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【番外編⑤】Happy Christmas(終)
【番外編】Happy Christmas ④
電車に乗って出発すると、まずは賑やかな町並みが窓の外に広がり、そこから徐々に景色が変わっていった。四回目の乗り換えでオレンジとアイボリーのローカル線に乗ったときには、周囲はすっかり落ちついた景色になっていた。
調べたらこの路線は、春には線路沿いの菜の花や桜を楽しめるようで、その時期にも来てみたいね、と三人で話しながら列車に揺られる。のどかな風景の中を六十分通り抜けて目的地である自然公園の最寄り駅に到着する。
「わあ」
列車を降りるとすでにあたりは暗くなっていて、駅舎がライトアップされていた。それだけでも楽しめるくらいだ。
「綺麗だね」
藍流と流風の手を引っ張って顔を見あげると、ふたりは優しい表情で微笑んでいた。思わず見惚れるほど綺麗で、ぼうっとふたりに目を奪われていたら藍流も流風も目もとを和らげる。
「奏、見る方向違うよ」
「俺と藍流は見慣れてるでしょ」
表情を緩めて奏を見つめるふたりが本当に綺麗で、頬が熱くなった。
「藍流と流風を見慣れるなんてないよ」
いつでも目があうと心臓が跳びはねるし、顔が熱く火照る。つきあいはじめた頃とそれはまったく変わらない。自分ばかりがどきどきしているのではないかと、不公平だとときどき思う。藍流と流風はいつでも余裕げに微笑んでいて、その落ちつきを分けてもらいたい。
「奏は可愛いな」
流風が頬をつついてくるので、わざと頬を膨らませて見せると、ますます面白がられた。
「行こう」
藍流に背を押されて歩き出す。有名なイルミネーションスポットのようなので、同じ方向に向かう人がたくさんいる。手をつなぐカップルが多くて、奏はなんとなく藍流と流風を見る。
「なに?」
藍流が笑みを返してくれるけれど、少し意地悪な目をしているから、たぶん奏の考えがわかっている。
「どうしたの?」
答えない奏に向かいあうように立ち止まった藍流が、顔を覗き込んでくる。流風はにこにこと頬を緩めて藍流と奏を見ている。
「……わかってるくせに」
藍流の手を取って流風の手も握ると、ふたりは「わからないよ」ときゅっと手に力を込めてくれた。充分わかっている。
「意地悪」
でも大好きだ。
駅から少し歩いて目的地に到着する。大きな公園がテーマごとにライトアップされていて、約三十万個の電飾が使われていると説明がある。幻想的な世界は、思わずため息が零れるほど美しい。
エントランスエリアは白い電飾で飾られ、青い電飾で透きとおる湖水と滝を表現したエリア、思わず夢心地になるようなファンタジックでカラフルな電飾が彩るファンタジックエリア、白く輝く光のツリーが荘厳なツリーエリア、深い森をイメージしたエリアと、五つの世界が広がっている。言葉を失うほど綺麗で、壮観という言葉がちっぽけに感じるほどのイルミネーションに、何度も感嘆のため息が漏れた。
「綺麗だね」
青い滝が流れる様を表した電飾にそれ以外の言葉が出てこない。湖が波打つように一面に広がり、吸い込まれそうになる。暗闇に優しく光る電飾が心の中まで灯してくれるようだ。
もっといろいろと感想を言えればいいのだけれど、それさえ陳腐と思うくらいに目の前に広がる景色は壮大だ。自分がとても小さい生きものだと感じてきて、少しの心細さを覚える。イルミネーションが美しすぎて、なぜかせつなくなってきた。
「藍流、流風」
ふたりのコートの袖を引っ張ると、右側と左側から肩を抱かれた。奏の髪に頬ずりした藍流と流風は、「うん」とだけ答えた。すべてが伝わっているのだとわかり、奏はほっとする。
「はぐれないようにね」
流風が手を差し伸ばしてくれるので、そこに手をのせて藍流の手も握る。藍流は珍しくぼんやりとしていたのか、奏が手をつなぐとわずかに肩を揺らして視線をイルミネーションから奏に向けた。
「藍流も感動した?」
「すごくね。なんだか自分の世界が広がった感じだよ」
その感覚はわかる。自分もこの大きな世界の一員なのだということがわかって感慨深い。こんなに壮大なイルミネーションを見たのははじめてだけれど、また見にきたい。
「世界は広いし、すごいものがたくさんあるんだよね」
毎日を生きているとそんなことさえ忘れてしまいそうになる。失っていたものを取り戻せたような心持ちでイルミネーションの中を進む。
「それでも俺たちには奏が一番だけどね」
流風がつないだ手に力を込めてくれる。藍流と流風は本当に優しくて、心が蕩けそうになる。奏にとっても藍流と流風が一番だ。イルミネーションより美しい、愛する人たち。
「ずっとここにいたいくらい」
現実世界だと思えないような幻想的な景色の中にずっといたい。
「それは困るな」
「ここじゃ奏を抱きしめられない」
