真剣な恋はノンケバツイチ経理課長と。

イワイケイ

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真剣な恋はノンケバツイチ経理課長と。

「お先です」
 終業と同時に席を立った瀬名に、先輩の市村がびっくりしたような顔をした。営業部にいるのは瀬名と市村だけで、他の営業員は帰ってきてもいない。
「今日はまた一段と早いな」
「デートなんです」
 あっけらかんと言うのへ、市村は苦笑する。
「いってらっしゃい。つか、瀬名……最近遊びじゃなくてずっと同じ子と付き合ってる?」
「鋭いっすね、何で分かるんですか?」
「いや、何となく……前より安定してる気がする。雰囲気とか丸くなったし」
「良く見てますね。市村さん、どんだけ俺のこと好きなんですか」
 と瀬名の軽口には取り合わず、市村は真面目な顔になった。
「余計なお世話かもしんないけどさ……、もしその子が良い子なら、お前ちゃんと結婚とか考えろよ。今のお前見てると、何かその子手放さない方がいい気がする。いつまでも若くないんだし」
 真っ直ぐで裏表のない、だが保守的な市村らしい、と瀬名は思わずにっこりする。市村が本当にいい人であることは分かっているけれど、自分のセクシャリティと価値観は絶対に理解してもらえないことは分かっていたから、
「そうなれたら嬉しいんですけどね」
 とだけ、丁度後輩数人が帰ってきたのを機に、お疲れさまでしたと廊下へ出た。

 瀬名が自分がゲイだと気付いたのは子供の頃、学生時代は色々悩んだこともあったけれど、今では仕事もプライベートも充実出来るスキルを身に着け、不満もなく日々を過ごしている。
 それに恋愛の相手に不自由もしない。もてる王道というわけではないけれど、所謂スペックとやらに瑕瑾はないし、外見は女性受けする方で男性からも”生理的に受け付けない”と言われたことはないため、好意を持った相手と付き合うのにそれほど苦労した経験はない。
 ただ、今の相手にはこれまでの経験値があまり役に立たないという問題がある。

 エレベーターホールに出る代わりに非常階段で一階分下りる、管理部門の入っているフロアに出た瀬名は、そのまま経理課へ向かった。パーテーション越しに目当ての人の姿が見えたけれど、完全に残業モードで動く気配すらないのにため息をつく。
「木下課長」
 声をかけるとはっと顔を上げた木下は、瀬名を認めてばつの悪そうな顔をした。
「残業ですか?」
「うん……ちょっと」
 申し訳なさそうに呟いてから、木下は席を立って瀬名の傍へ来た。
「……1時間で終わらせるから。先に店行ってて」
 と小声で言う木下を、すぐ近くの席にいた部下の女性が不思議そうに見上げるのが目に入り、瀬名は言いたいことを呑み込んだ。
「了解です。じゃあ、何かあったら連絡下さい」
 とだけ言い、瀬名はその場を後にした。



