3 / 5
観賞用イケメン。③
しおりを挟む
重たい空気を纏ったままビジホの部屋に戻る。
当然の事ながら武登はいない。
溜め息を吐きかけて呑み込む。
買ってきたコンビニ弁当を食べていたら涙がこみ上げてきた。
伝う涙は堪えられなかった。
時計を見ると武登はまだ仕事中。
仕事中じゃなくたって連絡なんて絶対したくない。
それなのに、武登の勤務先のコールセンターに客のフリをして電話をかけてしまう。
コール音が鳴る。
こんなの、一発で武登が出るわけないし、出たところでプライベートな事なんてなにも話せないし、無駄なのに。
『大変お待たせいたしました。〇〇銀行××専用ダイヤル、担当梶原でございます』
武登だ。
なにも話せない。
だって話した内容は録音されてるってさっきアナウンスがあったし、モニタリングされてる事があるって武登が前に言ってた。
『お客様?』
どうしようもない感情に襲われて、慌てて通話を終了する。
「………」
さっきはなにをされても全く反応しなかったものが昂ってガチガチになっている。
触れてみると先端は武登の声で濡れている。
なんで?
なんで?
扱いてみてもなんか違って、うしろに指を挿れる。
自分でするの、初めてだ。
指を挿れてみてもうまく気持ちよくなれないけど、たった今聞いた武登の声を思い出すとそこがきゅっと締まった。
指を増やしてみて、武登の指を思い出す。
武登の指は俺より長くてすっとしていて、指先まで整っていてかっこよかった。
「あ…ぅ」
全然気持ちよくなれない。
なにが違う?
どうしたらいい?
涙が止まらなくて、全然気持ちよくなくて。
着替えて部屋を飛び出した。
そのまま武登の部屋まで行くけれど、仕事がまだ終わっていないから当然帰っていない。
鍵も返してしまった。
部屋の前で座り込んで武登の帰りを待つ。
寒い。
でもひとりでいるともっと寒い。
昨日このドアを出たばかりなのに、もうこのドアの前に戻って来てる。
ばかみたい。
それでも武登に触れられたい。
武登に『マサ』って呼ばれたい。
『タケ』って呼びたい…。
「……なにやってんの?」
「!」
はっと気が付くと、目の前に武登が立っている。
うとうとしちゃってた。
「タケ…」
「あーあ、こんなに冷えて。風邪ひいたらどうすんの」
座り込む俺の横にしゃがんだ武登が俺の髪をぐしゃぐしゃと撫でる。
会いたかった。
寂しかった。
涙が止まらない。
「おいで」
武登に導かれるままに部屋の中に入った。
当然の事ながら武登はいない。
溜め息を吐きかけて呑み込む。
買ってきたコンビニ弁当を食べていたら涙がこみ上げてきた。
伝う涙は堪えられなかった。
時計を見ると武登はまだ仕事中。
仕事中じゃなくたって連絡なんて絶対したくない。
それなのに、武登の勤務先のコールセンターに客のフリをして電話をかけてしまう。
コール音が鳴る。
こんなの、一発で武登が出るわけないし、出たところでプライベートな事なんてなにも話せないし、無駄なのに。
『大変お待たせいたしました。〇〇銀行××専用ダイヤル、担当梶原でございます』
武登だ。
なにも話せない。
だって話した内容は録音されてるってさっきアナウンスがあったし、モニタリングされてる事があるって武登が前に言ってた。
『お客様?』
どうしようもない感情に襲われて、慌てて通話を終了する。
「………」
さっきはなにをされても全く反応しなかったものが昂ってガチガチになっている。
触れてみると先端は武登の声で濡れている。
なんで?
なんで?
扱いてみてもなんか違って、うしろに指を挿れる。
自分でするの、初めてだ。
指を挿れてみてもうまく気持ちよくなれないけど、たった今聞いた武登の声を思い出すとそこがきゅっと締まった。
指を増やしてみて、武登の指を思い出す。
武登の指は俺より長くてすっとしていて、指先まで整っていてかっこよかった。
「あ…ぅ」
全然気持ちよくなれない。
なにが違う?
