急に藍流と流風がすり寄ってくる。
俺はちょっと後ずさる。
なんか嫌な予感。
「あれ、また見たいなぁ?」
「あれ?」
藍流が『あれ』と言う。
嫌な予感が増す。
「うん。あれ」
流風も『あれ』。
「…俺、まだ眠いかも」
寝よう。
わからないふりをしてそのまま寝ちゃおう。
もそもそとクッションを枕にして横になる。
「かーわいい、奏」
「恥ずかしがってる。冗談だよ」
藍流と流風が俺を抱きかかえて、また膝枕の体勢にしてくれる。
「…ほんとに冗談?」
ふたりを見上げて聞くと。
「奏は思い出すと恥ずかしいんでしょ?」
「…うん」
藍流に聞かれて頷く。
もうすでにちょっと顔が熱い。
だってあれは本当にヤケって言うか、めちゃくちゃな気持ちだったし、それにふたりを振り回しちゃった申し訳なさもあるし…。
「だから俺達の大切な思い出にしておく」
流風が自分の胸に手を置く。
「……忘れてくれないの?」
「「それは無理」」
「……」
優しいんだか優しくないんだかわからない。
でもやっぱりすごく優しい。
大好き。
「…藍流、流風、キスして」
「うん」
「いっぱいしてあげる」
藍流と流風が順番にキスをくれる。
骨の形までわからなくなってしまうくらい、どんどん甘く溶けていく。
「ん…ぁ」
「奏、寝なくていいの?」
「俺と流風でずっと膝枕しててあげるから安心して寝ていいよ」
優しく髪を撫でる手。
たぶん、一生俺を守ってくれるんだろうな。
「ん…ねない…」
「うん、おやすみ」
「ねないよ…」
「そうだね」
「ん…」
ふわふわふわふわふわ……。
雲の上にいるみたい。
「!」
はっとして瞼を上げる。
また俺は寝ていたようだ。
見ると藍流と流風も俺の髪を撫でた体勢のままで寝ている。
起こさないようにそっと身体の向きを変えてふたりのほうを向いてまっすぐ寝顔を見つめる。
…可愛い。
「…ふふ…」
変な笑いがこみ上げてきて口を押さえる。
起こしたら可哀想だ。
よく寝てる。
張り切って疲れたのかも。
でもこの体勢だと辛くないかな。
かと言って体勢を変えたら起こしてしまう。
そんな事を考えながらふたりの寝顔をじっと見る。
綺麗な顔。
寝顔まで整ってるってずるい。
俺はたぶん間抜けな顔で寝てたんだろうな…それをふたりは喜んで見てたんだろうな…目に浮かぶ。
「…変なの」
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