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「何よセナちゃん、振られちゃったの?」
 珍しい、と無遠慮に笑うオーナーに瀬名は苦笑する。
「振られてないよ。……待ちぼうけ喰ってるだけ」
「お相手はこの間連れてきた、あの真面目そうな細くて背の高い人?」
「そう。ていうか良く覚えてたね」
「あまりにも今までのセナちゃんの好みと違い過ぎてて、印象に残ってるの」
 と言われるのへ、確かに、と瀬名は思う。
 この店に連れてくるのは余程気の置けない友人か付き合った相手だけ、好みとしては年下で小柄で、どちらかと言えば可愛らしいタイプが多かったから、初めて木下を連れて行った時はオーナーもびっくりしたのだろう。
 瀬名よりも5歳年上の41歳、背も180センチ近くあるから、瀬名より2~3センチ高い。お世辞にも可愛いとは言えない、ごく一般的なサラリーマン然とした木下と付き合いだしてから、そろそろ1年になろうとしている。
「……あの人、ノンケさんなんだっけ?」
「うん。バツイチで元奥さんのとこに子供もいる」
「何か……昔からセナちゃん知ってる身としては、結構びっくりだわ」
「でしょ。俺もびっくりしてるもん」
 これまでの自分なら、絶対にストレートに手を出すようなことはしなかったのに、本当に人生は何が起こるか分からないと瀬名はしみじみ考える。
「ねえ、馴れ初めをめちゃくちゃ聞きたいんだけど」
「内緒。俺らだけの秘密なの」
 と言いかけたところへ、店のドアが派手な音を立てて開き、噂の本人が息せき切って現れた。
「悪い、遅くなって」
 文字通り走ってきたのだろう、真面目な木下らしいと心の中でほっこりしたものの、表向きは
「今日は残業しないんじゃなかったんですか」
 とだけ言えば、木下は困ったような顔で、
「もちろんそのつもりだったんだけど……急に実働部隊に2人も欠勤が出ちゃって、カバーしてた。うちの部署、時短勤務の人も多いから、どうしてもカバーできる人手が足りなくて」
 と真剣な口調で説明する。仕事なんだから仕方ないだろ、の一言で済まさないのが木下の良いところだと瀬名は思う。ホントにごめん、と焦っているのが可愛いからもう少し何か言おうか考えている瀬名を見通したのか、オーナーが呆れた顔で割って入った。
「いらっしゃい。今日は食事するってセナちゃんから聞いてます、テーブル席取ってあるからどうぞ」
 もうよしなさい、と目で瀬名を窘めて、オーナーは先に木下をテーブル席へ移動させる。ありがとうございます、と律儀に頭を下げる木下を、やはりこの人は可愛いと思いながら自分もカウンターからテーブルへ移動しようとした瀬名は、新しく入ってきた客にぎょっとした。
「あー、セナじゃん」
 久しぶり、とこちらに歩いてくるのは以前少しだけ付き合ったことのあるヒロだった。見た目がとにかく好みだったのと、アプローチされた体の相性も悪くなくて付き合ってはみたものの、性格に難がありすぎてすぐに分かれた相手である。
「ひとり?珍しいね。この後友達来るんだけど、暇なら一緒に飲まない?」
「いや、今日は連れがいるから」
 普通はここで引き下がるのが大人のマナーなのだけれど、そう出来ないのがヒロなのだと分かっており、瀬名は心の中でため息をつく。
「えー、紹介してよ。どんな可愛い子なのか興味あるわ」
 会社の同僚だと言おうかと迷ったものの、ヒロは瀬名がこの店に連れてくる人間が会社関係ではないと知っているはずだった。それに不思議そうにこちらを見ている木下と目が合い、瀬名は下手な小細工はしない方が良いと判断する。さっさと済ませたいと思いながら、
「すみません木下さん、友達紹介させてもらっていいですか」
 と声をかけると、ヒロが呆気に取られた顔をした。
「え……あの人?嘘でしょ」
「……お前、そういうこと言うなら紹介しない」
 と牽制する瀬名を無視して木下のいるテーブルまで行き、
「どうも、セナの元彼のヒロです。おじさん、ホントにセナの彼氏?」
 と声も抑えずに言い放つヒロへ、瀬名は眩暈がした。確かにこの店は密かにゲイの利用客が多いけれど、ゲイバーと謳っているわけでもなし、酒や料理が旨いのが地味に口コミで広がって一般客も多い。今もヒロの発言に近くのテーブル席の女性客がびっくりしたように振り向く、さすがにオーナーが厳しい顔になったのを目の端に捉え、後々面倒でもヒロを店から強制的に連れ出した方がいいのではと瀬名が考えた時、きょとんとしていた木下がにっこり笑った。
「はい、そうです」
 何を言うでもなく穏やかに、ただ事実だけを肯定した形の木下にヒロはやや気圧されたらしい、自分が劣勢だと感じるのが嫌いなヒロが、
「へえ、随分セナも趣味変わったね。お洒落で可愛いタイプが好きだったのに」
 と明らかな嫌味を言うのへ、木下は真面目な顔で、そうなんですね、と頷く。木下は穏やかでもこちらの堪忍袋の緒が切れそうになり、
「ヒロ、いい加減に、」
 と怒りを含んで歩み寄った瀬名に動じることもなく、ヒロは瀬名が一番痛い部分を言い放った。
「例えば俺みたいな。別れてもしばらくセフレだったもん」
 空気も読めないし性格も良くないことは知っていたが、まさかこれを言うとは思っていなかった瀬名は一瞬思考が停止する。ヒロが言ったことは事実だから否定出来ないけれど、真面目な木下には聞かれたくなかった。
「……君、随分と初対面で絡んで来るけど、まだ瀬名が好きなのかな?」
 固まっている瀬名の耳に落ち着いた木下の声が届く。
「は?そんなわけないじゃん、別にセナとは遊びで付き合ってただけだったし、他にも男いるし」
「そう。それなら瀬名と僕のことは放っておいてもらえないかな。僕には瀬名しかいないし、遊びでもないから」