どうしたらいい?
涙が止まらなくて、全然気持ちよくなくて。
着替えて部屋を飛び出した。
そのまま武登の部屋まで行くけれど、仕事がまだ終わっていないから当然帰っていない。
鍵も返してしまった。
部屋の前で座り込んで武登の帰りを待つ。
寒い。
でもひとりでいるともっと寒い。
昨日このドアを出たばかりなのに、もうこのドアの前に戻って来てる。
ばかみたい。
それでも武登に触れられたい。
武登に『マサ』って呼ばれたい。
『タケ』って呼びたい…。
「……なにやってんの?」
「!」
はっと気が付くと、目の前に武登が立っている。
うとうとしちゃってた。
「タケ…」
「あーあ、こんなに冷えて。風邪ひいたらどうすんの」
座り込む俺の横にしゃがんだ武登が俺の髪をぐしゃぐしゃと撫でる。
会いたかった。
寂しかった。
涙が止まらない。
「おいで」
武登に導かれるままに部屋の中に入った。
49
あなたにおすすめの小説
お調子者美形ヒモ男子が独占欲強めの幼馴染みにしっかり捕まえられる話
サトー
BL
お調子者で鈍感な主人公とその幼馴染みが両片想いからくっつくまでのお話
受け:リツ
攻め:マサオミ
この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
俺の家に盗聴器が仕掛けられた
りこ
BL
家に帰ったら何か違和感。洗濯物が取り込まれている。だれ?親に聞いたが親ではない。
──これはもしかして、俺にヤンデレストーカーが!?と興奮した秋は親友の雪に連絡をした。
俺の経験(漫画)ではこれはもう盗聴器とか仕掛けられてんのよ。というから調べると本当にあった。
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
ワンナイトした男がハイスペ弁護士だったので付き合ってみることにした
おもちDX
BL
弁護士なのに未成年とシちゃった……!?と焦りつつ好きになったので突き進む攻めと、嘘をついて付き合ってみたら本気になっちゃってこじれる受けのお話。
初めてワンナイトした相手に即落ちした純情男 × 誰とも深い関係にならない遊び人の大学生
花香る人
佐治尚実
BL
平凡な高校生のユイトは、なぜか美形ハイスペックの同学年のカイと親友であった。
いつも自分のことを気に掛けてくれるカイは、とても美しく優しい。
自分のような取り柄もない人間はカイに不釣り合いだ、とユイトは内心悩んでいた。
ある高校二年の冬、二人は図書館で過ごしていた。毎日カイが聞いてくる問いに、ユイトはその日初めて嘘を吐いた。
もしも親友が主人公に思いを寄せてたら
ユイト 平凡、大人しい
カイ 美形、変態、裏表激しい
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
緑の袱紗が鳴るとき
ホルモンヤん
BL
性格の歪んだ攻め(華族 / 茶道の家元) × 健気受け (織物名家の分家)
京で名高い「藍川織」は西洋の織物の打撃を受けて苦境に立たされていた。兄様は伝統を守ろうと、必死に販路を開拓しようとしたが上手くいかない。そんな折、当主の命令で分家の俺たちは、華族であり茶道家元の珠さんの屋敷へ奉公に行くことに。その屋敷でお茶会へと呼ばれたはずが、どこか兄様の様子がおかしい——、というお話。
袱紗(ふくさ):茶道で道具を清めるときに使う道具
(表)6話+(裏)6話の全12話。
表 : 受けの弟視点(第三者視点)
裏 : 攻め視点
歴史 / 茶道 / 織物の知識がかなり曖昧なので、温かい目でご覧ください。ちなみに誰もHAPPYにはなりません
Original drug
佐治尚実
BL
ある薬を愛しい恋人の翔祐に服用させた医薬品会社に勤める一条は、この日を数年間も待ち望んでいた。
翔祐(しょうすけ) 一条との家に軟禁されている 平凡 一条の恋人 敬語
一条(いちじょう) 医薬品会社の執行役員
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる