理不尽な世

忍ぶ林檎

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第一章

二 謎の男

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私の周りからは相変わらず悩む声が聞こえてくる。
「今日は本当に散々だ。別の科の者がミスしたせいで仕事は増えるわ閻魔様の機嫌は悪くなるわ」
「あぁ、本当に散々だ!補佐官殿はまだ軽い刑ですむかもしれませんが我々下級のものでは立場も危うい」
「まぁ、そう焦るな。三人寄れば文殊の知恵とも言うし、我々はその倍はいる。なにかいい案が浮かぶはず、、、」
さっきから似たような会話ばかりをしている鬼達。自分から仕掛けておいてなんだが、そんな様子がだんだん可哀想に思えてきた私は何かを言おうと口を開いた瞬間、上から男の人の声が降りかかってきた。
「なにかお困りのようですね」
そちらを向くと、身長180cmぐらいの長身で、黒くて長い髪を後ろで束ねている人柄の良さそうな男が立っていた。
「ん?お主は、、、」
「こんにちは、ご無沙汰しております。」
補佐官が何かに気づいたように声を上げると、男はにこやかに挨拶をした。
「今日はなんの用で来たんだ?」
「いえ、ちょっとしたヤブ用で、、、。それよりどうかしたんですか?」
男がそう聞くと、鬼達が一気に現実に引き戻されたかのように一瞬で暗い顔になった。
「どうしたもこうしたも、カクカクシカジカで、、、」
「、、、ふむ」
補佐官が今までの事を説明すると、男は一瞬考える素振りを見せるが、すぐに笑顔に戻りある事を提案してきた。
「ではその娘、こちらでお引き受けしてもよろしいでしょうか?」
その言葉に鬼達が驚く。
「こちらとしては有難いが、そちらの都合は大丈夫なのか?」  
「えぇ、丁度人手が必要だったので」
それを聞くな否やたちまち鬼達の表情が明るくなった。
「本当か!これで一安心だ」
「お役に立てて何よりです」
「じゃあ我らはこの事を閻魔様に伝えに行くので失礼」
よっぽど思い詰めていたのだろう、悩みが一気に晴れたので満面の笑みで去っていく。
男はそんな鬼達を見送ったあと、私を見て言った。
「君には私の手伝いをして貰います」
その言葉を聞いて私は冗談じゃないと言い返す。 
「なんで私が貴方の手伝いをしなければいけないのよ!私は帰してもらうまでここにいるって決めたんだから」
「そんな所にいても帰してもらえないし、下手したら煉獄に連れていかれるかも知れませんよ」
私はその言葉を聞き、先程から疑問に思っていたことを口にする。
「さっきからみんなして煉獄煉獄って一体その煉獄ってなんなの?」
すると男は驚いた顔をした。
「おや、煉獄をお知りでない?」
「なによ何か問題ある?」
その反応がなにか馬鹿にされたように感じ、ムッとして言い返す。
「いえいえ、何も問題ありません。煉獄というのは、天国でも地獄でもない場所にあり、小罪を犯した死者の霊魂が天国に入る前に火によって罪の浄化を受ける場所ですよ」
「はぁ?!なんで罪も犯してない私がそんな所に、、、。あれ?でもそこに入ると天国に行けるの?どこにも居場所がないとか何とか言っていたのに」
もしも天国に行けたとしても煉獄とやらに行って火炙りにされる気は微塵もないが、一応聞くと次に男は恐ろしいことを言った。
「いえ、あの様子だと恐らくは、居場所が出来るまでの間ずっと煉獄に閉じ込めるつもりでしたね」
私は自分でも全身の血の気が引いていくのがわかった。
「って言うことは、居場所が見つからなかったら一生火炙り、、、?」
真っ青になりながら聞き返すと爽やかな笑顔で「はい、そうです」と言う。 
「地獄よりはマシですけどね」
その言葉ではっとした。
「って事はあの大鬼、、、罪を犯してなくても地獄が空いてたらそこに放り込むつもりだったってわけ?!」
すると男は否定した。
「いえ、罪もない人を無闇に地獄へ放り込むなんて事は流石の閻魔様でもしないでしょう、、、まぁ、怒らしたらどうなるかは分かりませんが」
この言葉の後に男は「よかったですね、私が来て」と付け加えた。

鬼達が閻魔様からの罰に怯える中、登場した謎の男は少女を預かると言う。その男と話している中で少女は煉獄というものと男に助けられたという事を知った。一体この男の正体は?!
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