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 家に着いたのは23時近くで。
「食べ過ぎたかな、まだ苦しい。でもホントにあの店美味しいよね。オーナーさんもいい人だし」
 また行こうな、と機嫌の良い木下に瀬名は真面目に頭を下げた。
「木下さん、今日は不快な思いさせてすみませんでした」
 と改めて謝ると、木下は首を横に振った。
「……瀬名がずっと気にしてるのは分かってたけど、俺、お前が思ってるほどダメージないよ?年の功っていうのかな……ああいう生き方してる子って自由奔放に見えるけど、おそらくどこか生き辛いんだろうし。それにオーナーに抓み出されちゃって可哀想だったね」
 と小さく笑うのを眺めながら、この人の恋人になれたのが奇跡だと瀬名は思う。
「俺ね、……申し訳ないって思いながらも嬉しかったんです。木下さんが瀬名しかいないって言ってくれて」
「ああ、あれは、その、」
 と木下は困ったような顔で瀬名を見た。
「え、嘘でしたとか言わないでよ?」
「いや、嘘じゃないんだけど……、重いって思われなかったかなって心配してた」
 ヒロに絡まれた時の冷静で引くことのなかった木下はどこに行ったのだろうと不思議になるくらい、自信のなさそうな、年齢的におかしな話だけれど幼いようにすら聞こえる言葉が瀬名にはやはり嬉しかった。

 奇跡のような諸々が重なって、真面目で性格的にも真逆なストレートの木下と付き合うようになって以来、どこか瀬名の中には不安のようなものがあった。こちらに押し負かされて付き合っているだけではないか、後悔していないか、疑い出せばきりがなかったけれど、今日の木下の言葉から、彼は本当に自分を恋人として考えているのだと理屈でなしに信じられたことが何より嬉しい。

「大丈夫です、俺、重いの嫌いじゃないから」
「重いってところが解消されてない……」
 眉を顰める木下を抱きしめる、耳に唇を寄せて、
「木下さん、お風呂一緒に入る?」
 と聞けば、
「絶対嫌だ」
 とこれはにべもない拒絶に瀬名は思わず笑う。
「ホントに一緒に入ってくれないよね」
「風呂はゆっくり入りたい派なんだよ。お前、ちょっかい出してくるから鬱陶しい」
「じゃあ、先にどうぞ。出たらちょっかい出していいんでしょ」