視線を感じて振り向くと、藍流と流風が奏を見つめている。真っ黒な瞳にイルミネーションが映った姿は見惚れるほどに美しい。ぼうっと見つめ返すと、ふたりは照れたように微笑んだ。同じ表情に見えてわずかに違う。その違いが愛しくて、奏はふたりの腕に手を絡めた。
調べたらこの路線は、春には線路沿いの菜の花や桜を楽しめるようで、その時期にも来てみたいね、と三人で話しながら列車に揺られる。のどかな風景の中を六十分通り抜けて目的地である自然公園の最寄り駅に到着する。
「わあ」
列車を降りるとすでにあたりは暗くなっていて、駅舎がライトアップされていた。それだけでも楽しめるくらいだ。
「綺麗だね」
藍流と流風の手を引っ張って顔を見あげると、ふたりは優しい表情で微笑んでいた。思わず見惚れるほど綺麗で、ぼうっとふたりに目を奪われていたら藍流も流風も目もとを和らげる。
「奏、見る方向違うよ」
「俺と藍流は見慣れてるでしょ」
表情を緩めて奏を見つめるふたりが本当に綺麗で、頬が熱くなった。
「藍流と流風を見慣れるなんてないよ」
いつでも目があうと心臓が跳びはねるし、顔が熱く火照る。つきあいはじめた頃とそれはまったく変わらない。自分ばかりがどきどきしているのではないかと、不公平だとときどき思う。藍流と流風はいつでも余裕げに微笑んでいて、その落ちつきを分けてもらいたい。
「奏は可愛いな」
流風が頬をつついてくるので、わざと頬を膨らませて見せると、ますます面白がられた。
「行こう」
藍流に背を押されて歩き出す。有名なイルミネーションスポットのようなので、同じ方向に向かう人がたくさんいる。手をつなぐカップルが多くて、奏はなんとなく藍流と流風を見る。
「なに?」
藍流が笑みを返してくれるけれど、少し意地悪な目をしているから、たぶん奏の考えがわかっている。
「どうしたの?」
答えない奏に向かいあうように立ち止まった藍流が、顔を覗き込んでくる。流風はにこにこと頬を緩めて藍流と奏を見ている。
「……わかってるくせに」
藍流の手を取って流風の手も握ると、ふたりは「わからないよ」ときゅっと手に力を込めてくれた。充分わかっている。
「意地悪」
でも大好きだ。
駅から少し歩いて目的地に到着する。大きな公園がテーマごとにライトアップされていて、約三十万個の電飾が使われていると説明がある。幻想的な世界は、思わずため息が零れるほど美しい。
エントランスエリアは白い電飾で飾られ、青い電飾で透きとおる湖水と滝を表現したエリア、思わず夢心地になるようなファンタジックでカラフルな電飾が彩るファンタジックエリア、白く輝く光のツリーが荘厳なツリーエリア、深い森をイメージしたエリアと、五つの世界が広がっている。言葉を失うほど綺麗で、壮観という言葉がちっぽけに感じるほどのイルミネーションに、何度も感嘆のため息が漏れた。
「綺麗だね」
青い滝が流れる様を表した電飾にそれ以外の言葉が出てこない。湖が波打つように一面に広がり、吸い込まれそうになる。暗闇に優しく光る電飾が心の中まで灯してくれるようだ。
もっといろいろと感想を言えればいいのだけれど、それさえ陳腐と思うくらいに目の前に広がる景色は壮大だ。自分がとても小さい生きものだと感じてきて、少しの心細さを覚える。イルミネーションが美しすぎて、なぜかせつなくなってきた。
「藍流、流風」
ふたりのコートの袖を引っ張ると、右側と左側から肩を抱かれた。奏の髪に頬ずりした藍流と流風は、「うん」とだけ答えた。すべてが伝わっているのだとわかり、奏はほっとする。
「はぐれないようにね」
流風が手を差し伸ばしてくれるので、そこに手をのせて藍流の手も握る。藍流は珍しくぼんやりとしていたのか、奏が手をつなぐとわずかに肩を揺らして視線をイルミネーションから奏に向けた。
「藍流も感動した?」
「すごくね。なんだか自分の世界が広がった感じだよ」
その感覚はわかる。自分もこの大きな世界の一員なのだということがわかって感慨深い。こんなに壮大なイルミネーションを見たのははじめてだけれど、また見にきたい。
「世界は広いし、すごいものがたくさんあるんだよね」
毎日を生きているとそんなことさえ忘れてしまいそうになる。失っていたものを取り戻せたような心持ちでイルミネーションの中を進む。
「それでも俺たちには奏が一番だけどね」
流風がつないだ手に力を込めてくれる。藍流と流風は本当に優しくて、心が蕩けそうになる。奏にとっても藍流と流風が一番だ。イルミネーションより美しい、愛する人たち。
「ずっとここにいたいくらい」
現実世界だと思えないような幻想的な景色の中にずっといたい。
「それは困るな」
「ここじゃ奏を抱きしめられない」
視線を感じて振り向くと、藍流と流風が奏を見つめている。真っ黒な瞳にイルミネーションが映った姿は見惚れるほどに美しい。ぼうっと見つめ返すと、ふたりは照れたように微笑んだ。同じ表情に見えてわずかに違う。その違いが愛しくて、奏はふたりの腕に手を絡めた。
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