理不尽な世

忍ぶ林檎

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第一章

一 始まり

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目の前には、現世でもよく耳にするあの有名なお方、閻魔大王様が私を見下ろしていた。
何が起こっているのか分からず唖然としていると、隣の口髭を生やし、頭には烏帽子を被った30代半ばぐらいの、恐らく閻魔様の補佐役と思われる鬼が、困ったという風に口を開いた。
「うーむどうしたものか。閻魔様、後がつかえています。この者の裁判は後回しにしませんか?」
すると閻魔様も困ったような口ぶりで答える。
「うむ、、、そうするか」
閻魔様がそう言うやいなや、周りにいた鬼達が私を別の部屋へと案内した。
一体ここは何処なのだろうか。いや、閻魔様がいる時点で黄泉の国に来てしまったという事は間違いないが、一体なぜ私がそんな所にいるのだろうか。私は今までの記憶を巡らせ考えてみるが、ここへ来る前に死んだ記憶も無ければ、死にかけた記憶もない。結局補佐官の鬼に再度呼ばれるまでに答えは出なかった。

また裁判部屋へ入ると閻魔様が先ほどよりももっと難しい、迫力のある顔をしていたので多少引き気味になる。
「早速本題に入るが、簡潔に言うとわしの部下達が手違いでお主の魂を抜いてしまったのだ」
戻っていきなり答えが出たので、困惑する反面、だから死んだ記憶が無いのかと妙に納得した。
だがしかし、それがどうして困ることなのかが理解出来ない。間違いなのなら元の場所に早く戻して欲しいものだ。今日は特別な日なのだから尚更だ。そんな私の思考を読み取ったのか、次に閻魔様はとても信じられない事を言った。
「お主の体はもう焼かれてしまい、現世には戻れないのだ。お主のように部下達が間違って魂を抜いてしまい、遺体を焼かれて戻れないということはごく稀に起こるので普通なら対処出来るのだが、今回は運悪く、そのミスがいくつも重なってしまった。だからはっきり言って店員オーバーだなのだ」
「、、、はい?」
閻魔様は何を言っているのだろうか?衝撃過ぎて一瞬言葉を理解出来なかったので思わず聞き返す。
「だからもう元の場所に帰れないばかりではなく、お前の居場所もないという事だ」
帰れない、、、?それを聞くか否や、私はふつふつと怒りが湧いてきた。たった一人のミスのせいで私は家族の元へもう帰れなくなったらしい。私はピキリと青筋を立て、思わず叫んだ。
「焼肉を食べに行く日だったのに、、、!」
「へ?」
「は?」
ずっと大人しかった私が、いきなり叫んだ言葉の意味が分からず閻魔様含む鬼達から間の抜けた変な声が出た。
「貧乏だから滅多に行けなかったのに!5年に一度あるかないかの日だったのに、、、!どうしてくれんのよ!」
一気に畳みかけると、閻魔様は困っているようだ。
「そう言われても、こっちもお主の居場所探しで困っておるのだ」
「そういう問題じゃないっ!いいわ!そっちがその気なら帰れるまでずっとこの部屋に留まってやる!」
「そ、それは困る。おいお前達が間違えたのだからお前達で何とかしろ!」
「そ、そんな!間違えたのは私達ではなく別の科のものです!」
「えぇい!うるさい!もう裁判は終わりだ!わしは別の仕事をする!この仕事が終わるまでに解決出来なかったら厳しい罰を受けて貰うから覚悟しろ」
とうとう閻魔様はお手上げという風に部下に丸投げしたまま出て行ってしまった。
残された鬼達は恨めしそうにこちらを見て口々に文句を言ってくる。
「どうしてくれるんだ!閻魔様の機嫌を損ねて、お主煉獄にでも行くつもりか?!」
「お主のせいでクビにでもなったらどうしてくれるんだ!」
四方八方から飛び交う文句の言葉に聞く耳も持たず私はその場でどかりと座った。

黄泉の使いの者のミスによって魂を抜かれてしまった少女。このまま行く場所が見つからず煉獄へ連れていかれてしまうのか?はたまた別の道が待っているのか?少女の運命はいかに!
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