 そうなるだろうな、という予測はしていたものの、瀬名が風呂から上がった時には木下は既に眠っていた。酒が入ると直ぐ寝てしまうのに加え、風呂まで済ませていれば熟睡するのも道理、穏やかな寝息を立てている木下を見て瀬名は苦笑する。本当は抱きたかったけれど起こすのは気の毒で、自分もそっと横に潜り込んだ時、
「……瀬名?ごめん、ちょっと横になるつもりだったんだけど、寝てた……」
 眠たそうな声で木下が呟く。
「いいよ、木下さん。今日は疲れたよね、このまま寝ちゃってていいから」
「……寝ない。待ってたのに」
 さらに眠そうに言いながら、木下は瀬名の肩に額を押し付ける。会社での木下は一にも二にも真面目で物堅く、こういうことをするとは想像もつかないけれど、誰も知らない木下を自分だけが知っているのだという子供じみた独占欲に瀬名は我ながら呆れる。
「いいって、木下さん。無理しないで」
 克己の精神を発揮する瀬名の肩口で木下は小さく首を振った。
「違う、無理とかじゃなくて……俺が欲しいの」
 僅かに照れを含んで、いや、ダメならいいんだけど、と呟く木下に瀬名の血が沸く。
「ダメじゃないです」
 と木下の唇に軽くキスして、寝間着代わりのTシャツの中へ手を入れて直接肌に触れる、それだけで木下の表情が変わるのがさらに瀬名の欲を煽る。
 もしかすると木下は気付いて来なかっただけで、セクシャリティが純粋なストレートではないのではないか、と瀬名は思う。男性と寝た経験はないと言っていたけれど、初めて触れた時から拒絶反応もなく、与えられる快楽にも素直だったから、実は何らかのこちら寄りのセクシャリティなのかもしれない。
 身勝手なようだけれども、気付かないでいてくれてよかった、と瀬名はほっとする。他の男に取られる前に自分が一番最初に辿り着けたことを何かに感謝したいくらいだった。
「……どした?」
「え?」
「何か、……考え事してたみたいだから」
 心配そうな木下に瀬名は慌てる。
「あ、いや、考え事っていうか……木下さんが俺と付き合ってくれて良かったなって思ってただけ」
 と言い、今度は舌を絡める深いキスをしながら、腹から撫で上げた指に触れた胸の突起を軽く抓むと微かに木下の肩が跳ねる。素直すぎる反応が愉しくて、
「木下さん、これ好きだよね」
 と笑う瀬名に、嘘のつけない木下は否定も出来ず、かといって肯定するにはまだ羞恥が勝つのか、
「そういうこと、いちいち言わなくていいんだって」
 と不機嫌そうに言う。
「でも好きでしょ」
 指先にほんの少し力を足すと、返事の代わりに息を詰めてしがみ付いてくる、本人は意識していないかもしれないけれど、本当に煽るのが上手だなと瀬名は心の中で苦笑した。焦れたように腰を押し付けてくる木下に、もう少しだけ意地悪して放置するのもありかな、と考える瀬名の頭の中を読みでもしたのか、木下がため息をつく。
「……ろくなこと考えてない」
「当たり前でしょ。どうしたら木下さんがエロくなるかしか考えてません」
 きっぱり言い切るのへ、木下は瀬名の予測に反して小さく笑った。
「それなら瀬名、……下触って」
 艶を含んだ声で強請られるのへ、あ、負けたとあっさり認めた瀬名は、木下の下着を押し下げて芯に触れる。既に先走りで根元まで濡れていたのを軽く扱いただけで、愉悦の吐息が零れるのを見下ろしながら、瀬名は苦しいほどの劣情を覚える。本当は挿入したい派なのだけれど、木下の負担を考えて実際はそうしないことの方が多い。特に今日は酒も入っているし、暴走しないようにと呪文のように自分に言い聞かせていると、木下の手が瀬名の腕を押し止めた。
「瀬名、も、……いきそうだから、」
「うん、いいよ?」
「あの、今日は、」
 と言いかけて一瞬躊躇い、木下は瀬名を見上げて、
「入れて欲しいかも」
 と呟くように言う。
「え、だって木下さん……苦手でしょ」
「苦手だったけど、ちょっと慣れてきたし、……それに今日は何か分かんないけど、そうしたい」
 風呂で準備もしたし、と言い訳のように言うのへ、瀬名の理性が焼き切れる。
