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君の想い②
新しい缶ビールのプルタブを上げながら芳貴を見る。いつも複雑な表情で俺を迎えてくれるけれど、迷惑そうな顔はしない。
「そういえば芳貴、二年くらい彼女いないね」
ふと思いついた話題を振ると、芳貴は黙ってしまった。なんとなく、触れてはいけないことだったかも、と思い、別の話を探そうと視線を彷徨わせる。暫し気まずい沈黙が続いた後、ビールを呷った芳貴が口を開いた。
「……好きな奴を忘れるために、好きじゃない相手と付き合ってただけだから」
初めて聞いた話だ。好きじゃない相手と付き合っていたなんてこと聞いたことがない。付き合っていた人が好きな人なんだと思っていた。
「それほど好きな人がいたの?」
小さく頷く芳貴。
「……今も好きだ」
「付き合ってた人達は好きじゃなかったってこと?」
「好きになろうと努力はしたけど、だめだった」
苦しそうに、呻くように言葉を紡ぐ芳貴は今までに見たことがない表情をしている。いつも芳貴がしてくれるみたいに缶ビールのプルタブを上げて渡す。
「そんなに好きな人がいるなんて、聞いたことない」
「言ったことないからな」
「それでなんで忘れようとしたの?」
ビールを一口飲んで芳貴が手の甲で唇を拭う。切なげに歪んだ顔が、その想いの強さを表しているように見える。
「……そいつに恋人ができたから」
もう一口ビールを飲む芳貴。
「それでそいつを忘れるために、告白してくれた子と付き合って、好きになる努力したけど……全然好きになれなかった。そいつじゃないとだめなんだ……」
くしゃくしゃに表情を歪める芳貴が苦しそうで、なにを言ったらいいかわからない。俺もビールを一口飲む。でも、そこまで必要とされるのはすごい。芳貴がそれだけ求めるんだから、とても素敵な人なんだろう。
「……そんなに想われるなんて、その人はすごく幸せ者だね」
少し羨ましい気持ちで言うと、芳貴が寂しそうな瞳で俺を見つめる。なんでそんな目をするんだろう。
「そう思うなら、おまえ自身にそう言ってやってくれ」
――――え?
芳貴のまっすぐな視線が、突き刺すように俺に向けられていた。
芳貴の言葉が頭の中に回る。俺の寝る布団のすぐ横にあるベッドで眠る芳貴を見る。
芳貴の好きな相手は――俺?
まったく知らなかった事実に驚きしかない。だって芳貴は幼馴染で、いつでも助けてくれて、俺は迷惑ばかりかけていて……。
いつからだろう? 芳貴はずっとそばにいてくれた。信頼できる大切な存在。その芳貴がずっと俺を好きだった……。
「……」
これ以上甘えられない。布団から出ようとしたら、「燈路」と名前を呼ばれてぎくりとする。
「帰れないだろ」
「……」
また掛け布団を肩まで掛ける。
確かに、今頃自宅のベッドは琉太と彼女が使っている。だから帰れない。でも芳貴のところにいていいのか。
「……ずっと気づかなくてごめん」
「気づかれないようにしてたんだよ」
「どうして?」
「そばにいられるだけで幸せだから」
そんな幸せがあるなんて知らない。見てもらえないのに幸せなんてあるんだろうか。
「……俺は燈路を必要としてるけど、俺のところに来る気はないか?」
仰向けで横になっていた芳貴がこちらを向き、目が合ってどきりとしてしまう。
「俺のところに来てくれたら、燈路ひとりを心の底から愛すると誓うよ」
「そういえば芳貴、二年くらい彼女いないね」
ふと思いついた話題を振ると、芳貴は黙ってしまった。なんとなく、触れてはいけないことだったかも、と思い、別の話を探そうと視線を彷徨わせる。暫し気まずい沈黙が続いた後、ビールを呷った芳貴が口を開いた。
「……好きな奴を忘れるために、好きじゃない相手と付き合ってただけだから」
初めて聞いた話だ。好きじゃない相手と付き合っていたなんてこと聞いたことがない。付き合っていた人が好きな人なんだと思っていた。
「それほど好きな人がいたの?」
小さく頷く芳貴。
「……今も好きだ」
「付き合ってた人達は好きじゃなかったってこと?」
「好きになろうと努力はしたけど、だめだった」
苦しそうに、呻くように言葉を紡ぐ芳貴は今までに見たことがない表情をしている。いつも芳貴がしてくれるみたいに缶ビールのプルタブを上げて渡す。
「そんなに好きな人がいるなんて、聞いたことない」
「言ったことないからな」
「それでなんで忘れようとしたの?」
ビールを一口飲んで芳貴が手の甲で唇を拭う。切なげに歪んだ顔が、その想いの強さを表しているように見える。
「……そいつに恋人ができたから」
もう一口ビールを飲む芳貴。
「それでそいつを忘れるために、告白してくれた子と付き合って、好きになる努力したけど……全然好きになれなかった。そいつじゃないとだめなんだ……」
くしゃくしゃに表情を歪める芳貴が苦しそうで、なにを言ったらいいかわからない。俺もビールを一口飲む。でも、そこまで必要とされるのはすごい。芳貴がそれだけ求めるんだから、とても素敵な人なんだろう。
「……そんなに想われるなんて、その人はすごく幸せ者だね」
少し羨ましい気持ちで言うと、芳貴が寂しそうな瞳で俺を見つめる。なんでそんな目をするんだろう。
「そう思うなら、おまえ自身にそう言ってやってくれ」
――――え?
芳貴のまっすぐな視線が、突き刺すように俺に向けられていた。
芳貴の言葉が頭の中に回る。俺の寝る布団のすぐ横にあるベッドで眠る芳貴を見る。
芳貴の好きな相手は――俺?
まったく知らなかった事実に驚きしかない。だって芳貴は幼馴染で、いつでも助けてくれて、俺は迷惑ばかりかけていて……。
いつからだろう? 芳貴はずっとそばにいてくれた。信頼できる大切な存在。その芳貴がずっと俺を好きだった……。
「……」
これ以上甘えられない。布団から出ようとしたら、「燈路」と名前を呼ばれてぎくりとする。
「帰れないだろ」
「……」
また掛け布団を肩まで掛ける。
確かに、今頃自宅のベッドは琉太と彼女が使っている。だから帰れない。でも芳貴のところにいていいのか。
「……ずっと気づかなくてごめん」
「気づかれないようにしてたんだよ」
「どうして?」
「そばにいられるだけで幸せだから」
そんな幸せがあるなんて知らない。見てもらえないのに幸せなんてあるんだろうか。
「……俺は燈路を必要としてるけど、俺のところに来る気はないか?」
仰向けで横になっていた芳貴がこちらを向き、目が合ってどきりとしてしまう。
「俺のところに来てくれたら、燈路ひとりを心の底から愛すると誓うよ」
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