「じゃ、辛かったら言ってね。……俯せになれます?」
 体の固い木下を気遣ったつもりだったけれど、木下は首を振った。
「瀬名の顔見たいから、このままがいい」
 少し照れたように、それでも素直に自分の欲を伝えてくる木下が本当に可愛いと瀬名は思う。確かに今までの自分のタイプではないし、所謂一般的に言う“可愛い”ではないかもしれないけれど、これほど大切にしたい思いと劣情が同時に成立する相手はいなかった。
 傷付けないように多めにローションを取った指を少しずつ埋めていく、反射的に木下の体が強張るのへ、ごめんね、と小声で謝りながら止めるという選択肢がないことに瀬名は気付く。さっきまではまだ木下を気遣う余裕があったのに、今は欲の塊でしかない。木下は風呂で準備したと言っていたけれど、強張ったのは最初だけであとはさして苦痛もなさそうなのが裏付けのようだった。
「ホントに準備してたんだ」
 それが癖でつい揶揄ってしまう瀬名に、木下は真面目な顔で頷いた。
「何かいい年して……がっついてるみたいでみっともないんだけど」
「どこが?俺は凄い興奮する」
 耳に軽くキスして囁きながら指を増やすと先を期待するかのようにぎゅっと指が締め付けられる。しばらく慣らすと木下の手が瀬名の頬に触れた。
「……もう大丈夫」
「無理してない?入れるよ?」
 大丈夫とは言うけれど、さすがに挿入直後の避けられない圧迫感と痛みが治まるのを待っていると、当の木下が小さく笑った。
「瀬名、余裕あるよな」
「んー、木下さんに苦しい思いさせたくないだけ。余裕はないです」
「それなら、……動いていいのに」
 そっと言われるのへ瀬名は木下の腰を掴んで自らを打ち付ける、上がったのははっきりした愉悦の声で。
 自分でも驚いたのか、木下は瀬名の腕を掴み、何か変、と戸惑ったような声で言う。
「気持ち良かった?」
「……多分」
「多分って何」
 思わず笑い、瀬名は木下の髪を撫でる。確認させるようにゆっくりと深く突くと木下の表情が明らかに変わる。
「これ、気持ちいい?」
 もう一度訊くと、今度は木下も躊躇いなく頷いた。それがトリガーになって、瀬名が本格的にピストンを開始すると、木下の全身が快楽で震える。
 枕やシーツを掴み、堪えられないように甘く喘ぎながら、瀬名の動きに合わせて腰を揺らす木下は、今まで見たことのないほど淫らで、瀬名は強烈な欲に身を任せる。言葉で行為の詳細をなぞり、聴覚からも木下を攻め立てれば、羞恥で全身染め上げながらもさらに感じてしまうようだった。濡れた目で瀬名を見上げ、
「俺、ダメかも、……も、イクから……っ」
 ほとんど泣いているような声で訴えた後、木下が全身を震わせて先に果てる、その姿ときつい締め付けとで瀬名も引きずられるように果てた。
「木下さん、今日どうしたの。めちゃくちゃエッチだったし、初めて後ろだけでイったよね」
 怒られるかと思いきや、木下は荒い息を整えながら、
「……俺、嘘ついてたかも」
 と言う。
「ちょ……演技だったとか言わないでね……それはそれですごいけども」
 ぎょっとする瀬名に木下は首を振った。
「さっき、あの店の男の子に『ダメージない』って言ったけど、ホントは……少しダメージ受けてて、それで、瀬名と今付き合ってるのは自分だってちゃんと思いたくて」
 おっさんが情けないんだけど、と呟く木下を、瀬名は抱きしめる。
「さっきまで、ヒロの奴ホントに今度会ったらしばき倒すくらいに思ってたんですけど、感謝だわ。だって俺、木下さんと心身ともに相性良いの分かったもん」
 だからもう一回しよ、と誘うのへ、木下は小さく笑った。
「それ、感謝とかなくても言うだろ」
「……まあ、そうですけどね」
 率直に頷く瀬名の肩に腕を回して、木下は囁くように言った。
「いいよ。……でも、さっきと同じくらい気持ちいいのがいい」
「うん。頑張ります」
 真顔で言う瀬名に木下は再び笑い、黙って瀬名の唇へキスをした。

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